3話 お誘い
遅くなりました。
許して下さいなんでもしますから。
「何を言ってるの」
当然の反応だろう。いきなり飲み込める筈がない。自分でも突拍子なのは分かっている。
「けど、あなたもそのまま魔王軍にいても未来はない。そのぐらい分かってるでしょ」
「死にたくないなら、あなただけ逃げればいいでしょう、なんで私を巻き込むの」
「メリットがあるからですよ」
相手は動揺している。今なら押し通せるかもしれない。そう思って更に繋げる。
「僕単身で逃げた所で、どこの村にも入れてはもらえないでしょう。なんせこんな子供を迎え入れるメリットがない。
一方あなたはかなり強力なゴーレムだ、人手不足の村に行けばさぞ重用されるんじゃないでしょうか」
あまり態度をころころ変えると怪しまれるかもしれないが、このチャンスを逃せば明日はない。
「けどゴーレムが一体突然村に押し入ったって人々はパニックを起こすだけ。だから僕と一緒に行動して、安全だと理解させればいいんですよ」
すると彼女は
「確かに私は八方ふさがりだ、だがな、それはお前も同じだろう。傲るなよ、人間が。
それに、もしどこかの村へ行ったところでやがて私はまた魔王のところへ連れ戻されるさ逃げたら終わりじゃないんだ、逃げてからなんだ。
はっきり言うとお前にはデメリットしかない。お前ぐらいの子供にはならば、人情とかにでも縋ってみろ、どこぞの村人が拾ってくれるさ。」
こっちを怒っているようで、こちらの身を案じている彼女の話振りを聞いて確信した。
彼女は魔物というには、あまりにも人間的で、慈悲を持っている。
分かり合える存在なのだと。
「貴女みたいな可愛い人はいるだけで嬉しいものですよ」
なかなか描きたい場面にたどり着かない。
次で恐らく逃避行()が始まります。