三匹の夏休み 4.うみせん やません!
秋がくっるーーー、でもお話はまだ夏ーー!!
ということで皆さま、広い心で受け止めてくださいませ!
おはようございます、結局、別荘に着いた日に寝落ちして、起きたら翌朝だったサラです。
ううう、なんで起こしてくれなかったのぉっ!ってエドに抗議しましたが、ニヤニヤ笑って
「ごはんだよって起こしたのに、うさちゃん抱っこしたまま起きなかったのは、サラだろー」
って言われました。
はうぅっ!みんなの前で、うさちゃん抱っこして寝ていることまで言わなくっていいんですよっ!
エドのばかぁっ!(泣
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ふくれっ面で朝食の席についたサラに、エドが焼き立てほこほこのパンケーキにたっぷりのバターとはちみつをかけたものを置いてくれます。
恨めし気にエドを見ると、しょーがないなーって顔をして、手際よくパンケーキを一口大に切って差し出してくれます。
わー、湯気のたつパンケーキにはちみつとバターがキラキラしておいしそー、・・・って思った途端に、パクリと食いついていました!
うわーーん、サ、サラのばかーーっ!
「うまいだろ?」
「う・・はい」
エドがにっこり笑って、更にもう一口分を差し出します。
美味しいものには、逆らえません。パンケーキを一枚食べきる位には、ミルク多めの紅茶をもらってご機嫌になっていました。
単純なんです、しょうがないんですよっ!
「サラダと、ハムエッグも出してもらおうな。もう少し食べられるだろう?」
「はぁーい、パンケーキ、大好きっ! ミルクも美味しいっ!!」
別荘の執事さんが、「それは、良うございました」と笑顔で焼き立てのパンケーキと、採れたてお野菜のサラダに、ゆるんとした半熟卵と、軽く焼いた香ばしいロースハムを二枚出してくれました。
「ちゃんと食べておかないと、遊んでいる途中でへたばってしまうからね。しっかり食べな」
「はーい。・・・あれ、リンちゃんと、ユールくんは?」
そういえば、朝起きた時はいたような気がしますが、もうお出かけしてしまったんでしょうか。
「・・・あいつらは、修行、だと」
「修行!? なんだか、大変そうですー。サラ、観に行ったら邪魔かなぁ・・・」
遊びに来てまで修行するだなんて、リンちゃんも、ユールくんも凄いなぁ。サラお邪魔かな・・・、でも後で一緒に遊べるといいなあー。
「心配するな、あいつらも飽きたら後から合流するだろう。サラは今日は何がしたいんだ?」
「あのね、ベリー摘みに行きたいんです! それでね、ウォルにいちゃまにジャムを作ってもらうの!」
別荘の近くには、丁度いいベリーの茂みがたくさんあるから、サラでもベリー摘みができるんだそうです。
ウォルにいちゃまが来たら、一緒にジャムを作ってもらって、王妃さまへのお土産にするんですよー♪
「ああ、アイツらに見習わせたいわー、破壊神どもとは可愛さが違う・・・」
なんでしょう、エドがブツブツ文句を言っていますが、はかいしんってなんでしょう。ベリーの茂みの場所を別荘の庭師さんに教わって、執事さんからは、可愛い麦わら帽子と、手提げかごを貸してもらいました!
別荘の侍女さんたちがお洋服がベリーの汁で汚れては大変だからと、急ごしらえでエプロンを作ってくれました。肩紐とポケットの部分だけ、色違いのチェック柄でとても可愛いんです!嬉しーーっ!
みんなに用意してもらって、意気揚々とベリー摘みに出かけます。
たっくさん採れるといいなぁ~!!
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「どおりゃああああああぁぁぁぁーーっ!!」
気合の入った声と共に、土属性の魔法が発動され、轟音とともに地割れを起こし、土埃が舞う。
・・・さっきまで、あそこには、小山があったと思うんだけどなあ、ああ、消えたかぁ。(遠い目)
「まだまだぁっ!」
風魔法と、炎魔法を同時に発動させ土魔法で出現した土壁に風穴を開け、崩壊させる。
あー、竜巻って魔法でも作れるんだな~。・・・てか、アイツら、この辺崩壊させる気か?
