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神殺しの乙女  作者: Da Viero
episode.0 前世の記憶
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7. 巫女狩りの夜

 その後ルフは私を家まで送り届けてくれた。

 神様が、この地に降りてきて下さった。

 それは、ルフとのお別れの時だと分かっていた。


「ルフ。ありがとう。ずっと忘れないから。」

「こちらこそありがとう、ラファティナ。君との出会いは僕の宝物だ。また必ず、会いに来ると約束するよ。それまでどうか元気でいてね。」


 ルフの優しい笑顔に何度救われただろうか。

 胸が熱くなって泣き出したくなる。

 でも、きちんとお別れをしなくては。

 またいつか、会える日のために。


「さよなら、ルフ。」

「さよなら、ラファティナ。僕の大切な人。」


 家の前で別れを告げた。

 見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。




 それから周囲に広まった話では、神様が現れたことで完全に戦はなくなったらしいということ。

 神様は不思議な力を持っていて、その力にあやかろうと、各地で信者が出てきているとのこと。

 西の国が神様を、自分の国家の主神に置こうとしていること。

 そんなことが話題になっていた。


「神様も大変だねぇ。」


 作物が安定して収穫できるようになって、お母さんは以前よりも穏やかになってきた。

 ルフがまた旅に出た後は、何故自分に一言声をかけないのか怒っていたけど、別れを切り出すのが辛かったらしいと説明をしてなんとか納得してくれた。

 戦争もなくなって元の平和が戻ってきた。

 とても嬉しい。だけど……


「やっぱりルフに会いたいな。」


 マナについて語り合えた初めての人。

 もっと色々教えてもらいたかったし、話したいことも沢山あった。

 また来ると言ってくれていた。

 私はそれを信じて待っている。



 突然、バタン!と勢いよく家の扉が開かれた。

 家にいたお母さんと私は驚いて身構える。

 扉を開けたのは兵士の格好の男の人。その後ろにも何人も兵士の人が控えている。


「へ、兵隊さん……うちになんのご用でしょうか……。」


 母の問いかけに反応をせず、兵士は私をじっと見る。


「年頃の女を集めている。連れて行け。」

「はっ!」


 たちまち私の身柄は拘束され、家の外へと連れて行かれーーー


「ラファティナ!ラファティナ!」

「お母さん!お母さん……!」


 叫び声と抵抗むなしく、荷車に担ぎ込まれた。

 どうしよう。力を使ってしまおうか?

 でも、そのせいで余計におかしなことになったら大変なことになっちゃう。


「兵隊さん!うちの子がなにをしたっていうんですか!返して!」

「離せ!」

「きゃぁっ!!」

「お母さん!!!」


 荷車から飛び降りようとしたら目の前に槍が飛び出てきて制止される。


「良いか、これは名誉なことである!お前達の娘は神によって選ばれるのだ!」


 どういう、こと?

 荷車の中では先に積み込まれた女の子達がしくしくと泣いている。

 神様が、みんなを悲しませるなんて。

 そんなこと望むはずが。


「出発せよ!」


 ヒヒーン!と、馬の嘶きが聞こえたと同時に、荷車が動き出した。

 嫌だ!離れたくない!


「怖いよぉ!」

「ぐすっ……お父さん……お母さん……」


 女の子達が一斉に悲鳴を上げて泣き出した。

 一体何がおこっているの?私たちはどうして攫われているの?ここからどこにいくの?


 分からないことがいっぱいで、不安で胸が押しつぶされそうになる。


「あ、あなたたちは誰なんですか?」


 荷台の外にいた監視係のような人に、勇気を持って尋ねてみた。


「俺か?俺たちは、お前達の国の西側帝国に所属している軍人で、神の使いだ。日々、神様の頼みを聞いてまわる、ありがたーい奴なんだぜ?」

「か、神様がそんな、女性を攫えなんか言うはずが……!」

「おいおい、人聞きが悪いことを言うもんじゃないぜえ?神様は、そのお眼鏡にかなう巫女様を集めていらしてる話だ。お前らにとってはこれ以上なく光栄だろう?」

「なっ……」


 思わず絶句した。

 そんな話があっていいはずない。

 本当に神様が……?

 どちらにしても、これから先に良い展開が思い浮かばない。


 失意の最中、荷車はガタゴトと不愉快な音を立てて動かされていた。

 闇夜には少女達のかすかな鳴き声が響き渡っていた。

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