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愛されなかった令嬢、地図を描きながら人生を描き直します  作者: くまくま


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3/3

嵐のあとで、もう一度線を引く

夜明け前、暴風が港を襲った。

行政局の屋根が軋み、地図の束が風に舞う。


「課長、資料は二階に移しました!」

「よくやった!あとは避難誘導を——」

ローナの声が風に消えた。


奥から駆けてきたのはカイルだった。

「ルシア、避難を!」

「また私を守るつもりですか」

その一言に、彼の足が止まった。


「守るだけのあなたに、私の隣は歩けません。今度は、私も行きます」



嵐の中、二人は崩れかけた港の堤防を測り直していた。

風が地図を奪おうとするたび、ルシアは身をかがめて押さえる。


「前より速くなったな」

「描きたいものがあるので」


その瞬間、瓦礫が弾け、カイルの肩をかすめた。

「大丈夫ですか!」

「平気だ」

「あなたはいつもそう。傷ついても言わない」

「言ったところで何か変わるのか」

「ええ。今なら、私が知っています」


嵐の音の中でも、彼女の声ははっきり届いた。



夜が明けた。

崩れた港の隅で、二人は泥のついた紙を広げる。

新しい線が、再び交わった。


「あなたが壊した線を、私が引き直しただけです」

「俺は君の強さを信じなかった。

 もう、信じてもいいだろうか」

「それは私が決めます」


ルシアは筆を取り、破れた地図に細い線を引く。

それは堤防の線であり、未来の輪郭でもあった。


カイルが隣でうなずく。

「これからは、同じ線の上を歩けるだろうか」

「分かりません。でも、同じ地図を描くことはできます」


課長が笑いながら駆け寄る。

「二人とも、よくやったわ!」


雲の切れ間から朝日が差し、港を照らす。

ルシアは新しい地図を見つめた。

「この線は、未来へ続く線です」


二人の署名が並ぶ。

風が紙を揺らし、線はもう揺れなかった。


港の朝が、静かに始まっていた。

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