第6話 家族
ばあちゃん家の門の鍵を締める、日は沈み景色はオレンジと黒の交わる夕闇だ、風が少し強く寒い、家に向けて歩きだそうとすると狐のお面を被った白いコートを来ているモノに出会う。素早く銀王を取り出しブンが鬼術の提供をしてくれる。
「……鬼神……分が悪いかな」
『案ずるなコゾウ、我輩が勝たしてやるのだ』
「やる気満々なのは良いけど、今日は勘弁してほしいな」
やれやれと、両手をあげため息をつく。
立っている位置が丁度影なので狐の面が影で笑っている用に見える。
「………」
「じゃあ、初めましてだね、イレギュラーくん……いや、今は重要な鍵だ」
僕は何も答えず神経を集中し警戒する、間違いなく今まで会った敵より強い……ノベルと同格だろう。
しかし、鍵とは何の事なのか分からないが取り敢えず聞き出せるだけ聞いてみる。
「鍵……僕が?」
「ああ……鍵だよ、詳しいことは教えないけどね」
「僕に合いに来たのは何故?」
くすくすと笑いを漏らし、コートのポケットを漁るそしてゆっくりと近づいてくる、身構えるが体がガチガチで動けない冷や汗が鵬を伝い寒い筈の風が生温く感じる。
「っ!」
『むぅ……コゾウ!放れるのだ』
動かない足を動かそうと必死になるが目の前に狐面がすでに居て僕の左腕を掴む死人の用に冷たいその手は僕の手を開かせ魔除針に形が似た石を渡した。
「酷いな、そんなに怖がらないでよ僕は戦いはあまり好きじゃないからね」
「これは?」
『主の気配がするのだ』
僕にも分かる左腕から満たされる力が全身に廻る。
「今度の闘いはそれが必要と思ったからね、鍵が壊れちゃ台無しだ……それに……いや」
何か言おうとしたが、口ごもる夕闇はすっつかり暗闇になり電灯と三日月が僕をてらす。
「……信用していいの?君は敵だろ?」
「鬼は嘘は着かないよ、少なくとも嘘で塗り固めた世界にいる人間よりは信用できるさ」
そう言い残し、黒い炎に包まれ消えた重い空気が無くなりペタンと座り混んでしまった。
暫く放心状態のままでいると肩に温もりを感じ揺さぶられているのが分かる。
「奏歌!奏歌?!どーしたの」
「はぇ……姉さん……なんでも内よちょっと貧血」
咄嗟の嘘をついて立ち上がろうとするが腰が抜けてたてない。
「はぁ……いくよ」「…手貸して……」
「はいはい、お節介はしない………ってえ?!」
なぜか右手を広げ顔の前にパーの形で驚く、漫画なんかだったらズキューン!とかドドドドォって効果音が付きそうだ。
「なに驚いてるの?」
「だって、あんた手伝おうとしたら、一人で出来る!とか、余計なことしなうで、とか断るくせに」
「……………」
しょうかないわね、と言いつつ手を握り引っ張ってくれた。
「ありがと」
「う〜ん、萌えだろ……さ!帰るよ!」
何か呟いていたけど、疲れていたのでスルーだ家に着きリビングに入ると大量のお摘みとビール、それとキムチ鍋があった。
「おかえり〜歌音、奏歌〜」
「お酒くさい、あと抱きつかない!」
間違いなくこの母親から姉さんは抱きつき癖を受け継いでいる、父さんはキッチンで鯖の味噌煮を作っていた。
「父さん、久しぶり」
「ん、奏くん、お帰りそこのお皿取って」
「はい、魔王が降臨してるけど父さん良く無事だったね」
苦笑いしながら黒縁眼鏡のズレを治す。
「詩音さんだってそのへんはわきまえているさ」
夜が大変だと、呟き味噌煮を運ぶ。
この後母さんのハイテンションと姉さんの愚痴を聞かされ疲れたのは言うまでもない。
「はぁ……疲れた」
『愉快な家族だな、我輩は楽しかったぞ』
床に入り、久しぶりのベットに寝転ぶ僕は布団の方が好きだけど敷く気に慣れなかった。
「でも会えてよかった」
『うむ、家族は良いものだ必ず生きて帰るのだ』
「うん……わかった」
不安で眠れないと思ったがその不安や迷いは壊れ、不思議と眠りに着けた。