お風呂に入ろう
学校が終わり下校時間となった。
下校もやはり車で帰るらしく、千智ちゃんと一緒に万家の車に乗り家に帰る。
そして。
「マジで身体付き一緒。本当に双子みたい」
「い、いいの? 俺と一緒に入って」
「うちの風呂大きいから」
「そういう問題じゃなくて……俺男だし……」
「今は女の子でしょ? それに、音子なら大丈夫と私が判断した。そういうのする人じゃないでしょ」
そうなんだけど。
俺はバスタオルで前を隠しながら浴室に入っていく。風呂はジャグジーのような感じでとても豪華なお風呂だった。
ゆっくりと足を湯につける。
「あ゛ぁ゛~~……」
「おっさんくさ」
「つい癖で……」
「あ、湯船に髪の毛を付けない!」
「は、はい!」
俺は髪の毛をまとめあげ適当に縛る。
千智ちゃんは俺の隣に座ったかと思うと、俺の肌に触れてきた。
「さすが私、肌白いしすべすべ……。可愛い……」
「ちょっとっ……くすぐっ……」
「ふふん。とーりーあーえーずー」
千智ちゃんは俺の胸を鷲掴みにしてきた。
「わっ!? 何するの!?」
「むぅ、大きさまでも私と同じ。やっぱクローンだ」
「確かめるためにわざわざ胸を揉むことないでしょ!? ちょっとデカくて困ってるのに……」
「自慢じゃないけど私ナイスボディだからねぇ」
貧乳とかならまだよかったけどおっぱいが……。意外と重いんすねこれ。
「ほんっとに女の子だよ。マジの私の体じゃん。うちの技術なら普通にこの技術キモイな」
「すげえ悪口……」
「自分の複製が知らないうちにあるって怖くない?」
「……怖い」
確かにそう考えると怖い。
というかクローンに関しては千智ちゃんも知らなかったのか。
「こうも瓜二つとなるとホラーだよもう。救いなのは中身が別人で私を乗っ取ろうとすることがないことかな」
「あー、よくあるよね。ニセモノがホンモノを乗っ取ろうとする展開」
「そう! あれって映画とかだから面白がってるけど現実にあったら超怖くない!? 自分の立場がいきなり脅かされるんだよ!?」
「わかる。いつのまにかニセモノが俺の立ち位置にいて周りもそれを俺だと認識してるから俺がニセモノ扱いされる奴な」
「そう! そういうストーリーの映画見たことあるんだけどマジで怖くてトラウマでさ……。小さい時だったから眠れなくなっちゃって」
「俺もたしかに眠れはしたけど母さんと一緒に寝たな……」
ドッペルゲンガーというホラー映画だったなあれは。
「だからまだ中身が音子でまだ救い。乗っ取ろうとして来ないし」
「無理無理。乗っ取るなんてできないって。まずお嬢様歴が違うし」
「意外と顔同じならわかんないもんだよ?」
「道彦さんとかはわかりそうなもんだけど」
「さすがに家族はねー」
偽物……か。
立ち位置的に言えば千智ちゃんの言う通り俺がニセモノか。乗っ取ろうとは思えないがもし俺が乗っ取ろうとしたら本気で怖がっちゃうのかな。
「ま、話もなんだし体洗っちゃおっか。髪の手入れとか教えてあげたいしね」
「……もうちょい話そうよ」
「逃げないの。私の顔なんだから髪とかもきちんとやるべし!」
「うす……」
そういわれたら逆らえないじゃないですか。
俺はみっちり髪の手入れのことを教えてもらい、毎日それをすることが決まってしまった。めんどくさいんですね女性は……。