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第5話 お酒の失敗は成人前にしとったほうがええ

翌日は学校やった。

昨日のことで頭が一杯で、寝不足のままフラフラ〜と原付に乗って学校に行った。


「どないしたん?今日の(いつき)、いつも以上に大人しいで?」

「なんでもない」


慎也には絶対に言えへん。

俺の出自のことも、魔法のことも。


「ほな、元気取り戻すために遊びの計画立てよ!

オレと一緒に宝探しせぇへん?」

「宝探しって……俺らもう高校生やで。どこで何を探すんや」

「樹の村の廃屋でお宝探しや。

樹ん家が江戸時代末期に建てられて新しめっちゅう扱いなんやろ?

それやったらあの村の他の家はもっと古いものやろうし、江戸時代のお宝とか埋まっとんちゃう?

それが樹のオカンが言うとった一族の宝の手がかりにも繋がるかもしれへんし」

「一族の宝なぁ……」


俺は一族の宝の正体をもう知ってしもた。

でも、慎也がせっかく俺を励まそう思て誘ってくれたから、断る訳にもいかへんかった。


「ほな、次の土曜、松原駅で10時に待ち合わせや」




次の土曜、この前のように河内松原駅で待ち合わせて、原付二人乗りで俺の村に行った。

オカンは今回も俺の友人を歓迎した。

余所者の人間に対して宝探しを許したんは、”宝”の証拠が俺の遺伝子以外ないからこそできるんやろなと俺は考えた。


「軍手ヨシ!懐中電灯ヨシ!探索開始や!」


まず最初は、川の近くの家に入った。

この家の表札は「二上」やけど、オカンはこの家を「川辺はん」と呼んどる。いわゆる屋号言うやつで、川の近くにあることからそう呼ばれるようになったらしい。


「うわ〜ホンマに散らかっとるな」

川辺はんの家は一部屋根が崩壊していて、床を突き破って草が生えとる。

「この村の家はみんなこんな感じや思うで」


俺は汚いのは嫌やから入口で待機して、慎也が宝探しをするのを見守る。

慎也は床に落ちとった一冊の巻物を手に取った。

「河内二上村 伝統魔法図鑑……」

慎也が巻物を読み進めていくと、彼の表情がワクワクに変わっていくのが見えた。

「これホンマすごいで!いろんな魔法について図解付きで載っとる!」

内容が気になったから俺は慎也のところまで行って、巻物を見た。

巻物は浮世絵みたいな絵と漢文で魔法の使い方について書かれとった。

「これはおそらく刀狩り以前の魔法の歴史を知るエルフがこっそり書き残した書物やな。まさかこんなすごいもんが村にあるとは……」

「これ読んだらオレも魔法使えるようになるんかな?」

「ほんなら試してみる?村の中心にマナの大樹があるから、そこなら魔法を使えるはずや」

「やったるで!」


俺達は川辺はんの家を出て、マナの大樹まで移動した。

そして、慎也は巻物を持ちながら魔法を使おうとする。

「まず最初のページのやつからいくで。

炎奥武!

……何も出えへん」

「ただ魔法名を言うだけや駄目やねん。

周囲のマナを取り込んで、マナを魔法に変換するための呪文を自分で作って唱えなアカン」


沙奈はんから教えてもろた魔法の出し方を参考にして、俺がお手本を見せよう。


「人を人たらしめた英智の結晶……マナの恵みにより、その姿を現さん!

