第7話 魔法学園の受験②
今日は実技試験だ。
今、俺は試験場にいる。
「次の方ー」
試験官が受験者を呼んだ。
呼ばれた受験者が白い線のところに立った。
そして的に手を向けて魔法を放つ。
「炎よ敵を焼き尽くせ、ファイヤーボール!」
手から火が出て、的に当たった。
そして的に数字が浮かんだ。
『57』
「次の方ー」
俺の番だ。
白い線のところに立つ。
「あのー、これって的の前に立ってから当ててもいいですか?」
「?ええ、いいですけど…点数が下がりますよ」
言質取ったぞ。
俺は的の前に立つ。
「普通のパーンチ!」
『アンチ』を発動しながら的を殴った。
「そ、そんな!的が壊れるなんて…」
的は俺のパンチによって壊れた!
試験官が驚いている。
的には魔法障壁があった。
俺の『アンチ』はスキル&魔法を封じるものだ。
障壁は魔法の一種。
そのため、『アンチ』で効果を封じ、あとは俺のパンチがノーロスで当たる。
パンチングマシーンもどきは物理攻撃に対する高い耐性があった。
しかしこの的は物理攻撃のことは考えられていない。
なので的の強度は紙だ。
そこに俺のパンチが入れば壊れるのも当然というわけである。
「次の試験は…?」
呆然としていた試験官が己を取り戻し、震えた声で言う。
「つ、次の試験場はあちらです…」
そして俺は次の試験場へ向かった。
* *
「次の方ー」
俺の前にいた人が白い線で書かれた円の中に立った。
そして自分の前に魔法障壁を展開する。
「壁よ魔法を防ぐ盾となりて顕現せよ、マジックウォール」
前から炎が飛んできた。
そしてそれを魔法障壁で防いだ。
しかし防ぎきれなかったのか、障壁が破れ、当たってしまった。
が、当たった人にダメージはなかった。
どうやらここではダメージを肩代わりする魔道具があるらしい。
戦闘で使えそうだ。
「次の方ー」
俺は白線の円に立つ。
目の前には大砲のようなものがある。
なんか怖いな…。
「魔法障壁を展開してください」
準備が終わっていないと思ったのか、試験官は俺に急かしてきた。
「大丈夫です。このまま始めてください」
前から炎が迫ってきた。
それを俺は封じる。
炎は俺の前で消えた。
「!?……次の方どうぞ」
あれ?今度はあまり驚いてないな。
まあ、前の試験で的を壊したのが異常であって、これはそれ程ではないからな…。
そしてどうやらこの試験が今日で最後だったらしい。
案内人からこれからの予定を教えられた。
まず寮に行き、そこで一泊。
次の日、試験場に行き、くじを引く。
くじで決められた順番で他の受験者と戦う。
戦いはトーナメント形式。
勝つことが目的ではなく、如何に実力を試験官に見せつけられるが重要になる。
* *
俺は寮の前にいる。
「大きい…」
入り口には重厚で厳かな雰囲気の扉がある。
白がメインで、周りに青色の装飾が施されていた。
高さは俺の身長の3倍、横幅は俺の身長の2倍あった。
とりあえず中に入ってみた。
前世と比べるとお粗末だが、それでも精巧に装飾されている。
俺が泊まるところは3階なので、階段を探す。
……寮内は広かった。洒落にならないほど広かった。階段なんて、もう遠くて遠くて本当にあるのかさえ疑ったほどである。
なんとか部屋の前に着いた。
そしてドアを開けると、驚き(なのか?)の人物がいた。
「あれ、奇遇だね」
ランドリック・リトナードである!
「そ、そうだね…ホント奇遇だね…」
まって一時的とはいえ、ただの貴族が王族と一緒の部屋はどうかと…。
俺にも貴族として知識はないわけではない(あるとは言っていない)
これはいいのか?
「ああ、緊張しなくてもいいさ。前言った通り、僕は王位継承権二位だから。一位の王子より少し立場は下だ」
「それは分かってるけど…」
ええい!こうなったらどうにでもなれ!
「そんなに言うなら今すぐ部屋を変えて――」
「大丈夫ですはい部屋を変えなくても全然問題ない」
「じゃあ、短い間だけどよろしくね」
「こちらこそよろしく」
「ところで」
何か?
「君は何レベルかな?」
レベル?
…あ、それってなんか転生するとき神が言ってたやつか!
今までそういうの意識したことなかったから完全に忘れてた。
「そ、それは…その…は、測ったことがな、ないです」
「……」
「……」
「…え?」
そして俺たちはしばらく沈黙した。