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第2話 関東から来た魔法使い

今日はバイトに行った。

俺の高校は進学校やから本来はバイト禁止やけど、家庭の事情を考慮されて俺だけ特別にアルバイトを許可されとる。

バイト代はスマホ代と原付のローン返済に充てとる。

冷静に考えたら、オカンのワガママで交通空白地帯に住んどんのに、息子の通学に必要な原付のローンを子供に負担させるのはおかしいやろ。

オカンに言うたら絶対怒られるから絶対言わへんけど……


そないなことを考えながらバイト先に出勤したら初対面の、髪をおさげにした耳の尖った女性が居てた。

そういえば店長から新人が入ってくると聞いた事を思い出した。彼女がそうらしい。


「初めまして!今日からここで働く、横川沙奈(よこかわさな)です。よろしくお願いします!

初日についてくれる先輩が同族っぽくて安心しました〜」


彼女は関東なまりの言葉でそう言うた。テレビ以外で関東弁を聞いたのは初めてやった。

明治維新後、日本の中心が京都に統一されたことによって、京都の言葉が標準語として使用されるようになった。

しかし、日本の各地では今でも独自の言葉が残っとるいうことを、彼女の喋りで思い出した。


「俺は二上樹(にじょういつき)です。俺も春にここ入ったばかりで経験浅いですけど、よろしゅうお頼申します」

「樹先輩って高校生くらいですか?」


この言葉を聞いて、彼女が俺と違うて、多数のエルフやハーフエルフと日常的に関わっているエルフ族であることを察した。(エルフ族とはエルフとハーフエルフを一纏めにした呼び方)

なんでか言うたら日常的に多数のエルフ族と接していなければ、エルフ族の顔から年齢を推測するのは不可能やから。

ちなみに俺はオカン以外のエルフ族とまともに話したことないから年齢推測はでけへん。


「高校1年生や。横川はんは何歳ですか?」

「沙奈でいいよー

わたしは18歳。大学1年生」

「沙奈はんは進学でこっちに来た感じですか?」

「うん。大学で魔法の研究をしたいんだ」


魔法、それはエルフを中心に様々な人が使えたといわれている、人知を超えた特別な力。

マナの木から放出されるマナを操り、火や水を産み出すことができるらしい。

日本において魔法が途絶えたのは1588年。

豊臣秀吉は刀狩の一環として民衆の力を奪うため、魔法の力の源であるマナの木を伐採した。

マナがなければ魔法は使われへん。これによって人々は魔法文化の継承が難しくなり、文化が途絶えたと歴史の授業で習うたことがある。


「魔法の研究、素晴らしいですね。応援してます」

「樹先輩は魔法使える?多分ハーフエルフ……ですよね?」

「俺はエルフです。魔法は流石に使われへんなぁ」

「エルフだったんだ!エルフほど耳が尖ってないからわたしと同じハーフエルフかと思ったよ〜」

「へえ。耳の尖り具合なんて今まで意識したことなかったわ」


俺はバイト先の休憩室にある鏡を覗き込んで、自らの耳を見た。

言われてみればほんまに、オカンと比べて俺の耳はあんま尖ってない。

オカン以外のエルフとの交流が無さすぎたせいか、陰キャ故に自分の身体的特徴に興味が無さすぎたんか、16年間生きとって初めてこの事に気がついた。

オカンがしっかりとエルフの耳をしとるから、つまり俺の耳の形は恐らく父親の遺伝子の影響や。


俺の父親について、俺は今まで考えへんようにしてきた。

世間で耳にする母子家庭いうものは、母親の彼氏が頻繁に変わって苦労するとか、そういうものばかりやけど、うちのオカンには男っ気が一切ない。


そもそもエルフという種族は性欲が薄い。性行為は群れの存続のため、社会への貢献行為として子作りを行う者が多いと聞く。

エルフが寿命のわりに人口が少ないのは、人間のように性欲で子供を産まへんからや。


恐らく、オカンは村の存続のために俺を産んだ。

村長の娘として、村の宝を守るために。


そういえばもうすぐ祖父の命日や。

祖父は俺が生まれる前の年の7月のはじめに亡うなったとオカンから聞いた。

人は子作りをしたら、約40週間お腹の中で成長したのちに産まれてくる。それは人間もエルフも変わらへん。

祖父の命日と俺の誕生日は39週間の間があいている。

おそらく祖父が死んだ影響によって、俺は産まれたんやと思う。

そん時にオカンの周りに居てそうな男性は……思い浮かばへん。


そないな事を考えていると、休憩室の扉がバンと音を立てて開いた。

「いつまでダラダラしとんねん!はよレジ番変われや!」


あかん!考え込んどったらもう勤務時間始まっとった!

俺はさっき考えた事を頭の片隅に置きながら、歳上の後輩に仕事を教えた。

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