プロローグ
そろそろ休憩するか。
そう思ったが最後、ため息と共に集中力が霧散していった。
夜は、長い。この時間を活かさない手はないのに、最近、身体がついてこなくなった気がする。年齢のせいだろうか。
ーーピコン。
席を立とうとした自分を引き留めるかのように、パソコン画面の片隅に通知が現れる。メールだ。
『グループに招待します』
いかにも怪しげな件名に、眉間に皺が寄る。念のため差出人を確認すると、意外な名前がそこにあった。メールを開くと、更に意外な文面が表示された。
『Chikaが〔絆が丘クインテット〕グループに招待しています』
続いて表示されているリンク先をクリックする。グループに参加すると、待ちかねたように長文のメッセージがポン、と現れた。
ーーー
お久しぶりです!千可です。絆が丘クインテットの皆さん、お元気ですか?
実は……私、この度、結婚することになりました!
つきましては、皆さんを結婚式に招待したいのですが……折り入ってひとつ、お願いがあります。
披露宴の余興で、木管五重奏を演奏したいんです。
理沙と匡くんは、まだ楽器を続けてる? 集も、ひょっとしたらやってるのかな。
萌先輩と私は、大学を卒業したときに吹くの辞めちゃったけど……久しぶりに五人で演奏できたら、嬉しいなと思っています。
とにかく! 一度、みんなで集まりませんか?
余興のことは置いておいて、久しぶりに会って話せたら嬉しいです。
日程調整のリンクを送るので、回答、なる早でよろしくです!
ーーー
少し、考える間ができた。さて、自分はいったい、どうするべきか……
しばし考えたのちに、祈るような気持ちで返信を打つ。
『結婚、おめでとう! ぜひ、みんなでまた一緒に演奏がしたいです』