三匹の夏休み 2.じゅんび まんたん!
ううう、夏休み気分満載で描く予定だったのにっ!
・・・というか、おおもりの夏休みが今、なう、なんです。だからいいんですよっ!!
仔猫の夏休み計画、進行中です。
大きなトランクに、大きい縞のタオルと小さい花柄のタオル。お気に入りのウサギさん刺繍のハンカチを入れていきます。(お姉ちゃまが刺繍してくれたんですよー♪)
夏用の白い綿レースをあしらったワンピース、レース遣いをしたブラウスに細かいお花柄のスカートなどなどを、侍女長さんが丁寧にたたんで入れてくれました。
トランクの隙間がどんどん埋まっていくと、準備ができていく感じがします。
旅行の荷物を詰めるのは初めてですが、旅行に行く前からワクワクがでてきますね!
「サラちゃん、急に寒くなった時ように薄手のカーディガンもいれておきますね」
「はーい!」
うちから侍女さんたちは一緒に行かないので、すごく心配をしてたくさんの夏服にたくさんの小物と詰め込んでくれています。
「使わないなら、それはそれでよろしいんですよ。でもね、行った先で何もなくって寒い思いをしたり、暑くて仕方がない方が困りますでしょう?」
って、言ってアレコレせっせと詰めてくれます。
で、でも、虫さされにお薬を3個もイラナイと思うの。そ、それに蚊帳とかまで入れないでぇ!
荷物が重くて持てなくなってしまいますよう~っ!
アルにいちゃまにもらった兎のぬいぐるみ(ウサちゃん)を持っていくか、すごく悩んだのですが、今回はお留守番をしてもらおうと思います。
だって、サラってば一人でお泊りにいけるぐらいにお姉ちゃんなんですもんっ!
ぬいぐるみを持っていくのは、ちっちゃい子でしょう?
「サラちゃん、本当に置いて行っていいのか? 別荘で一人で眠るんだぞ?」
ウサギちゃん、つれいてった方がいいんじゃないか?と、エドが言外に行っているのが解ります。
で、でもっ! ウサちゃんと寝るのはちっちゃい子みたいじゃないですか?
「持っていきな。でっかいベッドに一人だともったいないだろう?ウサちゃんがいれば、少しは場所ふさぎになるだろう」
・・・そうですね、おっきいベッドにサラ一人だと、スカスカして寂しいですもんね。ウサちゃんについてきてもらいましょう。一緒に寝たら、知らないとこでも眠れる気がします。
「へん、じゃなぁい?」
「アル兄さんに買ってもらったウサちゃんなんだろう? きっと一緒にきて守ってくれるよ」
エドが笑いながら頭を撫でてくれます。
そうなんです、このウサちゃんは結構強いんです。
仔猫の姿に変わった時に、ウサちゃんを移動させようとしたんですが、全然動かなくって体当たりしたら、一緒にベッドから落っこちまして・・・エドが慌てて抱き留めてくれました。
今の姿でも、ちょっと重くて両手で抱っこしなくてはなりません。片手だと、ウサちゃんを引きづってしまうのでね!
このウサちゃんがいれば、ベッドの番人はお任せだと思うのですよ!
だってね、ウサちゃんに抱きついていると、サラはベッドから落ちないんだもの。
・・・うん、やはり、一緒に来てもらいましょう。
今回使う馬車には、お気に入りのクッションをたくさんと、ウサちゃんを載せてもらいました。
ウサちゃんがいれば、長旅も寂しくない気がします。
ナールさまの別荘まで、一緒に行ってね!
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
サラの八つ当たりからの泣きべそを見て、特大の罪悪感に襲われたナールさまは、早速ご自分の領地「王太子領」にある別荘へ遊びに行けるように手配をしてくれました。
そこには大きな湖と山があって、避暑地としてもいいところなのだそうです。
さすがに、エドが一緒に行ってくれるとはいえ、夏の間、子供一人だけでは寂しいだろうと「お友達も一緒に行けるようにしてあるよ、別荘で会えるようにしてあるからね」ってナールさまが言いました。
リンちゃんと、ユールくんが来てくれるんですって!
二人とも忙しくって、夏の間もあんまり遊べないかもって思っていたので、すごく嬉しいです。
リンちゃんは、神殿の筆頭巫女さまで、当代の巫女姫さまなのです。
だから、しょっちゅうイロイロな神殿に行っては歌ったり、お祈りをしてあげないといけないんですって。
サラより、少し大きいだけなのに、ちゃんとお仕事をしているんです、すごいです!!
