情報分析官
斜面に面した歴史深いサンフランシスコの町、煉瓦作りの小さなアパートの窓からは青空と緩やかな波を奏でる群青色の海が広がる
『ビービー』とブザーがなる。
もう12時間も何も食べていないティナは『今、行くわ!』
数日溜め込んだゴミの山を細い筋肉質の体とブロンドが軽やかに飛び越え、玄関の鏡の前でピタリと止まり、鏡に写る自分に微笑み、髪をかき揚げ、ニコリと笑い、『マルゲリータ』
ドアをゆったりと開けた。
そこには見覚えのある『NSA』のIDカードを下げた50代を目前にした丹精な顔立ちの男が立っていた。
ジェームス・ロンはティナの元上司であり元恋人である。
彼女がNSA(国家情報局)の局長との些細な意見の相違から諜報システムエンジニアリーダーを辞める際に最大限、尽力し、今の仕事の推薦状も書いてくれた。
『ティナ、突然で申し訳ないがこれから付き合ってもらう・・・』
『ジェームス!もう分かれたはずよ。』いたずらにティナはジェームスを見た。
『ティナ・・・君の力が必要なんだ・・・TVを見ていないのか?』
その瞬間、ジェームスの瞳からティナは忘れていた記憶、いや忘れたい未来図が動き出した事を察した。
『ジェームス、今、用意するは・・・行き先は?』
『エリア51・・・国家最高責任者と極秘会談だ。誰にも連絡は取るなよ』