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遅くなって申し訳ありませんでした。


誤字などがありましたらお知らせください。

「あれ、意外と反応薄い」

「そこな、双子はまぁうすうす気づいていたんでしょうけれどもイリアさんにまで反応薄いと魔王としては悲しいですね」

「いや、反応しろという方が無理と言いますか……」

 イリアの言葉に双子が刻々と頷く。

 魔王と言えば、おとぎ話の定番の悪役。邪知暴虐の限りをつくし、人を人と思わない冷徹非道。過去に世界の半分の所まで侵略をし、戦争が終焉しても人側に癒えぬ恐怖を植えつけた異形の王。それがこんな人良さそうな顔をしている、しかも人間の姿で、自分たちと当たり障りなく話をしている。自分たちのキャパシティーを超えていた。

「双子ちゃんは気づいていたの?」

「魔王とは思わなかったけれども」

「そうそう。なんか、わけあり魔法使いかなと思っていた」

「なんで?」

「だって、こいつ毎回毎回せっかく作った結界をぶっ壊していくんだもの」

「そうそう。その度に練度を上げているはずなのに……」

「それは俺が頼んだんだよ」

「「えェーーー!!」」

 イリアたちが固まっていた間にホットミルクを用意したデュークはその中にドバっと蜂蜜をいれてかき混ぜた。

「そんな悪食していたら、長寿でも早死にしますよ」

「あきらめろ」

 イリアのじと目を無視しながら、デュークそれを飲もうとしてその手からカップが消えうせた。

「お前らなぁ」

「どうゆうことなの、デューク」

「返事次第では許さないよ」

 カップの中身がぐつぐつと煮えはじめていた。ルシファーはそんなやり取りをにやにや見ていた。

「いや、そっちの方がお前ら的には面白いだろ」

「「う」」

「どうせその膨大な魔力を持て余しているんだ。たまには刺激があっていいだろ」

「「ちッ、どうも」」

「どういたしまして。返せ」

 デュークの手にカップが戻った。

「あつッ!!」

 結局こぼした。イリアが慌ててこぼした中身をふく。

「家族みたいですね」

「黙ってろ、胡散臭ささが服を着たようなやつめ。絶対今度のことはお前が仕掛けたはずだ」

「ひどい言われようだ」

「あ、そのことです!魔王があなたならつまり、あなたが魔王として再び進撃してくるという事じゃないですか!?」

「いや、私的にはやる気がないんだけど。部下たちがねェ、血気盛んでもう」

「つまり、部下たちが勝手に暴れまわっているだけだと」

「それはおかしいね、フィンリー」

「そうだねおかしいね、フィンリー」

 双子の言葉にイリアが頷く。

「それなら今までと変わりません。それは私たちの小遣い稼ぎです。魔物退治」

「そう。今回は勝手が違ってね、私ではないものが魔王と自称し軍を編隊し人間界へと向かおうとしているんだよ。ほら、私って穏健派だから」

「つまりてめェーの尻拭いかよ」

「そうそう」

 ルシファーは頷いた。デュークはあからさまにけだるそうな顔をし、イリアは顔を輝かせ、双子はルシファー自体が嫌そうな顔をした。 

「駄目か?」

「「「いやだね」」」

「えぇー!どうしてですか!?」

 反応したのはイリアだった。

「もったいないですよ!折角の機会を!」

「どんな機会なんだこれが」

 デュークはため息をついて尋ねた。

「だって、魔王退治ですよ!やる気おきませんか!?今まであんなショボイ戦闘しかしてこなかったんです。こう、わくわくしませんか!?」

「脳筋だね~イリア姉は。ね、フィンリー」

「うん。相も変わらず脳筋だね、フィンリー」

「本当、脳筋だよお前」

「ひどい言われよう!」

 イリアは机に突っ伏した。ルシファーがくすりと笑った。

「ま、別に私は魔王討伐をしろと積極的に言うつもりは無いよ」

「そんな!?」

「言ってることハチャメチャだぞ」

「そうですね、私的にあなたが魔王討伐をすること自体に興味があるわけですから、あなたがやるつもりがないとすれば私は何にもしません」

 それを聞いてデュークの目が僅かに鋭くなった。

 双子はそれに気づき、イリアは一人で唸っていた。ルシファーもデュークの様子に気づき、先を促すようにデュークを見た。

「質問が二つある。正直に答えてほしい」

「いいですよ」

「一つ、魔王自称の奴は本当に隊を作りこちらに攻め込もうとしているのか」

「はい」

「もう一つ、お前は本当に何にもしないんだな」

「はい」

 デュークは頭をがしがし掻いた。

「見返りは」

「以前同様ないですねぇ~」

「イリア、お前若造に会ってこい」

「えッ」

 おでこに痕をつけたイリアが驚いた顔を上げた。

「いつでもいいから」

「そういう事ではないです。そ、そのなんで、あの」

「なんだ、恋人に会うのがそんなに嫌か」

