最終話
次の日…
大学の食堂に、ぼんやりと真明は座っていた。
「暗い顔してんなぁ~、真明」
ポンっと真明の頭を叩くのは、シゲ。
「なんだ、シゲか」
「なんだとは失礼だな。真明、フラれたんだって?」
「…誰から聞いたんだよ」
不機嫌な声で真明がシゲを見る。
いつもの柔らかな物腰はどこへやら…。
「俺は情報通なの。何でも知ってんだよ~」
「……なら、傷心の俺を少し静かに放っておくことはできないのか?」
「だから、傷心の幼馴染を慰めてやろうと食堂まで来たんじゃないの」
足を組んで座る真明の隣にシゲも座る。
「なぁ、慰めてやろっか?」
「お前は俺の好みじゃない」
「…あのなぁ~、そういう意味の慰めじゃなくってだな。今晩、食事作ってやるよ。お前のマンション行ってやるって」
シゲは頬杖ついて真明を見た。
地元にいた時から一人暮らしをしていて、料理方面は自信がある。
同じ地元の真明も知っている事だから、時々食事を作ったりしていた。
「俺のリクエスト、聞いてくれるんだよな?」
真明が尋ねる。
「構わないけど、あんま面倒なのはかんべんな」
そう言って、シゲはタバコに火をつけた。
「だーけどさ。雅はダメだと思ったよ。あいつ、祐也大好きだもんよ」
「知ってたなら教えろよ」
「教えてもアタックしたんだろ?」
「…多分」
真明も、シゲからタバコを貰い同じように火をつけた。
ゆらゆら揺れる煙に視線を流す。
「好み…だったんだけどな」
呟けば、シゲが苦笑を洩らした。
「仕方ねぇんじゃね?大体、祐也を敵に回すと怖いと思うよ?」
「鴨井は彼女いただろう」
「一応…ね。でも、あいつ…いっつも彼女に興味もたないもんな。モテるくせに勿体無い!俺に分けろって言うんだっ」
「…お前はダメ。良い人で終わるタイプ」
真明にキッパリ言われ、シゲが凹む。
「もう少しオブラートに包めば?」
「同じ事だろう?大体、今はミヤ…田之上からの電話で俺の方が凹んでるの」
「何か言われた?」
「ん…。デートのお誘い断られたのと…ミヤって名前で呼ぶなってさ」
「ふむ・・・雅のやつ、祐也に何か言われたのかね?」
シゲが腕を組む。
「さぁ?はっきり言わないけどね。多分そうじゃないかな。鴨井も田之上が好きなら、最初から捕まえておけばいいものを…」
フリーだと思えば、手に入れたくなる。
誰かのものだったなら、気持ちも抑えられたのに
ただの負け惜しみだとしても、思わずにいられない
「しゃーねーよ。そういう二人なんだって」
「あぁ……今回の事で気付いたよ」
「まあ、新しい恋を見つけるっきゃねぇわな。また合コンする?」
「傷が癒えたらな~」
「見た目によらず、繊細」
シゲが楽しそうに話す。
それを見て、真明も口だけで笑った。
いつまでも…こうして傷ついているわけにはいかないから…
*******
俺は、休みを祐也の借りてきたDVDを日長見て過ごした。
体調は不思議な程良かった。
やはり精神的なものだったのだろう。
ふと、流していたDVDから昨日聞いたラブソングが流れてきた
(あ、これ…映画の曲だったんだ)
タバコを吸う手が止まる。
映画から流れる曲に耳を傾ける。
英語の歌詞で意味はきちんと理解は出来ない。
けれど、昨日よりもずっと心地良い曲に聞こえるから不思議だ。
映画をそのままに、俺は自分の部屋に戻る。
そしてベッドを眺めた。
昨夜…
『部屋一緒にしようぜ?バイト代、今月結構入るからでかいベッド買えば二人で寝れるだろ?』
そう提案してきた祐也
最初は一緒に寝るなんて恥ずかしかったけれど…
これからはどれだけ一緒にいても時間が足りない。
別々の部屋で眠るなんて、淋しくなりそうだ。
(俺も、参ってるな…)
自嘲気味に笑い、携帯を手にする。
『家具、見てくるから。授業終わったら連絡しろ』
そう一言祐也に送信すると、俺は部屋を出た。
END
終了です。長々読んでくださってありがとうございました。
今は懐かしい一番最初に書いたBLなので、思い出深いです。
後は18禁になるものと、友人から貰ったリクエストの話を後日談で書いてます。
またアップできたらと思ってます。
良かったら感想などいただけたら嬉しいです