第2話 扉の向こうで〜輝〜
あたり一面に広がる光景は澄渡る空、果てしなく青く暖かい日差しが心地よい、そして目の前にはエメラルドブルーの南国の海が広がっている。
俺は取り敢えず当たりを見回し状況の整備と土地の情報を得るため式神を飛ばした、ビーチらしき場所から道路に向かいポケットから颯双を取りだし手にはめる。
偵察から帰ってきた式神を戻す、誰かが近づい来ると言う情報を得た。
ツンツンした青い髪を揺らしながらアロハシャツにカイパン、手に三味線を持っている青年がヘラヘラしながら近寄ってくる、俺はただその懐かしい姿を見ているだけだ。
「ういっす〜狩崎〜久しぶり〜玲二兄さん見参!だぜ〜」
「……………」
「お〜い、はぁ黙りかよ〜玲二兄さんは寂しいぜ〜」
「……玲二…」
「おっ!なんだね狩崎〜玲二兄さんは嬉しいぞ〜、相変わらず無愛想だな」
ヘラヘラと笑い、俺の頭に手を乗せる、生前のテンションそのままで本物を相手にしている用に感じる。
「あぁ〜懐かしいな〜クルツと玲哉と母さんは元気か〜?」
「本物か?……いやそんなハズ」
「ああ〜良く分からんが、俺は本物だぜ〜不思議だよな〜でも会えて嬉しいぜ〜」
何か言う前に
「あぁ〜」と言う口癖に鵬をカク癖、そして言葉の最後を伸ばすやたら背だけは高い青年は間違いなく鮫島玲二だ。
「俺も嬉しい」
「あぁ〜!狩崎がぁ素直だ?!カナメ様のお陰かぁ?!」
「ああ、その通りかもな………質問の答えだ、クルツは多分元気だ色々あって今は居ない、玲哉は最近腕を上げている来年はデビュー戦だな……鮫島さんは最近病状はいいようだな元気だよ」
玲二はウンウンと頷きホッとした用に胸を撫でおろす、その後も今の状況や俺達の様子を聞き心配してくれる。
「あぁ〜、おっと本題だな、頭にビビッと来たぜ〜なんか知らんがお前は何も考えずに休めらしいぜ〜」
「……休め……それだけか?」
「あぁ〜そうらしいな」
ため息一つ砂浜に体を委ねる、細かくサラサラする感触、柔らかい砂が心地好いが……何か意味があるのか?
「あぁ〜眉間に皺が寄ってるぜ〜」
「む」
「あぁ〜リラックスだ、ゆっくり休めばいい」
いかんいかん、直ぐに物事を深く考えてしまう。
もう一度目をつむり、ユックリ目を開ける早い流れで流れる雲に波の音、時々吹く暖かい風が安らぎを与えてくれる。
「あぁ〜、俺も寝よ」
三味線を置き隣にバフっと寝転がる。
「呪眼は大丈夫か?」
「ああ、最近一回使ったが問題ないさ」
「悩みは相談してるか?」
「まぁ一応な」
「………そうか……お前変わったな」
「ああ自分でもビックリだ皆のお陰だな………もちろん玲二も」
人は変わる、変わる事が出来る俺は皆にそれを教わった、だから今の俺がいる。
「で、カナメ様は………どうだった?」
「ん?元気だな……羨ましいくらい元気だ」
玲二が目を半開きにし怪しい笑みを浮かべ聞いてくる。
「あぁ〜違う違う、ヤったのか?」
「………………」
「お〜い?まっお前の事だどーせまだ何もしてないんだろうな……はぁ〜狩崎ダメだな」
玲二に言われると腹が立つような立たないような微妙な感覚を覚える、事実なので反論はしないが。
それ以降俺達は口を開かない、喋らなくても雰囲気は穏やかだ何も考えず空を見上げ体の力を抜いたのは何年ぶりだろうか………。
気付けば高かった太陽はもうその半分を海に沈めている。
「……そろそろ、お別れだな」
「そうか………」
「どうだ?体が軽いだろ?」
確かに軽い用な気がする、動きのチェックを確認する普段より数倍キレのある攻撃が出せる、頭もすっきりしていた。
「あぁ〜お前の課題は結果がでたな〜合格!俺の出番はここまでのようだな、じゃな〜!」
「ああユックリ眠れ」
はっきりしていた体が透けてどんどん消えていく、俺は完全に見えなくなるまで玲二を見送った。
ぎぃ……。
俺の目の前に扉が開き眩しい光が漏れる。
俺は最後に空を見上げ扉をくぐった。