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プロローグ

今回初めて投稿しました。百々缶といいます。至らない点が多いと思いますが、誤字脱字があった場合は書いていただけると幸いです。下手な文ですいません。

 逃げろ!逃げろ!なるべく遠くに、奴から離れて取り敢えず身を隠せる場所へ。

 俺は薄暗い森の中を一人必死に走っている。背後に感じる殺気から出来るだけ離れるために。

 多くの障害物、慣れない森土に体力はゴリゴリ削られ息は荒く、脚は鉛のように重い。口の中は鉄の味で満たされていく。だが背後の化物にとって障害物は何ら意味をなさない。腕を振り下ろせば木々は輪切りに、岩を踏むだけで砕け散る。

 化物との距離は徐々に縮まるばかりだ。

 逃げ出してどれ程経った頃だろうか、それはほんの一瞬の些細な出来事だった。

 そよ風が木々を揺らした。たった一枚の葉が顔を直撃し視界を塞いだ。その瞬間俺の中でプツンと何かが切れるような感覚と同時に葉は顔から離れ、開けた視界は茶色一色だった。

 受け身を取る程の体力は残っている訳も無く、顔面から激突。幸い鼻血程度で済んでいるが、体を起こそうにも金縛りにあったかのように言うことを聞かない。


 「畜生!動けよ!俺の体!」


 ぼやける視界の中、それでも逃げようと這いずった。今更汚れなんて気にしていられない。

 ただほんの一瞬気づくのが遅れた。それだけだ。

 さっきまでの轟音が幻聴だったかのと錯覚するほど葉擦れの音だけが森に満たしている。

 振り向いたときにはもう遅い。化物は大きく腕を振り下ろし地面に叩きつけた。静寂だった森に再び轟音が響く。最後の力を振り絞り回避を取るも風圧で吹き飛ばされ、木に激突した。

 背中に電流が走ったような痛み。

 化物によるたった一度の攻撃で腰をやられ、擦り傷を負った。

 そう擦り傷。振り下ろすだけで木を輪切りにしてしまうそれほどの攻撃だと思えば、やはりこの程度は擦り傷なのだろう。

 右腕の肘から下が無くなっていた。


 「あ゛――――――――!」

 

 右腕から絶え間なく血が噴き出す。無駄だと分かってはいるが朦朧とする意識の中、腕を止血する。

痛みは次第に熱になり、千切れた部分が燃えているようだ。

 熱いはずなのに寒気を感じる。血を流し過ぎた所為か手足の末端から寒気を感じ始め、ただブルブルと震えている。これが死の恐怖による物かそれとも寒気のためか俺にも分からない。いやその両方なのかもしれない。

 土煙が晴れ始め、狂った色彩の視界で化物の黒だけが明瞭に認識できる。奴は千切れた俺の右腕だった物をスナック感覚で喰らっている。


 「ははは……そんなに美味いかよ。俺の腕は」


 次の瞬間、目が合った。

 あぁ、これは死んだわ。


 『YOU ARE DEAD』


 俺連城久内(レンジョウ・ヒサノ)はテレビに映るゲームオーバー画面を睨みつけ、震える手で感情の赴くままコントローラーをベッドへと叩きつける。声を出そうにも外は既に太陽が顔を出しており、朝を迎えている。一軒家とはいえすぐ隣にも人が住んでいるこの状況で奇声を発するわけにもいかない。

 俺は溜まりに溜まったこの感情の吐き口を必死に探していた。


 「畜生がーーー!ボス撃破まであと少し、あと少しだったのにあそこで大技は反則だろう!」


 結果選んだのは枕だった。低反発の快眠枕に顔を埋め、出来る限り大声で垂れ流す。響いてないと信じたいが、例え近所の悪評になる恐れがあるとしても止めることは出来なかった。これで通算五十敗。課題や食事すらほっぽり出して徹夜で挑んだボスに勝てなかったそのショックは思っていた以上に大きい。

