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神殺しの乙女  作者: Da Viero
episode.4 黒髪の乙女の噂
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7. 倉庫護衛 -後-

 裏口の方から爆煙が上がる。

 倉庫の壁がビリビリと震え、埃が辺りに舞い上がった。


「ヴァルディ!サティ!」


 叫ぶ私の声に応えるように、裏口から短く聞こえる鋭い金属音。

 駆けつけると、煙の中から巨大な影が飛び出した。


「ティナ、危ない!」


 ネロに覆い被さるように庇われて、避けた先に見えるのは大きな鉄槌。

 もしこれが直撃していたらーーーぞくりと背筋に悪寒が走った。


 影の主の姿がゆっくりと現れる。

 それは大きな体に鉄板のような防具を重ね、振り下ろした鉄槌を引き戻した。

 大柄な男。そいつは駆けつけた私たち3人を、視界の先に捉えてにたりと笑った。


「おやぁ?こいつは金になりそうな奴ばかりじゃねぇか。知ってるぞ、【黒髪の乙女】だろ?なかなかいい女じゃねぇか、高く売ってやるよ。そっちは【エルヴァン族】だな。それから兄ちゃんも綺麗な顔してんじゃねぇか、いいねぇ。」

「気色悪いことばかり言ってんじゃねぇ!」


 ネロが小刀を素早く飛ばす、が、大男は両手で自らを覆い、身につけた防具でそれを跳ね返した。


「くっ……やりにくい相手だ。」


 大男はゆっくりと姿勢を元に戻すと、不気味な笑みで見下ろしてきた。

 裏口の方では、まだ刃物の音、地面の擦れる音が聞こえている。ーーー裏口の方が手強い敵がいたみたいだ。


「あっちももうすぐで終わるだろう。獣野郎も奴隷市場でよく売れる。まったくいい夜だな。」


 マナの攻撃が届くか……私は必死で辺りを見渡した。

 武器になりそうな木々は遠い。倉庫の横には袋詰めの雑穀粉が積み上げられている。……これだ!


 私は光のベルトを手から取り出し、思い切り雑穀粉が詰まった袋に向けて打ち放った。

 袋は裂けて、粉塵が舞う。そこからは私の得意分野!

 私は両手を前に突き出し、マナの流れと調和すべく集中した。


「風よ、舞いなさい!!」


 ひゅごう!!

 辺り一面に舞い散る粉塵。視界は真っ白に霞んだ。


「げほっ、な、なんだぁ!?」


 大男の荒い息づかいと鉄槌を振るう轟音だけが耳に響いた。


「こっちだよ、ノロマ!」


 ネロが鋭く挑発し、粉塵の中狭い通路へと誘い込む。

 そこへ、頭上を小さな影が飛んできて、大男の頭を踏んづけていった。


「こっち!こっち!」


 サティだ!無事だったんだ!

 大男は顔を真っ赤にして、サティを捕まえようと躍起になった。

 それをひらりひらりと躱し、サティとネロは粉塵の中華麗に逃げていった。


「ぐっ、こいつら、ちょこまかと……!」


 苛立った大男が鉄槌を振り上げる。

 その時、横から出てきた影が剣で鉄槌を受け止め火花を散らした。……ヴァルディだ!


「重いっ!くそっ……!」


 ヴァルディは膝をつきそうになりながらも鉄槌を必死に食い止める。

 大男はヴァルディを押しつぶそうと、いよいよ力を込めた。


「今だ、頼むティナ!」


 ヴァルディの声に応じ、私は舞う粉を渦のように風で巻き上げ、一気に大男の視界を覆った。

 大男が咳き込み、その場でよろめく。


 そこへ、ネロの刃がすぐ側の釣り荷の縄を切り落とした。

 ドシャアアン!と重い木箱が頭上から落ち、大男の膝を崩れさせる。


「ぐぉっ……!」


 サティが飛びかかり、鎧の隙間を引き裂いた。

 更にヴァルディが渾身の一撃で鉄槌を弾き飛ばす。


 今だ!

 私は梁に引っかかっていた瓦礫を、操っていた風でそのまま崩してしまった。

 轟音と共に大量の木材や石が大男を押しつぶす。


 粉塵は靄となり、静寂が訪れた。

 鉄槌も、呻き声も、もう聞こえない。


 ヴァルディが自らについた埃を払いながら言った。


「こいつが親玉だったようだ。残りの子分はあっちで適当にロープで縛ってる。」

「だ、誰も殺してはないよね?」

「殺しまではしてない。多少痛めつけただけさ。」


 にやっとヴァルディが笑う。

 確かにこういう奴らは痛い目を見ないと駄目だって思うけど……殺してしまうのはさすがに後味が悪すぎるから。





 隠れていた商人達に声をかけると、恐る恐る商人達は顔を覗かせてきた。


「た、助かったのか?」


 怯えた3人の倉庫番の商人達。

 彼らは瓦礫の山と縛り上げられた盗賊団を確認すると、みるみる顔を輝かせ、私たちに駆け寄ってきた。


「【黒髪の乙女】ご一行様!本当に……本当にありがとうございました!!」

「まさか、こんな奴らに狙われて命があるなんて……奇跡のようだ!」


 彼らは口々に感謝を述べて涙ぐんでいた。

 ヴァルディは肩を竦めて「礼には及ばない」と笑って、サティは照れ隠しに耳を動かした。

 クオルは「まぁ、僕は護り手ですし、当然のことをしたまでで。おほん!」と、これまた照れ隠しの早口をまくし立てていた。


「こんな風に感謝をしてもらうって、なんだか気持ちがいいねぇ。」


 ネロは私に向かって笑いながら語りかけてきた。


 私も笑いながら小さく頷き返した。

 ーーー人の役に立ててよかった。皆が無事で、とても嬉しい。

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