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博士は自分を殺そうとしている、とはっきりとわかった。
レオナルドは瞬きせず、博士の震える手と銃口を見ていた。
声を出すように博士は口で息をして、肩を揺らしている。
レオナルドはおもむろに博士の腕を蹴り上げた。すると博士の腕は曲がった。
それから弧を描いて、銃だけが落ちた。
博士が絶叫した。
うるさくない。
だが、ずいぶん痛いんだろうなということはわかる。
博士の指から血を出て、のたうち回っている。床には博士の指の先があった。
「レオ。殺さないでくれ、頼む」
泣きながら博士は続ける。
なんだろう。博士の指をみても食べたいと思えない。
レオナルドはかがんで博士の指を拾い上げた。お顔に近づけてまじまじと見てみるが、やはり食べたいという気持ちはない。
頭上が赤く光った。
サイレン。