第五話 掃討隊長カイゼル
この軍勢には見覚えがある。
十中八九アイツだろう。予感が的中しているとしたら、彼はこの村の中心部にいるはずである。
私に向かってくるガーゴイルを振り払うとハインスが心配そうにこちらを見てくる。
笑って返すが、おそらくこのゴーレムの表情では私が笑っていることなど伝えられないだろう。
「そこで、もう少し待っててくれ」
そう伝えて村の中心部へと向かう。
幸いハインスの存在はまだ魔物はまだ気づいていない。
「おやおや、懐かしい気配がしますねぇ」
予想が的中していた。私の目の前に出てきたのは
「お久しぶりです。魔王軍掃討隊長ことカイゼルですよ。覚えていますかぁ。」
「相変わらずふざけた奴だな、私はお前の邪魔をしたい訳ではないんだ。
とっととこの村から出ていってくれ。」
「そちらこそ相変わらず忙しない方ですね。まだ私がなにをしているかすら知らないでしょうに。
ですが・・・・許しましょう。
貴女のその様子、何か譲れないものでもお有りですね。それで貴女は精一杯だったのだと思うことにしましょう。何があったのです?」
それを無視すると奴は
「ひどいですね、他人の話を無視する人間は嫌われますよ。
あ、貴女は人間じゃありませんね。これは失礼。ではここは一つ私が当てて差し上げましょう。」
そう言うとステッキをを振り上げて、私の周りをゆっくりと歩き始めた。
そして、少しするとカッと目を見開き
「なるほど、男ですか。ふむふむ自分と似た境遇の男に興味を持ったと、それでそいつを利用しようと考えている。違いますか。」
「概ね正解だよ。と言いたいとそろだが、大きな間違いが一つあるな。
私は損得感情で動いているのではない、恋愛感情で動いているのだよ。」
そう言い切るとカイゼルはまたステッキを振り上げた。そして私にそれを向けると
「でしたら、彼がいなくなれば、貴女は魔王軍脱退を諦めますね。」
そして手を打ち鳴らした。
するとどこからかピエロのような帽子を被った男がやってきた。
「何でしょうか。カイゼル様」
「この村の周囲に人間が一人突っ立っているそうです。殺してきなさい。」
それを聞くと男は返事もせずに、村の外へ走っていった。
「ささ、このままでは愛しい彼が死んでしまいますよ。早く魔王軍に帰ると誓ってはどうですか、
助けに行くのもありですが、当然私は貴女を追いますよ。あの人間が私と戦えますかねぇ。」
「簡単なことだ。お前を倒してから向かえばいいだけのことだ。」
「できるといいですね。」
そう言うとカイゼルは両手を掲げ叫び、ステッキを放り投げた。
「ああ神よ、この娘は愚かにも我等に歯向かうつもりです。我等主に代わりて敵を滅ぼさん。ご加護を」
詠唱を終えると忽ちステッキが発光し出した。
「砕け散りなさい。ゴーレムよ。
第一の裁き・・・巨雷」
「私の邪魔をするな」
土を魔術で持ち上げ自分へ向かってくる稲妻を防ぎ、それをカイゼルへ飛ばす。
カイゼルは純粋な身体能力は低く、巨大な土の塊に潰された。
急いでハインスの元へ向かおうとするも、ステッキが再び発光し
「第ニの裁き・・・大火」
今度は炎が吹き出してきたので、足元の土で自分を覆うようにそれを防ぐ。
そして見てみるとそこには潰れたはずのカイゼルが目の前に来ている。
そしてステッキを私の脳天目掛けて振り下ろす。咄嗟に左腕で庇うも思いの外ダメージは大きく、怯んだ隙を見逃さず両肩を突く。
慌てて後ろに下がるも、左腕は動かなくなっていた。
「ひどいですね貴女は、さっきので私の部下が一人死んでしまったではないですか。」
「何故お前が生きているんだ。確かに押し潰した筈だ。」
「言ったではないですか、貴女は私の部下を、せっかくこの村で調達した信者を潰したんですよ。許し難い行為ですよ。いいですか、一度しか言わないので、よくお聞きなさい。私は信者がいる限り死なないのですよ。彼らは命懸けで私を守っているのです。
理解できましたかゴーレムよ。」
そう言って笑うカイゼルは聖職者には到底見えなかった。
ロッテの描写がひどいって?
仕方ないね、作者は○貞だからね。
次からはもう少し早く書けると思います。