対岸の小高い丘の上から、『修行』と称して暴れまわる二匹の破壊魔を見守るエドの目には、もうあきらめしか浮かばない。とりあえず、この丘の下にあるベリーの群生地に影響がない限りは、好きにさせるかあ。
緑の巫女であり、精霊王の血族としてすべての属性と加護を持つリンと、竜人にして、魔法使いであるユールは、ほぼ互角の力を持つ。
普段、相手との力の差がありすぎて目いっぱい力を使って戦うことのできない二人にとっては、大変に得難い機会らしく、嬉々として「修行」と称して暴れまわっている。
「おーい、そろそろいい加減にしないと・・・」
「こ・・・の、馬鹿者どもーーーっ!!!」
ここの持ち主が怒るぞー・・・って言おうとしたら、愛馬にまたがった王太子ご本人が登場された。
「お前ら、ウチの領を壊す気かっ!?」
はしゃぎすぎたリンとユールは、小さい山を一つと、池を二つばかり壊していた。その位で済んだのは奇跡と言ってもいいだろう。
さっき作った竜巻は領を超えてどっかへ行ったはずだ。・・・これは言わない方がいいだろうか?
怒ったナール様に大目玉と、重いゲンコツを貰った二人は、アタマを抱えてしゃがみ込む。
「いったーーい! ちょこっと頑張りすぎたダケじゃーん」
「・・・まだ、家屋は壊していないぞ」
不満そうな二人に対して、ナール様の方も許すつもりはないようだ。
「馬鹿者っ! 子供がはしゃいだレベルで山を崩し、池を壊されてはたまらんっ!
第一、家屋を壊してみろ、お前らの保護者に請求を出すぞ!!」
「えー、ナールさま、せこーーいっ!」
ぎゃんぎゃんと言い合いをするが、更にゲンコツを落とされ、流石に二人もおとなしくなる。
そうか、最後は力技かあ・・・。
「罰として、お前らは街道整備だ! ここから隣の領までの街道を作れ、いいな!!」
「えー、面倒くさーーい、やだーー」
しゃがみ込んで、ブツブツ文句を言うリンちゃんだったが、ナール様がニヤリと笑って
「そうか、リンには無理か。 火の魔法を発動した後に、風魔法を追いかけさせて、道を作り、土魔法を連動させて整地するような精緻な魔法をコントロールするのは、まだまだだろうしな」
ナール様の挑発は、面白いほど効いた。
「出来るしっ! そんなの簡単だよっ!!」
「ほぉ、では見せてもらおうか。」
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「あ、ナールさまっ!お仕事、終わったの?
見てください、これ、全部サラが採って来たの~! ジャム、作れるかなぁ」
「おや、サラちゃん、ずいぶんたくさん採れたねー。これぐらいあればジャムも作れるよ」
ニコニコとナール様がサラちゃんの頭を撫でる。心なしか疲れているようだ。
「ああ、サラちゃんは可愛いねぇ。お願いだから、このままで居てね?」
「ナールさま、疲れているの? ベリーのパンケーキも作るからげんき出してくださいね?」
・・・わかります、あの破壊魔を見た後だと、サラちゃん、天使に見えますよねぇ。
結局、あの後二人は、半日も使わずに隣の領までに街道を作り上げたのだった。土木工事って、こんなに力技でいいんだっけ、と思う反面、道ができるのはいいことだと無理やり納得をしてしまった。
その後、リンとユールは、サラのベリー摘みに参加して近くのベリーを根こそぎ採ってしまい、サラちゃんには泣かれ、ナールさまにまた、ゲンコツをお見舞いされたのだった。
うーん、王太子領には、二度と来れない気がする・・・。
やんちゃな二人も、サラちゃんの前で暴れようとは思いません。
サラちゃんが泣くようなことはしないんですよっ!(笑
サラちゃんは、二人とベリー摘みができてうれしかった半面、根こそぎは・・・なんか違う!(泣