 吐き出す物をすべて吐き出した後、枕から顔を上げる。窓から差し込む朝日が徹夜と長時間のブルーライトのダブルコンボ喰らった目に染みる。このまま直視していたら目が潰れていただろう。すぐに窓から目を反らし、再度コントローラーを構える。


「よっし!さっきは油断したがな、行動パターンはこれで網羅した。もう負けるはずがない。覚悟しろよ。あれ?テレビのリモコンどこやったかな?」


 散らかった床の中からリモコンを見つけるのは一苦労だ。なんせ部屋の中は教科書やノートが散乱しており足の踏み場すらまともにない状況だ。片づけを頑張っていた時期もあるが、一週間もしないうちにまた元通りになったあたりで諦めた。

 ようやくリモコンを見つけテレビを付けようとした瞬間、スマホの着信が鳴った。画面が光りメールが来たことを知らせる。


 「どうせなんかのアプリの広告だろ、無視無視」


 と思い再度テレビを付けようとする、どこか胸騒ぎを感じスマホの電源ボタンを押す。予想通りただのアプリの広告だった。がホーム画面に映っているのはそれだけじゃない。


 「ちょっと待てよ。そう確か昨日は日曜日だったはずだ。うんうん……てことは今日月曜日だよな。それで時刻は8:00」


 俺は慌ててパジャマから制服に着替え、階段を駆け下りる。父と姉の靴は既になく二人とも出社していたようだ。もし御在宅なら学校まで送ってもらおうと淡い期待を抱いていたが叶わず。

リビングのドアを開けると食器を洗っている母がいた。


 「お母さん……」


 それ以上言葉を発することは出来なかった。

 テレビにはニュースが映っているはずだが蛇口からの水の音しか聞こえてこない。まるでこの部屋だけ時が止まっているような緊張感が走っていた。

 どうやらうちの母は絶賛激おこ中のようだ。

 こうなった母は父ですら尻尾を巻いて逃げてしまうほどに恐ろしい。まさに修羅だ。ただ今回の原因が自分にあることは百も承知だ。

 謝りたいが正直そんな時間はない。

 テーブルに置いてあるトーストを咥え玄関へと向かう。


 「行ってきます!」

 「……」


 俺の『行ってきます』に母が反応しなかったところを見るに相当お怒りのようだった。帰った後、ゲームがご存命かが心配だが、今は全速力で駅に向かわなければホームルームどころか一限目にすら間に合わない可能性がある。公共交通が不十分なのは田舎の辛いところだ。

 パンを咥えながら走って登校しているこの状況で、運命の相手にでもぶつかれば少しは走っている意味があるのだが、駅までは直進コースな上にパンにはたっぷりとジャムが塗ってある。

 ぶつかるとしたら女子だろうし服が汚れてしまっては不憫でならない。


 「走りながらパン食べるのって難しんだな…手がジャムでベタベタだ」


 これはあまり考えたくはないが母からの細やかな嫌がらせではなかろうか。加えてパンに口の水分を持って行かれ、走っている状況も合わさって余計に喉が渇く。

 

 「ギリギリセーフ」


 アニメであれば『※駆け込み乗車は危険なのでマネしないでください』とテロップが出てしまうほどギリギリの乗車だ。時間が時間だけに乗客のほとんどが学生だった。俺のように走ってきたのか汗を拭いている人もチラホラいる。

 ただ一貫して浮かない顔している。なにせ今日は月曜日。土日という束の間の休日が過ぎ、また一週間の地獄が始まると思うとため息が尽きない。俺に至っては朝からボスに負け、剰え徹夜明けときた。気分は最悪だ。

 十数分後、最寄駅からまたもやダッシュ。運動部でも朝からこんなに走ることはないだろう。いや部活に入ってないし、本当のところは全く知らない。でもそうでも思わないと心が折れてしまいそうだ。


