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間隔があいてしまい申し訳ないです。
話の流れにはそんなに大きな変化はないですね
「お疲れさま~っす」
俺ははいつものように、従業員入り口からバックルームへ入る。
すでに同じシフトのバイトが準備を始めている。
「ねぇ、鴨井くんたち来てるよ~」
制服を着た雪下早百合が俺の元へ駆けて来る。
「あぁ、飲み会って言ってたな」
「そうなんだ~。なんだか美人な子連れてたよ。友達もきれいなのっ」
早百合はコロコロと笑いながら話す。
長い栗色の髪を結い上げ、きれいなメイクをしている早百合も
それなりに美人の部類に入る。
こざっぱりした性格のせいか、息が合い
同じシフトに入ると、仕事もやりやすかった。
「シゲも来てるだろ?」
「うん、来てるよ」
祐也やシゲは、結構店を利用するせいか、バイト仲間の間でも知った顔だった。
「店長に話しておいたんだけど、つまみあたりサービスしておいて」
「了解。適当に出しておくね。」
そう言って、先に早百合は仕事に出る。
俺も着替えを済ませ、フロアに向かった。
(見たくないな…)
そうは思うけれど、やはり顔を出さないわけにはいかない。
8時からと言っていたので、10時を回った今はすでに解散の方向に向かっているのだろうか…
(仕方ないな)
意を決する。
何度も、同じ光景は見てきた。
今までだって平気だったんだから、今回だって平気。
自分にそう言い聞かせながら、祐也たちがいるテーブルの方へ向かう。
遠くからでも、祐也たちがいる場所が分かる。
自然と目が祐也を見つける。
そんな自分が情けない。
「ども」
小さく会釈しながら、テーブルへ近づく。
メンバーは6人。
見事なまでに男3、女3の合コン状態。
一番奥に座っている女性が祐也の現彼女だろう。
隣に座る祐也にもたれる顔は、少し赤い。
いやらしくない金のロングに、軽くウェーブがかかっている。
お酒のせいでトロンとしたその目つきは、少し潤んでいて
男ならノックアウトされてしまう。
細い腕、長い指先。きれいにアートされたネイル。
イヤというほど、女を見せ付けられる。
そしてその女性に肩を貸している祐也はタバコに口をつけている。
祐也の隣にはシゲ。
こっちも完全にお酒が入っている。
シゲの向かいには、祐也の彼女の友達。
ショートヘアの似合う、さっぱりめの女性。
その隣には、シゲの友人。
何度か学内で会った事がある。
そして、一番奥にはもう一人女性。
どこかのお嬢様ではないだろうか?と思うほどのおとなしい雰囲気。
「お~、みやびぃ~」
手を上げるシゲのろれつはかなり怪しい。
「こいつ、雅っていうの。ここのバイト~。で、さっきサービスで
揚げ物類くれたっしょ?こいつのおかげ~」
さも、自分の手柄だと言わんばかりにシゲが自慢げに話す。
「わぁ、ありがとう!」
ショートカットの女性が笑顔で言う。
ふと、その声に反応したかのように、祐也に頭を預けていた女性が顔を上げた。
「…みやび…くん?」
「はい?」
「あなたが…ミヤくんなの?」
いきなり名前を呼ばれ、困惑した。
「ミヤって…あぁ、もしかして祐也が何か言いました?」
ミヤと呼ぶのは祐也しかいない。
高校時代の友人ですらも、ミヤとは呼ばないから。
「ふふ、正解。祐也と一緒住んでるんでしょ?」
「えぇ…まぁ…」
楽しそうに笑う彼女に、雅は祐也に鋭い視線を投げる。
(一体、何を話したんだよ!)
しかし、その視線に肩をひょいとあげただけで、祐也は何も言わない。
「大丈夫よぉ。変な話を聞いたわけじゃないから。祐也の部屋に行きたいって言ったら
”ミヤがいるからダメだ”って言われちゃっただけ。」
「はぁ…」
なんと答えればいいのか分からない。
「あ~…と、じゃあ俺、仕事戻りますんで。ごゆっくり」
そそくさと、俺はテーブルを後にした。