目覚め
気が付いたら、そこにいた。
何もない、全てがある。誰もいない、誰もがいる。何も知らない、全てを知っている。
そんな、矛盾した空間。いや、空間なのかすらも分からない。
ここは何処か?そんなことを考える前に、再び意識が闇の中に沈んでいく。
「自力で生き残るがいいさ、それじゃ頑張ってね…」
次にその少年が寝覚めたのは、一つの廃屋の中だった。
「ここは・・・、何処だ?」
服装はボロボロのローブのような物を着ており、不思議な皮で出来た鎧を着ていた。少年はとりあえず立ち上がり、ボロボロの廃屋を見渡す。
家の柱となっていた木は朽ちかけており、床は泥や埃などがグチャグチャに混ざり合い、常人ならば踏み込むのを一瞬躊躇ってしまうだろう。
窓は打ち壊されたような跡が見え、外から雨が入り込んでいた。
そこまで観察して、その男はようやく気が付いた。自分が全てを知っていることに。
いや、全てというのは正しくない。
自分の名前と過去を忘れていたのだから。
「俺は、なんていう名前だったっけ?」
この世界の名前、生きている人々の数、誰がどんな行動をしているのか、そんな情報が1秒ごとに更新されて自分の知識となっていく。
気持ち悪い、どこかおかしい、少年はそんなことは全く感じず、現在の状況を冷静に分析し始めていた。