パンドラの進化
ティナは髪をかき上げ、背筋を伸ばすとロンに向き直した。
『感染するとハードディスクを完全に破壊してしまうコンピューターウィルスのワクチンの作成をしていたの』
ロンは小さく頷く、その目が続きを促している。『そのウィルスは不思議な特性があって、感染力はとても貧弱なの!良いとこ、ランでつながっている数台程度ね。しかも、ファイアウォール、データー、プログラム、最後はウィルス自身を破壊して消滅してしまう…しかも感染して数分で!』ロンは真っ直ぐ正面を見たまま小さな声で
『ワクチンは出来たのか・・』
ティナは強い口調で
『残念ながらワクチンは無理!でも、ウィルスの破壊スピードはさげられたは!』
ロンは真っ直ぐ正面を向いたまま・・沈黙が流れる
『そのウィルスを参考に似た構造のウィルスを作ったの・・・破壊力は半分にして、感染力の強い・・・ウィルス同士闘わせたのよ!!』
ロンはゆっくりティナに向き『結果は?』
『半分成功、半分失敗ね。破壊力の強いウィルスは消滅、でも破壊力はそのままでスピードの極めて遅いウィルスに変質したの!!』
ロンは目を見開き
『そのウィルスに対するワクチンは!』
『まだよ・・・でも、何故か一定のパルス信号で動きが止まりる事が解ったの!まるで幼虫がサナギになるみたいに』
ロンは目をつぶりながら『君が開発研究した理論はコンピューターウィルスではなく、実際のウィルス兵器に応用されたよ、しかもそのサナギがさっき、ラスベガスで成虫になった』
ティナは言葉も出ない。
ロンが凄まじい形相で
『幸いにもほぼ焼き殺されたよ』
運転手が更にアクセルを強く踏みこんだ。