第9話 女を殴る男は許せへん
放課後はいつものようにバイトに行った。
今日も沙奈はんと一緒のシフトのはずや。
しかし、沙奈はんは出勤の時間になっても来いひんかった。
俺は仕方なくワンオペで仕事をしていると、30分くらい経ってやっと沙奈はんが出勤してきた。
「ごめんなさーい!遅れちゃいました」
「沙奈はんえらい遅刻しましたね……その顔、大丈夫ですか?」
沙奈はんの目元には殴られたような痣があった。
「あーこれね、ちょっと転んじゃって」
「さよか……お大事にしてくださいね」
もう一度沙奈はんの傷をよく見ると、明らかに転んだ傷には見えへんかった。
今日は沙奈はんとは退勤時間が同じやったから、業務終了後に休憩室でその事について言うことにした。
「沙奈はん、何か隠してないですか?その傷は明らかに転んでできる傷では無い。殴られてできるタイプの傷です。
俺は中学の頃保健委員やったから、いろんな傷を見てきたので分かります。
何があったんか……俺に話してくれませんか?」
「樹先輩にはバレバレだったか〜。恥ずかしいんだけど実はね、彼氏に殴られたの。
おつかい頼まれてたタバコ間違えちゃって」(補足:エルフ族は年確されへんから20歳未満でもタバコ普通に買える)
「彼氏が殴るなんて……ひどすぎる。そんな酷い男とは別れた方がええですよ」
「でも彼氏は本当は優しいんだよ。私のドジに厳しいだけなの」
「ホンマに優しい人はドジで殴ったりなんかせぇへん」
「君みたいな高校生には分からないだろうけど、大人の世界にはいろんな愛の形があるんだよ」
「その愛の形に、沙奈はんは納得しとるんですか?」
沙奈はんはしばらく考えた。
考えた末に言葉を紡いだ。
「……うん。だって私を愛してくれた人だもの。どんな愛でも受け入れるよ」
「そうなんや……殴られたゆうことは彼氏は今こっちに来とん?」
「うん。一昨日から私のマンションに泊まってるよ」
「ほんなら今日はあんまり帰りたないですよね」
「……うん」
「ほな、今夜は俺と原付ドライブでも行きまひょか」
「少しだけだよ。長引くとはるきくんまた怒るから」
はるき、言うのが彼氏の名前らしい。




