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神殺しの乙女  作者: Da Viero
episode.1 ガリの谷
13/51

1. 再び目覚めしラファティナ

 ーーー光が当たる。眩しい。


 手を開く。閉じる。問題なくできる。

 私、どうしたんだろう?確かに殺されたはず。

 違う。私は、今は柊菜乃花として生きていて、……


 頭が完全に覚醒した!

 そうだった。私の前世はラファティナで、短剣で神を殺し、殺されてしまった。

 こんな馬鹿なことあるはずないのに。前世の異世界の記憶があるなんて。

 そして、ここはどこ?

 木造の天井。手当てされた腕。布団を掛けて寝かせられた体。


「あ……起きた、の。いたく、ない?」


 高く細い声が聞こえて、寝ていた体勢のまま振り返ると、そこには私より少し幼い少女が立っていた。

 ふわふわの長い髪の毛。おっとりとした眼差し。

 見慣れた人間と違うのが、狐のような大きな耳が頭に生えていた。

 前世でルフが言っていたことを思い出す。


『狐のような耳が生えている、感覚の鋭い種族』


 そうだ、その種族はーーー


「ズォン族……?」

「しっ、知って、るの!?」


 その子の耳がぴょこっとはねた。目はまん丸に見開かれて、ガラス玉を反射しているみたいにぴかぴかと光っていた。

 可愛い。


 ーーーじゃなくて!


「ここは、日本じゃないの?」

「にほ、ん?」

「私、日本から来たの。えっと、どうやって来たんだっけ。そうだ、鏡ーーー」


 思い出した。夜のこと。

 鏡の前にあの短剣が現れて、それを手にしたら小さな少年が鏡の中にいて、鏡に引き込まれたんだ!

 そこからの記憶がない!


「どうしたの……?だいじょ、ぶ……?」

「あっ、ごめんね、大丈夫。」


 はぁ。どう説明しよう。

 変なことを言ったり聞いたりしてこの子を困らせても可哀想だし。

 私のことを助けてくれたんだよね?

 あぁ、もふもふ、可愛いなぁ。少しだけ、現実逃避。



「おい、サティ。そいつに近寄るな。いつも言ってるだろ。人間には気をつけろって。」



 私より少し背の高い、狐耳の少年がドアを開けて入ってきた。


「おにい、ちゃ!」

「お前は警戒心がなさ過ぎる。ズォン族として、もっと感覚を研ぎ澄ませろ。」

「でも、このひと。いい匂い、する。きっと、いいひと!」

「そんな危うい感覚じゃ駄目だ!こいつはただでさえ、異質な真っ黒な髪だぞ。ただの人間じゃないかもしれないんだ。」

「そんなこと……ない、もん……。」


 サティと呼ばれた少女はむすっと頬を膨らませてそっぽを向く。

 それを見て少年は、やれやれと、大きく肩を竦めてみせた。


「それで、あんた、名前は?」

「あ、私はラファティナ。」


 口からその名前が出て、はっとした。

 しまった!今はその名前じゃない。さっき一度に前世を思い出したからーーー!


「そうか、ラファティナ。体が動くなら、まずは長老に挨拶をしろ。それが余所者が来たときの決まりだ。」


 少年はそれだけ告げると部屋から去って行った。

 あぁ……訂正できない雰囲気……。まぁ、どっちでもいいけど。

 早く元の世界に帰らないと。お父さんもお母さんも、心配してるだろうな。


 そこまで考えて思い至った。前世の、お父さんとお母さんは、きっと、もうーーーお父さん……お母さん……ごめん。突然いなくなって。


「ティナ?ティナ?」

「あっ……ごめん。サティ、でよかったかな?」

「うん。サティ。私、の名前。おにいちゃん、の名前はね。ヴァルディ。ヴァルディだよ。」

「さっきの男の子かな?サティのお兄ちゃんなんだね。ヴァルディっていうんだ。サティを守ってくれる、いいお兄ちゃんだね。」

「うん……!!」


 サティの無垢な笑顔に心が和んだ。

 信頼できる家族がいるって、本当に素敵なことなんだ。

 とりあえず、今できることをしよう。前を向こう。

 ヴァルディは長老に挨拶をしろって言ってた。だからーーー


「サティ。長老のところへ、私を案内してくれるかな?」

「うん!!」


 何を言われるか分からない。敵意を向けられるかもしれない。

 でも、まずは出来ることからやらなきゃいけない。

 長老と話さなきゃ。そして私も確かめたい。


 この世界は私が、前世にいた世界だったのかもしれない。そんな予感がずっとしている。

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