第3話 埼玉二上家の存在
バイトが終わった。
俺と沙奈はんは帰る方向が真逆やったけど、魔法についての話を聞きたかったから原付を手で押しながら、帰り道に沙奈はんと話をした。
「沙奈はんは魔法の研究したい言うてはりましたけど、沙奈はんはどないな魔法使えるんですか?」
「いろいろあるけど……一番便利なのだと瞬間移動かな?
朝鮮半島だと縮地法とも言われている魔法で、あの金日成や金正日も使っていたと言われてる魔法だよ。
まあ瞬間移動の実在がバレると鉄道会社や自動車メーカーの売上が落ちるからどこの国も隠蔽してるけどね」
「瞬間移動が実在するなんて驚きや……
沙奈はん、もしよければなんですけど、その魔法を俺に教えてもらうことってできますか?」
「一つだけ条件を呑むなら、教えてあげる」
「その条件は?」
「人間には絶対この魔法の存在を教えないこと」
「分かった。約束します」
「うん。じゃあ次にシフト被る日の退勤後に教えるね」
「ありがとう」
「同族のよしみとして当然だよ〜」
(ブブッ)
「あっLINE来た」
沙奈はんはスマホを取り出して、LINEを見た。
俺はアカンて分かっとっても、少し気になって沙奈はんのスマホの画面を一瞬見た。
相手の名前は『二上香』……俺と同じ苗字やった。
「二上……」
その言葉はつい口に出とった。
「二上?……ほんとだ!樹くんと香ちゃん同じ苗字だ!」
「二上は俺の村のエルフ全員が名乗っとる苗字です。
その二上香いう人がもしエルフ族やったら、俺の親族の可能性が高い」
「香ちゃんはハーフエルフの女の子で、お母さんがエルフだね。そういえば香ちゃんのお母さんは関西出身って話してたような気がするから、本当に関係があるのかも」
「香はんはどこに住んどるんですか?」
「私の地元、埼玉県草加市に住んでるよ。実家が同じマンションなんだ」
「瞬間移動魔法って、移動距離とかに制限はあるんですか?
もし行けるんやったら草加市に行って埼玉の香はんに会うてみたい」
「魔法の使用者が一度訪れたことがあって、かつマナの濃い場所なら地球上のどこでも行けるよ。
だから次会う時は、行きは私が魔法を発動させて実家マンションまで行って、帰りは樹先輩が魔法の練習してみようか」
「ほなそうします。ほんまに俺のためにありがとうございます」
「いいのいいの!人間が支配するこの世の中だからこそ、我々エルフ族は連帯していかなきゃいけないと思うからね!」
「そうやな」
「じゃあ私、家ここだから。じゃあね」
「関東人はほんまに『じゃあね』言うんやな。
ほな俺も、じゃあね」
「じゃあねー!」
かわいいお姉さんやったな。
原付で帰っている最中、ずっと沙奈はんの笑顔が頭から離れへんかった。
ムラムラしたから、家に帰ってから自慰行為をした。
沙奈はんの大きな胸と、太い太ももを頭に思い描いた。
同族故に寿命差のない、明るい未来を想像した。
今までにないくらい気持ちよかった。
賢者タイムになって思た。俺には明らかに性欲がある。
エルフには性欲がないと言われとる。それに俺の耳の形状……
俺は自分をエルフやと思い込んどっただけで、ほんまはハーフエルフなのかもしれへん。
父親についての情報を増やしたくて、俺はオカンに聞いた。
「俺のオトンってどんな人やったん?」
「今の樹は知らんでエエ」
「せめて種族くらい教えてくれへんか?人間なん?」
「人間では絶対にない」
「ほんならハーフエルフ?」
「違う
時が来たら、いずれ分かる」
「毎回それやな……もうええわ」
俺は自分の部屋に戻った。
人間ではない、ハーフエルフでもない、ほなエルフ?エルフ同士から性欲のある子供が生まれる訳が無い。
獣人?そもそも獣人とエルフは子を作れへん。
それ以外に日本に住む種族といったら、皇族のみ。
オカンみたいな一般人が皇族とヤれるわけないやん。
もう考えても無駄やと思った。終わり!寝る!