「こ、恋人じゃありません!」

 顔を真っ赤にしながら、イリアは答えた。

「ま、いいんだけど。いつでもいいが、早めに言ってこの事を進言。あの書類送ってあるから、話は早いだろ。で、非公式で俺たち雇うように頼め。色仕掛けでも何でも使って」

「色仕掛けなんて使いませんよ!……でもなんでですか?」

「は?国王が一番金持ってんだろ」

 何を当たり前、とデュークは逆に驚いた顔をした。イリアは呆れた。

「いや、そんなさも当然という顔をされても困るのですけど」

 二人を交互に見遣ってからルシファーはより一層胡散臭い笑みを深めた。

「それはイエスと捉えてもいいのですかねぇ~?」

「そうだな~、そういうことになるのかなぁ」

 天井の木目を見ながらデュークは曖昧に返答した。にもかかわらず、デュークは満足げに頷いた。

「いやいやそういう事ならいいのですよ。頑張ってくださいね、応援してますから。私」

「お前の応援貰うぐらいだったらミミズに貰うわ」

「そうですか、喜んでもらって何よりです」

 そう言って、ルシファーは立ち上がった。全員に軽くお辞儀をしてドアの前まできた。最後にきれいなお辞儀をして入口のドアを閉めた。もう、誤魔化す必要を感じなくなったらしい。今までは姿が見えなくなるまで馬車で帰っていたのだが、ドアが閉まる瞬間にその気配が消えうせた。いつも持ってきている馬車も見せかけのものだったらしく、ルシファーが消えたと思った時には窓の外からも消えていた。

 その時ルシファーによって使われた膨大な魔力の片鱗が垣間見てしまった双子とイリアは身を強張らせた。双子はもともと魔術師であるから、魔力を認知することは容易であるが、イリアは三人が言う様に脳筋である。男であればと残念がられるほどの剣才を持ち合わせ、自らも出来るところまでその才を伸ばしていきたいと思ってる。その才が大部分を占めてるせいか一般的な感覚よりさらに魔力を認知できるのは難しい。そのイリアでさえ、ルシファーの魔力のほんのわずかを認知し、身を強張らせるほどである。双子は脂汗をかいていた。

 しかしそれも僅かな緊張の時間であった。

「あ、待てよ。戦争起きたら物価が高くなるじゃんか。そしたら、砂糖とかは余計に高くなる。若造から送らせていた甘味が食えなくなるじゃんか!いけない、これは重大なことだ。早急に手を打たないと……!イリア!今すぐ若造の所に行って話してこい!」

 イリアは私はなぜこの人の所にいるのだろう、と自分の選んだ道が間違っていると確信しかけた。

 双子はデュークが長々と呟き終わった後も目を瞬かせ一拍、間は開いたがすぐにこれほどにないという驚愕の顔をした。

「「これは大変だ!!」」

「今すぐ砂糖漬けや蜂蜜を買ってこないとね、フィンリー」

「キャンディーも忘れないようにしとかないとね、フィンリー」

「お前ら特に蜂蜜を買ってこいよ、それが一番安いんだから」

「了解であります、リーダー」

「リーダ、おやつの料金はいくらまでありでありますか」

「ばっか、300に決まってんだろ」

 ばかはお前らだ、思わず口に出そうになった言葉をイリアは胃の腑まで押し返した。

「分かりました、分かりました。お金は私が後で渡しますから、双子は私が城に向かう時に一緒に行きましょう。その代わり、行くの明日ですからね」

「「お守り付かよ~」」

「当たり前です。何言ってんですか、子どもが。とりあえず、デュークは身支度を整えて。双子はどうせあとで書庫にこもるんだから、その前に片づけてね。デューク、できれば服装は動きやすいやつで。どうも水を引いている川がこの前の雨で詰まったりとかしているみたいです。できればそれを直してくれると嬉しいです」

 イリアが言葉を連ねていくたびに双子とデュークは嫌な顔ををしていった。

「やだなぁ」

「やってください。そこにいるだけの置物になりたいんですか」

「分かったよ、後でな。後で」

「ちゃんとやって下さいよ」

「へいへーい」

 そう言ってデュークは文句を言う前に寝室に戻って行った。 

 部屋を見渡すと双子はもういない。ガチャリとかぎを閉める音がした。もちろん、片づけなんてやっていない。

 なるべく出さないようにと気を付けているため息も出てしまった。とりあえず、部屋の掃除に取り掛かった。そして掃除をしながら思った。

 驕っていたわけでは無い。ただ甘く見過ぎていた。

 あの凍った空間はデュークがいなければ壊せなっかたと、そう思った。

「あ、やっべ。借金返すの忘れてた」

 ドア向こうの声を聞きながら無言で首を振った。

「まぁ、それでもこんなんじゃ尊敬されるわけもないか」

 何も知らない鳥のさえずりが聞こえてきた。

読んで下さった方々に最大限の感謝を。

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