 「はぁーはぁーお出でなすったか」


 俺が通っている学校は丘の上にあり、学校に辿り着く為にはこの学校名物『心臓殺しの坂』を駆け上らなければならない。手ぶらならまだしも教材が入ったこのクソ重いカバンを持った状態で走るのは一苦労 どころかこのままUターンして帰宅しようかとまで思わせて来る。

 だがこの坂には攻略法がある。それは一気に駆け上ることだ。

 もしこの坂がモンスターだとすれば弱点は、角度が急な代わりに距離が短いことだろう。結論自分の体力が切れる前に登り切ろうという脳筋戦法だ。ゲーマーたるものもう少し頭を使えと言われそうだがごり押しも立派な戦法なのだ。

 俺はカバンを持ち直す。宛ら陸上の号砲を待つ選手の心持ちだ。


 「バン!」


 そしてまさに今、上で陸上部が朝練をしているのか号砲が鳴った。好調なスタートダッシュを切り、坂を駆け上るはず……だった。

 ごり押し戦法が成立する条件とは強力な攻撃とタフな体力だろう。日々の登校で心身ともに申し分ないほど鍛えられている。だが誤算だったのはここまで来る時点で体力バーが残り僅かになっていた点だ。

脚は既に限界を迎えており、一歩一歩に自身の体重と荷物が圧し掛かる。


 「重力なんて無くなってしまえ」


 坂を上り終えた頃には折角電車で乾き始めていたシャツはしっとりと湿っていた。息を整えつつ校舎へと向かう。時刻は8:32、ホームルームは8:40からだ。ギリギリもいいところである。


 「お前ら急いで片付けろ~。ホームルーム間に合わないぞ~」


 グランドには朝練をしている運動部の顧問の声が響いている。

 大抵朝練をしている部活は限られいるが、今日はグランドの大半をサッカー部が、その端っこで号砲を鳴らしてくれた陸上部が練習していた。

 俺は心の中で陸上部に感謝を述べ、先を急ぐ。

 一応部活には入っているが基本自由参加な上、部活とは全く関係ないことを永遠とやっているだけの部活だ。入学当時は仕方なく行っていたが、今ではもうほとんど顔を出していない。週一の活動報告会ぐらいだ。

 校舎に入り、教室へと向かった。

 教室の扉を開け、ガラガラと教室内の喋り声よりも大きな音が響く。俺はあまりこの瞬間が好きじゃない。教室にいる誰もが扉の開く音に反応し、こちらを見る。見るまではいい。嫌なのがその後だ。そのまま何事もなかったかのように目線を戻していく。

 嫌がらせやイジメじゃないのは分かっている。ただ友達がいないことによる発生している現象に過ぎないことは知っている。

 なるべく音を立てないように静かに扉を閉め、自分の席へと向かう。

 窓際の一番端。そこが俺の席である。夏は暑いが風が吹き、冬は日が当たり暖かい。寝ててもバレにくいナイスポジションだ。

 荷物を置き、一限目の確認と準備を済ませる。カバンの中から本を取り出し読み始める。

 最近のマイブームは恋愛ものだ。決して自分が恋愛出来ないからと本に現実逃避している訳ではない。小学生の頃はこの手の本を持って行くとからかわれるのが当たり前だった。アニメ全盛期の今となっては、寧ろ見ていないと話しについていけないほどだ。


 「全く、いい時代になったものだ」


 本を開き、黙々と続きを読む。徹夜明けの眼には小さな字は読みにくいが、そこは愛でカバーする。だが俺が落ち着いて本を読めたのはほんのひと時だけだった。

 扉の開く音と同時に元凶は入ってきた。


「ギリギリセーフ?」


 この爽やかイケメンは一条暁斗(イチジョウ・アキト)

 うちのクラスの学級委員でサッカー部の期待のエース、成績優秀、おまけに人当りもいいと来た。校内の100人に聞けば99人が知っていると答えるほどの超有名人だ。『朝日を見る会』なんて名前のファンクラブもあるほどだ。

