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偶然の…

作者: 苺のタルト

日常は、常に偶然の繰り返しで、

意識する事も無く、淡々と去っていくのでしょう。





 思えば偶然の重なり合いだったのかもしれない。

 僕が彼女と出会ったのも。

 二人で過ごした、あの日々も。


 もしも、あの日僕が寝坊をしていなければ、

 もしも、あの日彼女の車が壊れていなかったら、

 もしも、僕らが同じバスに乗り合わせなければ、

 もしも、彼女が鞄を置き忘れなければ、

 もしも、僕がそれを見つけて届けなければ、

 もしも、彼女がお礼に僕の番号を聞かなければ、

 もしも、それだけの縁で終わっていたら、


 絵に描いた様な展開。

 そんな偶然の過去にもしもと否定を繰り返しても、結果は変わらないのに。

 もしもは僕の頭の中に谺の様に反復しては戻せない仮定を響かせる。


 もしも、僕らが恋人にならなければ、

 もしも、それが長く続かなければ、

 もしも、僕がプロポーズしなければ、

 もしも、彼女がそれに応えなければ、

 もしも、あの日が僕の誕生日でなかったら、

 もしも、彼女がうっかりそれを忘れていたら、

 もしも、彼女がプレゼントを買わなければ、

 もしも、彼女がいつもより早く家を出なければ、

 もしも、彼女があの交差点を通らなければ、

 もしも、運転手に病気の子供がいなければ、

 もしも、その子が危篤状態にならなければ、

 もしも、運転手が信号の色に気づく事が出来たら、

 もしも、もしも、もしも、もしも、もしも――――


 絵に描いた様な偶然。 

 彼女はもう、どこにもいない。

 あの日僕が寝坊した。そんな小さな偶然が偶然を呼んで、

 一人の女性と、その周囲の多くの人たちの人生を変えてしまったのだと考えると気が重い。

 僕らは神とは違うから、故意に偶然を引き起こすことは出来ない。

 そして後になって、偶然の恐ろしさに気付く。


 僕は、気付かない内にそんな偶然を今日も引き起こし、

 誰かの人生を変えてしまっているのだろうか。

 考えながらまた、今日ももしもを繰り返す。


 もしも、

 もしも、

 もしも、

 もしも、

 もしも、

 もしも――――――





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