#4 名前
……。
……………。
…う…ん?
「…あぁ、そうか。ここがゲームの中か」
俺は暗い場所に立っていた。
周りがよく見えない。
周囲を気にしてみれば人がいるのがわかる。
段々と、周りが騒ぎ始めて来た。
数にして数百人。
この人数にもなると、学校の終業式に来た気分になる。
そして、明かりが付いた。
「うおっ…まぶしっ…」
『レディスandジェントルマン‼︎ウェルカムtoCDO‼︎』
俺が立っていた場所はホールの様な所で、舞台の上にはスーツを着た司会者(?)がイヤホンマイクを付けて叫んでいた。
先程の声の主は彼の様だった。
『CDOへようこそ、ベビー達。私はベビー達をルーキー達に仕立て上げる為に用意されたAI〈クドゥー〉。CDOを発音してクドゥーだ」
クドゥー…さん。
よっしゃ覚えた。
正直、AIとか意味がわからないけど、ベテランプレイヤーなら頼りになりそうだからな。
『それじゃ、早速クエスト行くZE★』
ピコンという原始音のような効果音が頭の中に響く。
【クエスト:メニューを開こう!心の中でメニューを想像すればOK!】
…フーン。
メニューってそんなに簡単に出るのか。
周りの人たちは既に虚空の位置を指で動かしたり、見えないキーボードを叩いたりしていた。
俺も早くしないと…
イメージを膨らます為、目を閉じる。
「えっと…メニュー…メニュー…いや、そもそもメニューがどんな物かわからないから想像のしようが…」
考えるのをやめて、目を開けると。
〈メニュー〉と書かれた小さな画面がうかんでいた。
「結構簡単に出るんだな」
俺はそのまま、メニューに表示されているクエスト一覧をタッチする。
そこには先程のクエストが表示されていて、クエスト報告が点滅していた。
【クエスト:目標達成です!※クリア報酬は直接アイテムBOXに転送されます】
…なんだろ。
ものすごく簡単なクエストのはずなのに、疲労感がすごい。
『クエストクリアおめでとう!次のクエスト、行ってみよう!』
先程はクドゥーさんの声が耳から聞こえたのに、今度はクエストを受けた時に流れた効果音みたいに頭の中に響いた。
どうなってんの?これ。
ピコン…
【クエスト:名前を決めよう!メニューに新しい項目が追加されました!名前は一度決めると、変更出来ません。既に存在する名前は使用出来ないので、よく考えてね!】
「名前…か」
俺はメニューを開ける。
なるほど、確かに名前設定がメニューに追加されている。
あなたの名前を入力して下さい。
〈〉
…どうやって入力するんだ?
てっきり透明なキーボードが出てくると思ったのに…
いろいろ思考錯誤した結果、名前を入力する位置をタッチすることだと分かった。
現れた半透明のキーボードを慣れない手つきで操作する。
あなたの名前を入力して下さい。
〈響〉
ま、この辺が無難だろ。
【名前は3文字以上、12文字以下で入力して下さい】
「え、マジで?」
だとすると、だ。
あなたの名前を入力して下さい。
〈ヒビキ〉
これでどうだ。
【この名前は既に使われています】
「マジか⁉︎」
うーむ、ヒビキが使われているって事は、このルートは全滅って考えて良さそうだな…
…この名前だけは使いたく無かったが…
仕方ない。
俺は、一生使わないと決めたその名を使う事にした。
響はなんて名前にしたんでしょうねぇ(*´ω`)