第17話 進め!
少しの時間の休憩だけど深緑の泉のお陰でかなりの回復が出来た元気になった僕達はさっそくクロス討伐の任務に向かう。不気味すぎるくらい敵の妨害がなくすんなりと屋上らしく場所についた。
「いない?」
『いや、真上なのだ!回避の指示を出す!』
ブンがクロスの存在を素早く突き止め回避の行動をつむぐがそれより速く輝が僕を抱えオレンジに輝く閃光を回避した。
みんなも無事に回避することが出来たらしく武器を構え臨戦体制に移った。
「愚かしですね……勝てるわけのない闘いを仕掛けてくるなんて」
「君がクロス?」
眩く光輝く六枚の翼を拡げ冷たく憎悪と哀愁を含んだ琥珀色の眼が僕達を見下ろす。
「えぇ…私はクロス・シャドーハート……今から貴方は私のオモイデにする者です」
「……奏歌、今回ばかりは俺はお前を守るだけの余裕はなさそうだ」
「わかってる、あの子凄く強い」
空気がピリピリとし息苦しくなる、背筋にも冷や汗が流れクロスの動作一つでプレッシャーを感じる。
「さぁ、死にもの狂いで来なさい」
六枚の翼を広げ両手を左右に翳す、次の瞬間にはクロスを中心に見えない力場が発生し光に包まれる。
「くっ!間に合え!」
「ちょっと……この威力!」
「ブン!防御に全力をそそいで!」
放たれた衝撃波から身を守るため一斉に防御を展開する、その威力はまるでミサイルを零距離で受け止めたような威力があるんじゃないかと思わせるほどだ。
「……退屈しのぎにはなりそうですね……ガバナー、ザコは任せます」
「は!承知いたしました、このガバナー全身全霊で任務をこなして見せよう」
クロスが呟くと何処からともなく声が響き鉄救が地面から飛び出てくる。
そしてゆっくりと這い出てきたのは六将と呼ばれていた兵器の生体ユニットとにているオジサンだ。
「悪いな!お前達、我々の相手をしてもらうぞ!」
ガバナーが腕を振り上げ、鉄球を回収し指をならす。すると地面から大量のタイプ・デーモンそしてエミティ・ドールさらには僕が倒した顔色の悪い男が僕達を囲む。
「戦力差は十対一ぐらいだな……向かってくるならヤルだけだ」
伊吹が呟き、不適に笑っているが状況は圧倒的に不利おまけに援軍は期待できない。
「伊吹の言う通りだ、制圧だけを考え闘う」
「鬼狂……やるわよ」
「KR…Sシリーズっすか……みんな気を付けるっす」
クルツが敵の戦力データを伝え身構えた。
「みなかかれ!!」
ガバナーの指示で一斉に向かってくる敵の数まるで軍隊アリに襲われる虫の気分だ各自に群がって行くエミティは何故か僕により多く向かってくる。
正面から挑んでも悪戯にドールの性能を上げてしまうだけだ、一時距離をとり雷桜閃花を放ち再び離れるヒット&ウエイの方法をとり闘う。
「多対一は……!得意じゃないのに!」
『まぁ、一対一でも危ういがの』
ブンの言葉にすこしグサリと来るが休んでいる暇はないブンの指示にしたがい引き付けたエミティ・ドールやデーモンに礫が大量の飛来し隙ができる礫に追加した磁力は敵を一纏めにし纏めて葬り去る。
「はぁぁぁ!!」
地面が陥没し敵は跡形も無く消えるが、直ぐにエミティ・ドール達が仕掛けてくる。
それをなぎはらい、止めどなき続く攻撃を受け徐々に後退する。
皆も同じような状況なのに輝と伊吹は顔色一つ替えず敵を一撃で仕留めていく、夕夏もクルツも広範囲の発動が可能な能力を駆使し敵を殲滅していく。
「奏歌殿、援護する!ベヘモット!」
『ウォォォォ!』
背後から迫るエミティがベヘモットの凶悪な牙に噛み砕かれる、見ると返り血で口を真っ赤に染めたベヘモットがとぐろを巻く形で僕を囲む。
「援護感謝します!はぁ!」
「ふん!奏歌殿の護衛が今回の依頼だ!傭兵のプライドにかけて君を守ろう!」
ベヘモットが大きく咆哮しスパイラル回転でエミティの集団に突っ込んでいく。
「合体技だ!」
さらに加速と破壊力を増すため銀吹雪をベヘモットに放ち勢いがました。
「邪龍彗銀撃!!(じゃりゅうすいぎんげき)」
雷が落ちたような轟音とともに敵は光になる。
「は!そう言えばクルツは?」
「はぁ!ベヘモット!わからん……セイ・コントも居ないようだ」
エミティ・ドールの戦闘力が上がりつつあるので一苦労だ、伊吹が紅い烈風を放ち道が開く。
「奏歌!時間がない、ボクたちが抑えるから先に行け!」
「でも!」
「迷うな奏歌、伊吹と夕夏も居る、それよりクロスだけは止めなければ行けない!」
「クロスが向こうに出現したら、エミティの部隊が来るより深刻なのよ!」
こうして話している間にも増援は続く、エミティの数よりドールやデーモンが圧倒的に多い今クロスを倒すことが逆転の鍵だろう。
『コゾウ、行くぞ!』
「わかった!皆も無事で!」
進行方向にいる敵を銀吹雪で消し去りブンの探知能力でクロスの後を追う。
さっき僕達が通ってきた谷に勇者さんとクロスの気配を感じるらしく外に出ようと銀王を伸ばし柱に巻き付け屋上から飛び降りようとするが鉄球が肩をかすめる。
「いかせるかぁ!」
「ベヘモット!奏歌殿ここは俺に任せろ!」
ガバナーが僕に攻撃を仕掛けようとするが鉄球をベヘモットが弾き援護防御をしてくれた。
「よし!行こう!」
『うむ!』
暗闇に向かって全力で走りだした。