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三匹の夏休み 5.くさせんり

草千里、ですね。


気分はフィールド オブ ドリームス! トウモロコシ畑じゃないけどね!

「サラちゃーーーん!」


ガサガサと草の鳴る音がする。

緑の海から、ひょこり飛び出しては、周りを伺うが、見えるのは草ばかりだ。


「リンちゃん?」


また、緑の海のもぐりこみ、ガサガサと草をかき分けて走り回る。

目の前は草ばっかりで、方向が全然わかりません。声のする方向に行っているはず・・・。


「ユールくん、見えるー?」

「ユール、どこーー?」

あ、リンちゃんも探しているんだ。ユールくん、あんまり声を出さないので、全然わかんないんです。


「こっちだ」

「「どっちーー??」」

んもう、ユールくん、それじゃわかんないよっ!!


こんにちは、サラたちは今、草迷宮でおにごっこ? かくれんぼ??中です。

リンちゃん、ユールくん、サラの三人で違う方向から草原に入って、お互いに出会おうとしているのです。

自分の背丈くらいある草の中に潜ると、方向がまるでわかりません。手を振ったり、声を出したりしてお互いの場所を確認しながら動き回ります。逃げているつもりはないのですが、いつの間にか、鬼ごっこっぽくなりましたね!


一生懸命に草をかき分けて走り回ります。

絶対に二人を捕まえるんですもんっ!!


「おーおー、完全に別の方向に行っているなぁー」

「捕まえたいのか、逃げたいのか、どっちなのだ?」

「んー、両方でしょう」

丘の上から草原を見下ろしながら、オトナ二人はのんびりと別荘で用意してくれたコーヒーを水筒から注いで楽しんでいる。


子供たちは自分たちが始めたゲームに夢中だ。

草原で遊びたいというので、お互い別の位置からスタートして、相手を捕まえられるように頑張ってごらん?と言ったら、物凄いはりきって、草原の中に入っていった。


「ゲームなんて、単純な方が楽しいもんだよなぁ」

「それにしても、あんなに走り回って疲れないのかね、子供たちは」

若いっていいねぇ、っと言う二人もまだ若いと言われる年齢だが、一桁の子供たちに敵うはずもない。

あの頃の子供たちは、遊びに全力を使ってしまうから、多分帰る頃には体力切れで寝てしまうことだろう。


昨日に引き続き、引率は、王太子のナール様と、護衛騎士のエドだ。

この子供たちの遊びに付き合いながら、この牧歌的風景の中、二人はのんびりと木陰でお茶を楽しみながら休暇を満喫をしているのだった。


「・・・怖い事聞きますが、ナール様、お仕事って」

「置いてきた。ノルベルトも置いてきたから何とかなるだろう」

ナールさまこと、ナサニエル第一王子の弟君である、ノルベルト様は、多少変わり者だが大変に優秀だ。数日のことなら、ナールさまの代わりもしてくれることだろう。


「では、ナールさまも夏休み、ですね」

「そうだな、何年ぶりかで夏休みだ」

王太子さまという立場から、休みらしい休みは殆どなく、夏休みといわれる時期も地方領主の謁見、領地への視察だの、遠征だので走り回る生活だ。夏休みなんて、それこそ小さい時にとって以来なのではないだろうか・・・。


「楽しみですね」

「そうだなー」

大人にだって夏休みは、必要で大切なんだと思う。


☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


「おーい、そろそろお昼にするぞーー!上がっておいでーーっ」


小高い丘の上で、エドがバスケットを振りながら声をかけてくる。

わあ、もうそんな時間なんだっ! 一生懸命に探しっこをしてたので気が付きませんでした。


エドの声に慌てて草の中から顔を出すと、ほんとすぐ近くユールくんと、リンちゃんが居ました。


「リンちゃん、全然気が付かなかったよー!」

「私も、サラちゃん、もっと向こうにいると思ったー。」

かなり頑張って探したんだけどなー。結局、捕まえることはできませんでした。


「二人とも、ずっと近くでくるくる回っていたぞ」

「「知ってたなら、教えてよっ!!」」

あ、ユールくんに八つ当たりしちゃった。でも、声を出してくれないと判らないのに、ずっと黙ったままなんだもん、ユールくんってば。


いっぱい走り回った後なので疲れてしまって足がヘロヘロになり、エドの待つ丘に上がるのも一苦労です。途中で、ユールくんが抱っこしてくれました。うう、ありがとう~。


「お疲れー、大丈夫か、サラちゃん?」

「うん、へーきっ! ちょっと疲れたケド、ユールくんが上まで運んでくれたから」

サラひとりヘバってしまって情けないけど、お昼を食べて少し休んだら、もう元気になると思うの。そしたら、また遊べるもん!