夏の大祓の祭事の時に、リンちゃん、すごいねっ! とってもキレイでかっこいい!!って誉めたら、照れてしまったのか、真っ赤になって座り込んでしまいました。
本当に、ほんとーに、すごいなって思うんですよ。
たくさんの人の前で、難しい祝歌を歌って、夏の疫病が王都にはびこらないように、浄化の風を呼ぶなんて、リンちゃんにしかできないことです!
とっても暑い日で、キラキラの豪華な衣装はとっても重そうで、細いリンちゃんの体に食い込んでしまうのではないかとハラハラします。
でも、浄化の風を呼ぶのに必要なんでしょうね。リンちゃんは、えらいなぁ・・・。
そのリンちゃんも、お仕事が夏休みになるので、一緒に遊びに行けるのです。
もお、もお、嬉しくってー。
侍女長さんにお願いして、リンちゃんとお揃いのワンピースを作ってもらうことにしました!
サラは淡い薄荷色の綿のレースでできたワンピースで、リンちゃんには淡い海の色のワンピース。これで一緒に湖に行くんです。
「まあ、それは可愛らしくていいですね!
すぐに作りましょう。ええ、大丈夫ですよ。うちのお針子さんたちは優秀ですからね、夏のワンピース位なら、すぐですよ」
って、ニコニコしながら請け合ってくれました。そして、その言葉通り、出来立てのワンピースはトランクの中にしまわれて、別荘で着てもらうのを待つばかりです。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
「最近、サラちゃんが天使すぎて、辛い・・・」
大切な友達の可愛い、可愛いサラちゃんは、ほんっとーにいい子で、くそ暑くってダルいだけの真夏の神事にも、私、リンが歌うというだけで駆けつけてくれる。
いや、みんな避暑に行っちゃって、ガラガラだからさ、神事やんなくってもいいんじゃね?と三番目の兄貴(水の神殿の神官長)に言ってみたら洩れなくゲンコツが付いてきたっていうのに。
あんまり暑いから、貴族はみんな天幕の中で見ているだけだってのに、ちっさいサラちゃん、一番暑い石畳のとこで終わりまで、ずーっと見ていてくれた。
あの小さくって可愛いお鼻が日に焼けて真っ赤になっていたのに、それでも日傘もささないで。
・・・おかげで、思わず本気になって風を呼んでしまったわー。
疫病の基も浄化して、病魔も全部吹き飛ばしておきましたらかね。当分は、王都も安全!
そのうえ、神事が終わったら、裏にまわってきてくれて凄い褒めてくれた。
「リンちゃんは、すごいねっ! 本当にキレイでかっこいいんだものっ!!」
日焼けして真っ赤になりながらも一生懸命に褒めてくれる姿をみたら、こっちが恥ずかしくなってしまいましたよ。
ええ、早いとこ終わらせてサラちゃんと一緒に氷菓子を食べたいって、出番直前までダダをこねたのはワタクシですよっ!
ええいっ!みんなでその生温かい目でみるんじゃなーーいっ!!
あまりの恥ずかしさに頭を抱えたリンとコーフンと日焼けで真っ赤になっているサラちゃんの為に、おつきの神官たちが「お疲れ様、一緒に召し上がれ」って言って、氷菓子を出してくれた。
二人で一緒に座って、シャリシャリとした氷と、凍らせた柑橘類の実を食べる。優しい甘さとさわやかな酸味の果実を齧ると、口の中がすっきりとする。
サラちゃんは、ニコニコと楽しそうに氷を口に運ぶ。「氷菓子、おいしいねっ!」
ほんっと、サラちゃんには、敵いませんって!
・・・まあ、夏っぽくて、これもいいよね。
夏の神事も終わり、リンにだって夏休みをとる権利ぐらいあると思うのよ!
そして、可愛いサラちゃんと、バカンスするんだーーーっ!
よっし、私たちの夏は、これからだ!
あら、出かけていませんね。
でも、次回はもう避暑地についているんですよ!(マテ)
ちなみに、ワタクシの夏休みは、台風とともに吹っ飛びました。都内をうろついています。
え、映画位ならいけるかなーーーっ!(泣