魔法学園の受験⑥(レベル測定)
レベルを確認する日がやってきた。
俺のレベルは1だと思う。
だって、何も魔物を倒していない…前にオーガを倒したな。
まあ、オーガを倒したくらいじゃレベルは上がらないだろう。
「レベル測定を行います。受験番号順に三列に並んでください」
「メリディア、レベル1」
「エメリス、レベル1」
「リリアーナ・フォン・クローディア、レベル1」
次々とレベルが公開される。
「ルフィア、レベル2」
「れ、レベル2!?すげー!」
「一体どれほど強いんだろ…」
レベル2が来ただけでちょっとした騒ぎが起きた。
やはりレベル2は凄いみたいだ。
しかしレベル3はこの比ではなかった。
「カチマ、レベル3」
一瞬静寂になった。
「れれれ、レベル3だって!?ほ、本当なのか!?」
「道理で強いわけだ…」
「さすがだな!」
皆がカチマを称える中、カチマは狼狽える。
「そ、そんな、僕はそんなにすごくないよ…」
戦闘時とは違い、弱気だった。
カチマは状況によって性格が変わるのかもしれない。
その後も順調にレベル測定がされた。
俺の番が来た。
「アル・フォン・ジェトラル、レベル3」
……え?
「れれ、レベル3の再来!?」
「レベル3なんて、数年に一度しか入学してこないって聞いたんだが」
「てかあいつ見たことない…誰だよ」
「レベル測定は誤魔化せないから、レベル3というのは事実のはず」
待て待て。
レベル3…?
こんなに上がる理由なんて無いんだが??
いや、ないこともない。オーガを倒したことがある。
でも、それにしては上がりすぎだ。
転生するときの女神に会って、確認しようかな。
なんか俺の色々なところいじってそう。
どうやって会うか分からないけどね!
教会に行けば会えるかもしれない。
「ランドリック・リトナード」
ついに来たようだ。俺の新しい友の番が。
「レベル4」
こそこそと周りが話し始める。
「4って言った…?」
「言ったね…」
「聞き間違え?」
「レベル4は数十年に一度の逸材って聞いたことがある」
「まさかね」
「はーい、みなさん、落ち着いてください。彼はレベル4で合ってます」
「マジで4かー、へー」
「なんか現実味が薄くなってきた」
「今年はすごい人が多いなぁ」
すぐには呑み込めないだろうが、まあだんだんと真実だと分かってくれるだろう。
それにしても、レベル4ってすごかったんだな…。
そして全員分が終わった。
レベル1が大多数を占めていた。
レベル2が十人程度
レベル3は俺とカチマの二人だけだった。
* *
「前にレベル1だとか言ってなかったけ?」
寮に帰った俺たちはちょっとお話しをしていた。
「いえ、これにはエベレストより高く、マリアナ海溝より深い理由がありましてですね…」
「うん、“えべれすと”や“まりあなかいこう”が何なのかは、この際置いておく。なぜレベル1と前に言ったのかい?」
「だって…ホントに知らなかったし…」
足が痺れてきた。
「まあ、僕はあまり言うつもりはないよ。ただ、レベルの虚偽申告は良くないから、それを正そうと思ったからこうやって君に話しているわけ。だから別に怒ったりとかはしていないから」
…怒ってないと言っている人ほど怒っているよ。
前世で経験したから…。うっ、あのときの何時間もの説教が思い出されて…!
そ、そうだ!あのときはハイハイ言っとけば何とかなったのだ!
今回もそれでいこう。
「次はレベル1と言ってはいけない、いいね?」
「ハイ」
「レベル3と言わなければ、虚偽申告で色々と面倒なことになるよ」
「ハイ」
「だからハッキリと自分のレベルを言ってね」
「ハイ」
「…なら、僕からはこれ以上何も言わない」
「ハイ」
ふう、どうやら説教は終わったようだ。
足が麻痺しすぎて、ピクリとも動かなくなった。
指を動かそうとしてもうんともすんともしない。
俺は手で起きあがった。
いてぇぇぇぇ!!
あ、足がぁ…足がぁぁー!
数十秒後に痛みは消えた。
「さっきの“えべれすと”と“まりあなかいこう”とは何?」
「げっ」
言わなければ良かった。
「何?」
ここは強引にでも誤魔化さなければッ!
どうやって誤魔化そうか…。
……妄想にする以外に誤魔化す方法がないじゃないか!!
そんな考えに至った。
ここは…恥ずかしいけど…これでいこう…クッ!
「…お、俺が作り出した、架空の地名だ…」
俺はプルプルと震え、顔を真っ赤にして言った。
「…自分で考えた地名ということ?」
「違う…どこにも存在しない、妄想の、せせ、せか、い、世界さ☆」
涙出そう。
「…大丈夫、きっとどこかにあるさ…そのはず…」
嗚呼、彼は私を慰めてくれる。なんて良い人なのだろうか。
…
……
………
「さっき、何かあったかな?」
「えっと、“えべれすと”や“まり――」
「何があったか忘れたなー。忘れたから、思い出せないなー。だから思い出さなくても、いいよねー」
「…“えべれ――」
「あれ、全然聞こえないなー。もしかして鼓膜が破れたかもー。ごめん、これ以上は言わなくてもいいよー」
「……」
秘技、『都合の悪いことが聞こえなくなる』!
スキル『都合の悪いことが聞こえなくなる』とも言うかもしれない。
どちらにせよ、これはれっきとした戦術なのだ。
「何があったか、それは誰にも言わないでくれ、お前だけの記憶、いや、誰も記憶を残さないようにしよう」
「あれ?さっき何があったのか忘れたな。何だっけ」
「何だっけー」
「覚えないほどどうでもいいことだから、思い出す必要もないね」
さすが俺の友、イタイことは仲良く忘れている。
これから発言には気を付けなければならないことに改めて気付く俺なのだった。
皆さんもこういった経験はありますか?
作者はあります。
だけど、そんなときは、このアルのように、忘れてしまえばいい!
「こんなのあったよね」と言われても、全力でとぼけて「え?なにそれ、やってないけど?」と己を貫き通すのみ。
それだけで相手は「あ、だめだ。こいつに何を言っても『やってない』の一点張りだ」と最終的に諦めてくれるでしょう。
追記:エピソード毎に少し色々と変わっていて、もしかしてエピソードによって作者は変わっているのか?と思うかもしれませんが、全員同一人物です。ときどき溜口、ときどき敬語だとしても、作者は同じです。
あしからず。