「そっか、でも無理はしないんだぞ。じゃあ、執事さんが持たせてくれたお弁当を食べようか」

よしよしってエドが頭を撫でてくれました。


柔らかな敷物の上には、大きなバスケットが置かれ、中にはたっくさんのお料理。スモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチに、卵サンドもあるっ!分厚いハムとお野菜を挟んだカスクートに、ポテトサラダっ! 蒸し鶏の冷製に、スライスした玉ねぎを載せたサラダ。ビスケットにたっぷりのはちみつやジャムを添えたものもあります。


「すっごいねぇ、執事さん、いっぱい入れてくれたんだー!」

「わー、美味しそう~! リンちゃん、ユールくん、どれにするー?」

「ほら、ちゃんと座りなさい、手は拭いたかい? リンとサラちゃんは、お茶より、ジュースかな? ユールはどうする?」

「我は、甘いのより、お茶がいい。」

誰よりも子供たちを一番かいがいしく世話をしているのは、わが国の第一王子さまです。次期国王さまは、大変に子供の面倒を見るのが上手いなんて、誰が思うだろうか・・・。


弁当の用意をしてくれた料理人も、小さい子供が食べることを考慮してくれたのか、全体的に小ぶりなサンドイッチになっていて、それぞれの料理の食材も小さめに切られていた。

おかげで、サラちゃんでも、自分で食べられるようで、自分の皿にとりわけられた料理を楽しそうに食べている。


水筒からお茶を注いで みんなに配る頃には、おなか一杯になったせいで動きが鈍い。そして、サラちゃんは眠そうだ。


「サラちゃん、眠いならちょっとお昼寝しな。」

「う~、まだ遊ぶ~・・・」

ゆらゆらと船をこぐサラちゃんを抱っこして頭をなでてやるが、ぷるぷると頭を振ってなかなか眠ろうとしない。遊びたい気持ちはわかるが、このままじゃ、無理だろう。

一生懸命に起きて居ようとしているが、なかなか難しいようで、もう瞼がくっつきそうだ。


「まだ時間はあるよ。少しお昼寝する位、大丈夫だよ、おやすみ」

ナールさまにも、ぽんぽんと背中をあやすように叩かれて、サラちゃんは、ゆるゆると眠りに落ちていった。木陰に敷いた毛布の上は、優しい風が通り抜け、お昼寝には最適だ。


「あー、サラちゃん、寝ちゃったねー」

「しょうがない、サラはまだ小さいのだから」

相変わらず元気なのは、リンとユール。すっかり寝入ったサラの寝顔を見ながら自分も寝そべってみる。

サラちゃんのやわらかい頬や、長いまつげが気になるらしい。起こさない程度にそおっと触ってみたりする。


「リンもお昼寝するかい?」

「んー、サラちゃんが寝ている間に、ちょっとこの辺を探検してくるっ!」

どうやら元気が有り余っているらしい様子だ。つき合いのいいユールも一緒に行くそうだ。

水辺などは、危ないので行かないように言い含めておく。


「じゃあ、いってきまーーす」

「行ってくる」

サラちゃんでも行けそうなところに、桑の実がないか探しにいくのが目的だそうだ。

どうやら昨日、ベリーの茂みを一つダメにしたのを気にしているらしい。力任せに根っこごと引っこ抜くのは、やはりどうかと思う。


涙目になったサラちゃんを見て、二人は慌ててもとにもどしたものの、ベリーの茂みは元に戻らず、しょんぼりしてしまったのだった。


子供たちは真剣にやっていることが、大人にはとても微笑ましく、小さく笑ってしまうのだ。


「いい夏休みだな・・・」

「ええ、いい夏です。」

膝の上で眠るサラちゃんを抱っこしながら、冷たいお茶を楽しむ。

目の前に広がる草原の端に、リンとユールの髪の毛が見え隠れする。もう、あんなところまで走っていったのか。


「サラちゃんが起きたら、少しみんなで川遊びでもさせてやるか」

「そうですねぇ、浅い小川があったので、その辺で遊ばせましょうか」

サラサラと風に草がなびく音がする。


子供たちの記憶の中に、この夏はどんな風に描かれるのだろうか。

大きくなった時の彼らに聞いてみたいものだ。


「エドーーーっ!あったーーっ! 向こうの茂みに、桑の実~っ!!」

やれやれ、もう休みは終わりみたいだ。

リンちゃんの大声で、サラも目が覚めたみたいだし、荷物をまとめて、少し移動をしようか。


まだまだ、たくさん遊べるよ!




バスケットをもって、ピクニック! あああ、なんて素敵なんでしょうっ!

重箱に、ごちそうを詰めて、お花見と、花火見物はしてみたので、次の野望に登録したいですね!


いつかほしいのは、食器の入るバスケット! ・・・車なしでは動けませんがね!(笑


続きもお付き合いいただけると嬉しいです。


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