炎奥武!」

俺がそう叫ぶと、地面から生えた雑草の先端が焦げ、細い煙がのぼった。

魔法を使たらどっと疲れがきたから、マナの大樹にもたれてしばらく休むことにした。

「魔法の威力に対して使う体力がデカすぎるわ……」

「ひょえ〜……魔法ってえらい体力使うんやな。

オレ宝探しの体力残したいから魔法の練習は遠慮するわ……」


俺は今、人生で初めて魔法を使た。

そうして分かったのは、魔法はめっちゃ疲れる言うことやった。

魔法を使た後も涼しい顔をしとった沙奈はんはすごい魔力の持ち主やと言うことを、いま俺は理解した。

そういや、結局あの時の話が衝撃的すぎて沙奈はんのLINE聞くのを忘れとったわ。

明日のバイトはシフト一緒のはずやし、その時に聞こう。


俺達はしばらく休んでから、次の廃屋へと向かった。

次に入ると決めた廃屋は、誰も使(つこ)てへんはずやのに妙に手入れされてはることが前々から気になっとった、越後屋はんと呼ばれる家。

玄関のドアを開けると、強烈なアルコール臭が鼻を突いた。

その家の中には大量のワインがあった。

しかも瓶だけやなくて樽まである。ここにあるワインはここで作られているようやった。

そういえばオカンは時々酔っ払って夜に帰ってくることがあった。

せやけど村の外に飲みに行っとるわけや無さそうやさかい、長年の疑問やったけど、越後屋はんでワインを作って1人で飲んどるんやったら納得や。


「お酒があるで!ほな飲み会しよーや!」

「いや……俺ら未成年やろ……

そもそも俺らは原付でここまで来たんやから、もし飲んだら山を1人で下りてもらうことになるで」

「オレなら1人で山降りるから一緒に飲もーや。

樹とやったら楽しく飲めそうな気がするねん」

「でも流石に未成年はアカンやろ。学校にバレたらどうすんねん」

「樹、お酒のやらかしは未成年のうちに親しい間柄でやるのが一番や。

大学に入ったらどうせ新歓で未成年飲酒させられるんやから、早いうちに未成年飲酒して自分のお酒の限界を知っておくのが自己防衛に繋がるんやで?」

「それもそうやな……

ほなちょっと怖いけど、飲もか。

その代わりちゃんと1人で帰りや」


俺はこの家に備え付けてあったワイングラス2つを水洗いし、テーブルへグラスを持って行った。


「慎也は酒飲んだことあるん?」

「ない」

「ないんかい!」

「ないから飲みたいねん。樹やったらオレが酒で変な事してもみんなに秘密にしてくれそうやし」

慎也はそう言いながら、ワインをついだ。

「俺の事、信頼してくれるんやな」

俺もワインをつぐ。

「当たり前やろ。親友やし」

俺達は乾杯をして、グビッとワインを飲んだ。

今まで感じたことないような刺激がきつかったから、俺は一口で3分の1くらいしか飲めへんかった。

それに対して慎也はグラス一杯分を一気に飲み干した。


「よう一気に飲めるわ」

「大学行った時に舐められへんよう頑張ったわ」

「まあワインって一気飲み()うより味わって飲むもんらしいけどな」

「へえ〜オレよりお酒詳しいやん。

さては樹……未成年飲酒経験あるんか?」

「ないって

単にうちでぶどう作っとるから、ぶどうの関連製品に関する知識があるだけや」

「樹ん()ぶどう作っとるん?ほんならこのワインも樹ん家で採れたぶどう使うとるんかな?」

「使うとると思うで。オカンがよそからぶどう買うはずないし」

「ぶどうから酒まで一貫して作るのすごいなぁ。

こんな美味しいなら道の駅とかで売ったりせーへんのかな?」

「密造酒やろうから無理やな。捕まるで」

「あ〜酒って勝手に作ったらアカンのやった!」


俺は二口目を飲む。

たしかにうちのぶどうの香りがすると思た。


だんだん体が熱くなってきた。

慎也はさらに2杯目を飲むらしい。すごいな。


「樹、もうきつそうやな」

「別に。慎也こそ顔真っ赤っかやで」

「オレは多分いけるわ。なんたってオカンが鹿児島の出身やからな」

「それ関係あるん?」

「前読んだ記事で、鹿児島とか東北とか、日本の端っこの人ほどお酒強いって書いてあってん。

逆に関西とか東海の人は弱いらしいで」

「へえ〜ほんなら俺は両親どちらも関西人やからよわよわやな」

「樹のオトンも関西の人なん?」

「京都や」

「話したかったらでええけど、樹のオトンってどんな人なん?」


普段やったらここで適当にはぐらかしたやろうけど、俺は酒の勢いでつい言うてしもた。


「実はな……俺のオトン天皇やねん」

「は……?」

慎也の表情がひきつる。

戸惑うのも無理はない。俺かて最初は驚いたし。


「どの天皇かは分からへんけど、この村に昔から保存されとった昔の天皇の精子が俺のオトンなんや」

「樹……その冗談おもんないで。

流石に皇族をネタにするのは愛国者としてアカンやろ。

お前が今まで言うてきた愛国心とやらは全部嘘やったんか?」

(ちゃ)う!そんなんやない……俺はただ慎也に俺の出自を知ってもらいたい思て……」

「出自?もし樹が天皇の血を引いとるとしたら、樹には天皇のy染色体……つまり神の遺伝子が流れとることになる。

別に樹が亜人種だからってどうこう言うわけやないけどさ……自分の身分分かっとる?

神を名乗るのがどれだけおこがましいことか分かってへんやろ。

樹がこんな奴やったとは思わんかったわ。二度と顔も見たくない。帰る」


慎也はそう言い残して、酒でフラフラな走りで出ていった。


俺はフラフラな状態で追いかけようとしたけど、慎也が村から出るのを見届けた段階で眠くなって自宅へ戻った。

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