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窓の外にはオドロオドロしい光景・・・というわけでもなく晴れ渡る空にはランランと輝く太陽、時折白い雲も過ぎ去っていく
「いい天気ですねぇ・・・」
窓の外をみながらぽつりとつぶやけば、そうですねぇと返事が間髪入れずに戻ってくる
「ああ、そういえば報告によりますと勇者が領地に入ったそうです」
「・・・マジですか?」
「はい、マジです」
そんな穏やかな天気と空気に似合わない報告をしてくださったのは私の雇い主である魔王城のNO.2であらせられます宰相様・・・ちなみにNO.1は絶賛引きこもり中
「そろそろ魔王職を辞職してもよろしい時期だと私は思いますがどうでございましょうか?」
「魔王様が引きこもられたままですので無理でございます」
にこりと笑ってぐさりと刺してくる宰相様は鬼です!いや、正しくは魔族ですけれども
「それに、雇用期間はあと半年残っておりますし、もちろん半年後には契約更新もしていただきますよ」
「一身上の都合とかそういうのはダメですか?更新も無しの方向で・・・」
「そのご都合の内容をお伺いしてもよろしいですか?」
「身の危険をビシバシ感じるからであります!!」
真面目な話、一般人の私が勇者に勝てるとかそれ以前に戦うとか無理な話ですからね!!
「そこはご安心を、勇者とて人の子、万が一にもこの魔王城に攻め入ったとしてもあなたのように村人Aと言っても過言ではない存在を手に掛けるなどありえません、もしそうなれば勇者とは名ばかりの愚者ですよ」
「宰相様・・・そうはいいますけれど、村人Aがなぜ魔王城にいるのか?という事態があり得ない状況だと思いますが・・・」
「それがお仕事でしょう?」
「・・・はい、そうです」
魔王城の大きなガラス扉に額をぶつけて思わずうめく、なんだって魔王を選んでしまったんだろう・・・と
「それが運の尽きという奴ですね」
「雇い主がそれをいいますか?」
フフフと綺麗な笑顔を見せてくれる宰相様に口では絶対勝てない(それ以外でも勝てないけど)と嘆息するしかないのであり、元凶である魔王(引きこもり)の部屋へあとで突入してやると思わざるをえない天気の良い午後の一時