1‐1
初投稿のタロット・トリップの息抜きで作りました。
だから、すごく拙いですorz
誤字などがありましたらお知らせください。
「準備は……いいですね?」
静まり返る店内。
一つのテーブルに客、全員の視線が集まっていた。
「構わねぇよ」
どかりとふんぞり返って座る少年が、砂時計を持つ店長に挑発気味の視線を投げかける。
そのことにむっとした店長は容赦なく、砂時計を置くと同時に言葉を発する。
「スタート!」
「「いただきます」」
幼い双子の言葉はぴったりと揃い、目の前に向こう側が見えないほど積まれているスパゲッティーを
「「ごちそうさまでした」」
食べ終わった。
「いっよぉぉぉおおおしゃぁあああッ!」
少年が高らかに叫んで、双子の子の頭をくしゃくしゃに撫でまわす。
「なんだと……?!」
「何が起こったんだ?今」
ざわざわとざわめく周りの客とは違い、呆然と立ち尽くす店主。
砂時計はまだ砂が落ち始めたばかりだった。
げへへへと悪人顔で少年が店長に向かって言った。
「ちゃんと十秒以内でしたでしょう?はい、片方五千で一万プリーズ」
手を差し出して催促をする。
呆然としていた店長はそこでようやく元に戻って、ぷるぷると震え始めてレジに取って返しそこから無造作に紙幣を掴み、戻ってくるとテーブルにばんっと置いた。
「毎度あり!んじゃまぁ、行くぞ」
「行くってよ、フィンリー」
「分かったよ、フィンリー」
くすくすと笑いながら、自分たちの姓を呼び合って少年の後を小走りで追いかけて行った。
紙幣をきちんと財布にいれて、最後に意地悪く笑ってひらひらと手を振って、店から去っていく。
店主はとうとう、怒りに顔を赤くして叫んだ。
「二度と来るな!」
「忘れなかったら、そうしますー」
「すー」
「すー」
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町の市場を店の騒動の少年と双子の子どもはぶらぶらと歩いていた。
「つーか、デュークは食べてないじゃん。ね、フィンリー」
「そうだよ。まぁ、おいしかったからいいけれどね。フィンリー」
「成長期も度が過ぎれば、お荷物だってこと分かれよ?お前ら」
少年もとい、デュークが呆れたように双子の子どもに言う。
先ほどの飲食店の時のように、この双子の子どもは小さな外見構わずよく食べる。その分食費がかさんで、稼いでもそのほとんどが双子の胃袋のために使われていた。
「「子どもだから分かんなーい」」
「そういう時だけ、お子ちゃまかい。魔術師のくせに」
魔術師に反応して、双子が嫌味で反論する。
「勇者が何言ってんの」
「あ、もう定年でしたね」
「おじいちゃん」
「若作り」
「どうしてこうも、口悪く育ったかね」
ちなみにデュークは外見を偽っているのではなく、きちんと本来から少年の身体である。
「「親が口悪いからでしょう」」
ちなみにちなみにデュークは双子の本当の親ではない。……少なくとも、この双子はそうだ。
「あぁ!もう!どこへ行っていたんですか!?」
三人が歩く少し前方から声がかかった。
絶妙なプロモーションをした女性が三人に向かって、駆けてくる。
「散ッ」
「「サーイエッサー」」
デューク掛け声と同時に三人がてんでバラバラの方向へと逃げ出した。
「どうしてそうなる!?」
「「「来られたら逃げたくなる。それが本能」」」
「嘘つけ!」
一人対三人。しかも三人はそれそれ違う方向へ逃げているのでは女性に不利すぎた。
「双子!今度からお菓子買ってあげないよ!」
スタッ
足を止めたデュークは、後ろを振り返って女性の元に移動している双子にため息をついた。
「お前らー」
「すんません、兄貴」
「お菓子無しは死活問題っす」
双子はデュークに向かって、「サーセンしたー」と腰を折った。
苦笑したデュークの元へと、双子を連れて女性が足早に寄ってきた。
「何やってんですか。何やってたんですか」
