表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOVE SICK  作者: 紫音
2/10

-2-



高1から気付けばよく一緒にいた。

一緒にバカやって、一緒に怒られた。


最初にキスしたのは高2の秋


きっかけは忘れたけど、遊びのようなキスに、俺はあいつへの気持ちに気付いた



一緒にいるのは楽しかったけど、それは友人だからだと思っていた。


だからキスした時、自分でも驚くほどあいつを意識した。





俺は、祐也が…好きだったんた…





だけど、一度も気持ちを打ち明けた事はない。

祐也の女関係は高校から変わらないし、

気持ちを打ち明けて、離れていく位なら友人として続けていきたかったから…


それでも…時々、遊びのようにキスをする



ただ、それだけで嬉しかった




大学が同じだと知ったのは、卒業も間際


『俺さ~ミヤと同じ大学に行くことになった』

卒業を祝う会と称した食事会で、隣に座った祐也からの言葉

『え?同じ大学受けてたのか?』

『いくつか受けていたんだけどさ。で、お前と同じとこ受かったし…』



大学に行けば、離れ離れになるだろうと覚悟していた俺にしたら、嬉しい出来事。


しかし、顔には出さず

『じゃあ、4月からもよろしくな』

と返した。


だけど、あいつは更に俺の気持ちを舞い上げた。


『でさ、家・・・出ようと思ってんだよね』

『ふぅん、いいじゃん。一人暮らしならさ、女呼び放題だしな』

『別に女呼びたい訳じゃねぇけど…。いい加減、親がうるせぇのよ』

『まあな~。うちも同じもんだよ』

『じゃあ、一緒に住もうぜ。家賃折半すりゃそれなりのとこに住めるだろうし…。

 お前となら気兼ねいらねぇしさ。食事とか掃除とかは交代にすりゃいいだろ?』


そう提案してきた祐也に俺は当然OKした。


ただ、時々帰らない夜や、女と歩く姿を校内で見たりすると、

ひどく落ち込むのだけれど…


一緒に住んでいる分、今まで見えなかった私生活が見えてくる。

部屋の中で鳴る携帯。

メールの時もあるし、電話の時もある。

電話の時は、向こうも気を使うのだろう。

リビングから出て、自室へ行く。


しかし…3DKの学生をターゲットにした安アパート。

自室にこもったからと言って、防音完備なわけではない。

時折聞こえる会話の端々が、凄く楽しそうで…居た堪れない気持ちになる。



*****


次の日…


「雅!」

「シゲ…」

一限、祐也の言うとおり出席票を提出し、俺は授業を終えた足で食堂へ向かう。


その途中、友人のシゲ---松山一茂に声をかけられた。


「祐也は?」

「彼女のとこ」

「あぁ、俺が紹介した子?」

「そう」


シゲは大学からの友人

地方から出てきたから、こっちで一人暮らしをしている


「美人だろ」

「俺は見てないよ」

「写メ送ったんだけどな。なんでもミスなんとかってやつみたいだぜ」

「…シゲ…おまえもよく知り合ったな。そんなレベル高いの」


こっちに知り合いがいないシゲは、サークルのコンパに進んで参加していた。

恐らくそういうとこで知り合うのだろう


「レベル高いの狙ってるからな~。おまえにも誰か紹介してやろうか?」


まるでどっかの親戚のおばちゃんかのように

知り合った女の子を友人に紹介しているらしい。


(…シゲ…良い人で終わりそうなタイプだよな)


本人が聞いたら怒るだろうと、口には出さないが

こうやって橋渡しをしている姿しか見ないのもどうかと思う。


「俺はいいよ。彼女がめちゃくちゃ欲しいわけじゃないし…」

「でも、エンジョイ!キャンパスライフ!って言ったら彼女じゃねぇ?」

「別に?バイトも楽しいし…」


実際、高校の時も何人か付き合った事があった。

祐也への気持ちを確信してからも、その気持ちを振り切ろうと

女の子と遊んだりもしたが…結局無駄だった。


相手だってバカじゃない。

祐也みたいにビジュアルが良ければ「気持ちが無くてもいいわ」くらい言えるだろうが

そんなビジュアルを持ち合わせていない俺が相手ならば

気持ちが伴わなければ、相手だって離れていく。


それを頑張って繋ぎとめるほど、俺も相手に気持ちがあるわけじゃない…。



「雅もさ~、顔は悪くないと思うんだよな」

「…"顔は"ってなんだよ?」

「いや、ほら…なんつの?ジャニ系っていうの?可愛い顔立ちではあると思うよ」

「男が男に可愛いって言われても嬉しくないし、そんなフォローはいらない」


伊達に生まれてからずっと、この顔と付き合ってきたわけじゃない。

自分の容姿など自覚している。


「マジで!悪くねぇって。たださ~、ほら、祐也が目立つからなぁ」

「…俺が霞むって?」

「そうそう。祐也ってタッパあるし迫力あるしなぁ」

「だな」

「だから、隣にいると霞んじゃうだよね。俺もお前も」


ケラケラと笑いながら話すシゲは、なんだか楽しそうだ。

話している内容は、結構シュールだと思うけど…。



二人は食堂に着く。

皆2限の授業に向かっているのだろう。

食堂はガラガラだった。


俺は2限を取っていないし、シゲも本来なら今日は授業が無いはずなのだが

課題をやると言って大学に足を運んだらしい。


食堂の隅陣取ると、缶コーヒー片手にのんびりタバコに火をつける。


ゆっくり上っていく煙に目をやる。


「なぁ、雅ぃ」

ふと、シゲが口を開く。

「ん?」

「今日、バイト?」

「あ~…うん。10時からラストまでな。なんで?」


俺のバイト先は居酒屋のチェーン店。

昼はレストランとして開店しているので、授業が無い日は日中もバイトに入っている。

それでも出来るだけ夜のシフトを入れるのは、給料が良いから。


いくら家賃折半・光熱費も折半といったところで

都内アパートの家賃を支払うにはそれなりに稼がないといけない。


実家からの仕送りも断っているので、完全に自分のお金でやりくりをしている。


その為、祐也も夜でも働けるように24時間のレンタルビデオショップでバイトをしている。


夜でも動けるのは学生の特権だろう。


「8時くらいに店行く予定だからさ」

「ふぅん。じゃあ店長に言っておいてやるよ。何かサービスしてくれるだろ」

「サンキュ!助かるわ~」


時々、友人がこうやってバイト先に飲みに来る。

事前に店に言っておけば、時折サービスしてくれるのだ。


「あ、たぶん祐也も来るぜ」

「祐也も?あいつデートだろ?」

「そうそう。その彼女と♪彼女が友達連れてくるっていうからさ~」

「…あ~…コンパすんのね」

俺はゆっくりとタバコの煙を吐きながら呟く。



正直、見たくは無い。


祐也に甘える女性。

付き合っているんだから、それなりにイチャついたりもするんだろう。



誰がそんな光景を見たいものか…



「雅も祐也の彼女、見てみろよ?美人だぜ。目の保養!」

「…ん~…忙しくなかったらな」


なんて、言い訳。



できる事なら見たくない。


何度かそういう光景は見たことがあるが(どれも違う女なのだけど)

やはり見た後は気分が悪い。



今日のバイトに少々気を重くしたせいか、いつもよりタバコの味が苦い気がした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