 そんな奴が一度クラスに入ると男女問わずクラスメイトのほとんどが一条の周りに集まる。そのほとんどの中に俺は含まれていないが後ろから見ているだけでも凄まじい光景だと思う。

 幼小中高と同じ学校に通っていた所謂幼馴染というやつだが、どこで間違えたのかあのイケメンとの間には可視出来るほど確実な差が生まれてしまった。

 それを今更取り戻そうとは思わないがそれでも……。


 「君達、いつまで喋っているの?とっくにチャイムはなってるよ」


 担任の佐藤先生の言葉でやっと集団から解放された一条は席に座り、いつも通りの長い一日が始まった。


 俺の通っている学校は所謂進学校である。そのため授業となるとさっきまで騒がしかったクラスメイト達も真剣にノートを取り、積極的に質問する。学問に励み学友と仲を深める、まさに理想的な学生の姿だ。

 対する俺は高望みしすぎた結果、自分の学力に見合わない高校に入学し、初めは皆に置いて行かれないように必死に勉強していた。だが徐々に点数は下がり始め一年生最後の期末テストで過去最低点数を叩き出した。それ以降勉強に対する意欲は完全に冷め切ってしまっている。

 最近は、授業中はただ黒板をノートに写し、先生の話半分に聞き流すのが習慣になっている。

よし、写し終わった。さて何するか……。本を読みたいけどバレると面倒だし、寝るのも同様の理由で却下。となると……妄想だな。

 今までにした妄想は数えきれないほどある。今は暇だから仕方なく妄想に興じているが現役だったころはノートびっしりに設定やら技名やら書いて遊んでいた。

 姉に見つかったとき『あんたネーミングセンス皆無じゃん、何この魔法の剣(マッジクソード)って安直すぎ』と言われたその瞬間、卒業しようと決めた。捨てるに捨てきれずノートは未だ押し入れの奥深くに鍵付きで封印している。


 退屈な授業時間を乗り越え、本を取り出し束の間の休息を取っていると


 「あ、あの連城君……」

 「はい?」


 本から顔を上げ声のした方を見ると、三つ編み眼鏡の女子が立っていた。

 彼女は桜井真帆(サクライ・マホ)さん。うちのクラスでは数少ない同士だ。きっかけは同じ部活に所属していた際に少し話すようになり、それから本を貸し合う程度だが交流が続いている。

と言ってもお互いあまり喋る方ではないし、ましては教室で話しかけられることなんて今までなかったことだ。こんな事で期待してしまうから駄目なんだと理性では分かってはいるが本心ではほんのちょっと期待していた。


 「数学の宿題だしてない……よね」


 残念ながら事務的な内容でした。

 俺は慌てて数学の課題をカバンから取り出し、桜井さんに手渡す。彼女はノートを受け取りその場を離れようとしたその瞬間席から立ち上がり


 「桜井さん、持って行くの手伝おうか?」


 今までの話の流れから下心丸出しに見えるかもしれないがこれに関しては完全なる善意である。ノートとは言えクラス30人分ともなると重量は相当なものだ。

 それを女の子一人に持たせるのは気が引ける。それに提出が遅れているのは俺が原因だしそのお詫びも兼ての提案だ。


 「大丈夫、ありがとう」


 たった一言、そう言って俺のノートを持ってそそくさと行ってしまった。

 形容しがたい空気が周囲を包む。ゆっくりと席に着き、大きく一息吐く。ここは素直に本の世界に戻ることにした。強引にでも手伝いに行くという選択肢もあるがそれほどの積極性はない。

 ただ視界の端で桜井さんと一条が一緒にノートを持って行っていたのを見た時は少し泣きそうになった。


 いつの間にか午前中最後の授業になっていた。チャイムが鳴るまで残り10分。この辺りからクラス内には緊張感が漂い始める。この後の昼休みでは各々仲のいい友達でグループを作り、弁当を食べるのが基本なのだがうちのクラスは少し違う。