「逃げていた。料理の店のオヤジに挑発かけて、こいつらの飯と一万貰ってきた」
「一万も!?めちゃくちゃ悪人じゃないですか!」
「そうかもしれない」
「かもじゃなくても、そうです!」
怒鳴る女性に周囲の人々が関心を向け始めた。
怒鳴る女性。と向き合って話している少年。そして女性のわきには子ども二人。
構図としてはばっちりだ。
ひそひそと話している町の人にはっとした女性は、少年の腕を掴んで路地裏へと入って行った。
「まぁ、逃げたわ」
「まだほんの少し幼かったわよね、男の方」
「あの齢で、二人の子どもを」
「あら~もしかして、どこかの貴族との駆け落ちだったりして!」
「「まぁ!!」」
早くも話が肥大していたが。
ということを知らない女性以下数名は、路地裏で話していた。
「もう!どうして先に逃げるんですか!ねちねち説教くらったんですけど!」
「逃げても逃げなくても、説教くらうんだからいいじゃん」
「よくないわ!」
「お色気で逃げ出せばいいのにね~。フィンリー」
「そうだよね。フィンリー」
女性の胸を見ながら、双子は言った。
片手で胸を守りながら双子の頭を片手で殴った。
「「痛い」」
「子どもを殴るなよ。純情だね、相も変わらず」
「私は、十七なんですよ!当たり前です!!」
「貴族社会では十六で社交界デビューだろ。とっくに成人してんだから」
「いや……。でも、ですね……。恥ずかしいものは、って違います!」
赤面していた女性は、論点をずらされていることにようやく気が付いて、首をふった。
「説教食らった後、賠償金払う羽目になったんですよ!私が!一人で!」
「別にいいじゃん。建物少し壊したって」
「固いよね、イリアは」
「そうだよ」
「問題はその建物ですよ!」
イリアという女性は言った。
そう、問題は壊した建物。強盗を捕まえる依頼のため、追い込んだまではいいが、争っている衝撃で近くの建物を少々壊してしまった。問題は近くにあった建物の内一つが貴族の屋敷だった。強盗を縄で縛って、デュークと双子は早々と逃げたがイリアは逃げ損ねてしまったといわけだった。
この依頼は、魔術師である双子の持て余す魔力を発散させるために受けたものだったので、建物を壊すことは前提に入れていた。
が、報酬の半分以上を賠償金に充ててしまった。そのことにイリアは怒っていた。万年金欠なのだ。この集団は。
「別に怒られることはもう当たり前で、あなた達が逃げることも当たり前なんですが。あんの貴族、貴族のくせにぼったくって、無駄に小言が多くてしかもべたべた体を触ってきやがって、畜生野郎」
「おーい、口調崩れてるいるぞー」
拳を握りしめて、怒りがほとばしるイリアにデュークは呼びかけたが、聞こえていない様子だった。ぶつぶつと「無駄に宝石で身を固めてんじゃないわ。香水もあってないし、教養ないんじゃね。それでも貴族なわけ」悪口を喋っていた。
「あーあ。デュークのせいで」
「なんで、俺」
「口調が悪いのが移っちゃっているよ」
「昔はあんなに丁寧だったのに」
見上げてくる双子を見て、イリアを見る。
黒い何かが見えるようでデュークは困ったように頭をかいて、イリアに尋ねた。
「とりあえずどのくらい残った?」
「一万五千」
「はぁ~!?ぼったくりにもほどがあるだろ!よーし、お前らその貴族の家、強襲すんぞー」
「オーケイ、リーダー」
「任せとけ、リーダー」
「リーダーの言い方に嫌味しか受け取れねーよ」
簡単に貴族屋敷を襲う事に対して、表にいて誰も異論が出ないところがこの集団の特徴だ。
普段は常識人であるはずのイリアでさえ、今は正常に働いていない。
「金品奪って、どうせそういうやつらは不正しているんだから、不正ばらまいて憂さ晴らしするぞ!異議がある人」
「「「ないでーす」」」
「じゃあ、やるぞ!」
元より更新遅めの私が空に遅くなるであろうと予測できる代物。
ではなぜ、同時進行でこなそうと知るのか。息抜きですから。
読んでくれた方に最大限の感謝を。