第18話 勇者とクロス
深い谷がそびえて草木が少なく茶色い地面に風が容赦なく吹き付け地面をけずる。
幾度のオレンジ色の閃光を交わし峰打ちを繰り出すが寸前の所で不可思議の力で弾かれ、かち合う。
「ぐは……クロスもう止めだ!お前は争ったりするのが嫌いな子だったのに!」
「………」
「っ!旋風!龍共鳴!!」
手をかざしなぎはらう用な動作をする、突然白く獰猛な爪と純白の鱗を纏わせた巨大な腕が俺様を吹き飛ばす。
骨の軋む音が解る、勇者と言っても所詮は人間だ、痛い物は痛い。
「くっ!」
「もう……遅いのですよ、もう……託さんなんですよ!断罪せし剣!!」
「勇者!彗星斬りぃぃぃ!」
天空から降り注ぐ数多の光の刄を弾く、砂煙に紛れ右斜めから我が愛武器を思い切り振り切る!
が……その攻撃がヒットするまえに腹部に激しい痛みが走り口に鉄の味が広がるに腹部に刺さったままの俺を持ち上げ壁に叩き付ける。
「かはぁ……クロス……」
「……セイ、邪魔しないでほしい」
「ダメだ!勇者として他の者を守る義務がある!お前がやろうとしているのは殺戮だ!」
腹部を抑えたち上がる、わかっていたが10年前に闘った時とはわけが違う、此では鮫に立ち向かうシラスだ。
「私を拒絶しない世界を求めてなにがいけないのですか?」
「だからって!かは……自分以外を全て滅ぼして良いわけがないぞ!!勇者!縦一文字斬りぃぃぃ!」
「懲りない人ですね」
空中からの必殺の一撃を棍棒で簡単に弾かれる両先に蒼い宝石がついて紫の布がクロスを守るようにはためく宝石に血が着いているので腹部に刺さった物はあれだろう。
「まだまだ!!勇者!失風弾斬!!」
「遅いですよ」
「ぐぅぅ……うぉぉ!」
クロスの六対の翼が鋭くなり刺さる、それを無視し突っ込むが今度は尻尾のようなものに殴打されまた吹き飛ぶさらに腹部にたる傷を踏まれうめくが喉に棍棒を突き付けられた。
「貴方にエミティ達を向かわせなかったのは、わざとです……貴方には生きてほしいから」
「ぐっ!止めろクロスまだ間に合う!皆も許してくれる……な?」
「世界は……変わりません……もう解放されたいのですよ、この死ねない躰を蓄積され続ける知識をオモイデを……疲れましたよ」
「………クロス……ぐっ!」
「貴方の説教は要りません向こうの神鬼を手に入れれば死ねる!力を!知識を……邪魔はさせない」
体の重みが消え純白の翼が闇夜に美しく映える、クロスの上空にオレンジ色の閃光が球体を作り太陽が出ているかの用に周りが照される。
「オモイデとなりなさい……そうすれば私から離れていかないから」
「絶体絶命か……情けない勇者とあろうものが」
夢幻を支えに立ち上がるが動けない、クロスの哀しい微笑みが心残りだがこれも運命だろう抱き止めてやるか。
「クロス」
「っ!」
最期に声を掛けようとしたが真っ赤に燃え立つ爆炎がクロスの前を遮る。
「間に合ったようだな……勇者さがれオレとレイが相手をする」
『そうですよ〜私達の最強コンビにお任せ!』
春樹が援護に来たようだ、息を弾ませている所から全力で駆けつけてくれたのであろう。
「礼を言う春樹、イイツラだ」
「ああ、俺も長くは持たない奏歌とクルツがもうじきくるが藤城たちはまだ時間がかかる進軍も穏健派と藤城の仲間たちが抑えてくれている、少し休め!」
激しい焔が剣に纏いレイの刀身が大剣から細身の剣になり灼熱の刄を形成している。
「……また雑魚ですか……消えなさい!」
「レイ防御だ合わせろ!」『了解!』
師匠に教えてもらった“洙印静鱗”そして藤城夕夏に頭を下げて影こっそり教えてもらった契約鬼とのシンクロで最強になったオレの盾はクロスの攻撃すら楽々防げるようだ!
「……無限の盾の差し金ですね、いいでしょうまずは貴方をオモイデにしてあげます」
「上等だ!」