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LOVE SICK  作者: 紫音
4/10

-4-

なんだかドッと疲れた気分だった。


今夜の店は、やたらと混んでいた。

オーダーがひっきりなしに入り、休む暇など無いほど動く。


閉店2時のこの店で、ようやく落ち着きが見え始めたのは1時半過ぎ…

この頃になると、皆手持ちの酒だけで会話しているし

大半は酔って騒いでるだけ。



(なんか…疲れた…)


俺は店のゴミを纏め、外のゴミ置き場に運ぶ。

賑やかな店内から、夜中の静けさに移動しただけで体も精神的にもドッと疲れを感じた。


(早く帰って寝てぇ…)


ぼんやりと思いながら、肩を回す。


すると、いきなり背後からその肩を掴まれる。


「うわっ…!」


驚いて振り向くと、そこには祐也が立っていた。


「ゆう…や…。驚いた~」

「わり」

「なんだよ。まだ飲んでたのか?」


予約時間から、かれこれ五時間くらいはいることになる。

忙しくてフロアを見ることもあまり無かったけど、とうに帰ったものだと思い込んでいた。


「なんだか盛り上がってな。シゲなんて、まだ何か語ってる」

「あはは~。そりゃご愁傷様。で、お前は外で何してんの?彼女は?もしかして、2人で抜けようって?」


俺は周囲を見渡す


しかし、路地裏のこんなとこに彼女連れてくる方がおかしいってもんか。


「美結はまだ店。寝てるよ」

「みゆ?って…彼女の名前なんだ」

聞き慣れない名前に、それが彼女の事だと気付くのに少し時間がかかる。

「紹介してなかったっけ?」

「いちいちおまえの彼女を紹介されてたら、名前覚えきれないよ」

「そうか?」

「そう。で、その美結ちゃんは寝かしたままで良いのか?あんな美人、目を離したらシゲあたりが危ないんじゃね?」

「別に…そうなったらそうで、いいんじゃねぇの?」

祐也は苦笑しながら、タバコに火をつける。


相変わらず執着心が無い

昔から変わらない。

別れた彼女の事を一度も追うような真似もしなかったし

後を引くこともしなかった。

自分から告白した事もないだろうから、本気の恋愛はしてことが無いのかもしれない。


「タバコ、吸いにきたのか?」

「タバコと外の空気」


祐也の言葉に、なるほどと思う


いつまでも籠もってるのもイヤだろう


「もうすぐ閉店だから、皆起こしておけよ?」

「あぁ」

「じゃ、俺は店に戻るから」

そう言って軽く祐也の肩を叩くと、再び店への扉に手をかけた。


その時…


「ミヤ」

「ん?」




「キスして」




祐也の言葉に、俺は振り返る


壁にもたれたまま、タバコをくわえ、こちらを見つめる祐也



今まで、何度となくキスはしたけれど

こうして言葉に出して求められることは無かった。


「何言ってんだよ」

「キス。いつもしてんだろ?」


さすがにそう言われると何も言えない


「ま…そうだけどさ。どうせ美結ちゃんとすんだろ?俺としなくてもいいじゃん」


そう…


どうせ、この後こいつは美結ちゃんと過ごす


帰らないって言ってたんだから、それなりの事はするんだろう

キスしたいなら、美結ちゃんにいくらでもすればいい



「っとに…酔っ払いは…」

「じゃあ、帰る。美結んとこは行かねー。それならキスするか?」

「…はぁ?」

「今日ラストまでだろ?終わりまで待つから、一緒に帰ろうぜ」



こいつは…何を言ってるんだ?


時々、突拍子もない事を言うからついていけない

気紛れにも程がある


「だから、しろよ」

そう言って近付いてくる祐也の顔を見上げた。




全く…ワガママ過ぎるだろ


気分屋で、その場の感情だけで物事を決める

先のことなんか考えてやしない



-----ガキかよ…



おもちゃ欲しがるガキと同じだ


「ミヤ、聞いてるのか?」

「聞いてるよ」

「じゃ、しろよ」

「…駄々こねかよ」

「うるせ」

「仕方ねぇな」


そう言って笑うと、俺は軽くキスをする。


その瞬間…彼女のものだろうと思われる香りが鼻を突いた


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