 俺の中では『ランチファイト』と呼んでいるこの乱闘はクラス内ならまだしも他クラス終いには他学年からも参加者が集まる。要は一条の取り合いだ。

 その中でも特に勝率が高いのがサッカー部、クラスメイト、『朝日を見る会』の幹部達だ。

 例に漏れず今日もまた戦いの火蓋が切られた(チャイムが鳴った)

 チャイムと同時に先陣を切ったのは特徴的な金髪に薄っすらではあるが化粧をしているザ・ギャルの王道こと『朝日を見る会』会長の速水桃華(ハヤミ・トウカ)だ。訓練された彼女らは速水の電光石火に合わせ目にも止まらぬ速さで砦が形成されていく、その攻防一体の戦術に誰一人として太刀打ちできず棒立ちするしかなかった。

 これは今日の勝敗は決したか……。


 「一条君、いい天気だし外で一緒にご飯食べよう」

 「ごめん、今日実は昼休み先生に部活のミーティングがあって」

 「暁斗~早くしないとミーティング始まっちゃうぞ」


 瞬殺、まさに瞬殺である。

 廊下には弁当を持ったサッカー部がいた。

 勝者はサッカー部。呼ばれた一条は弁当を持ち、クラスから出て行った。敗北感のあまり放心状態になっている『朝日を見る会』の面々を、廊下を通ったサッカー部のマネージャーが勝ち誇った顔で見ていた。

 その時の彼女らの顔は見ない方が身のためだ。


 昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

 午後の一限目は睡魔との戦いだ。日頃真面目なうちのクラス連中だがこの時間だけは頭が下がっている者も少なくない。耐えようと必死に頭を振り、目薬を差す者がいる一方、諦めて寝に就く者も一定数存在する。

 俺?俺はもちろん諦めて寝る。寧ろこのポジションで寝ないのは失礼ってやつだ。特に今日は徹夜だったこともあり眠たくなるのは必然だろう。

 今日月曜の授業は担任の佐藤先生の国語だ。

 満腹のお腹、暖かい教室、そして佐藤先生による徒然草の音読(最高の子守歌)による多くの生徒が夢へと誘われている。俺も一様は抗っている姿を見せつつ自然に寝に就くつもりだった。

 ……眠くないな。

 何だか今日は眠ることが出来なかった。いや授業中眠くないのは非常に良いことなのだが、何処か悪寒のような物を感じる。


 「何かに見られているような……気がする」


 もちろんそんな物は勘違いだと思い思考を放棄しようとするが、何故だが徐々にその視線が近づいて来ている感覚に襲われる。周囲を確認しても一番後ろの席を見ている人など誰一人としていない。

 スピリチュアル的な何かかもしれないが、今まで試せるだけの霊感解放法を試した俺には残念ながら霊感がないことが分かっている。


 そんなどこか落ち着かない授業も後半に差し掛かったころ奴が現れた。

 それを何と表現をすればいいかと聞かれれば黒い球体だ。

 黒球は教室中央に突如として現れた。立体的に見えるようでどこか平面的なようにも感じる。凝視していると吸い込まれてしまいそうな不気味さがある。

 その存在に気が付いているアホが無警戒に手を伸ばし、巻き取られるように黒球に飲み込まれてしまった。

 その光景を間近で見ていた生徒が悲鳴を上げようとして口を開けるが声が出ないといった様子で口を動かしている。他の者も声を出そうにも出ない。この場から逃げようと椅子から立とうとするが金縛りにあっているかのように、体がピクリとも動かない。

 そんなことをしている間に黒球は風船を膨らしているようにゆっくりと膨張を始めた。一人また一人と 球体の中に飲まれて行く。遂に最後の一人である俺までも球体に飲み込まれた。


 「……ようやく見つけたぞ」

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