女の子としてのデート ③
汚れた服を変えるために服屋へ……。
だがしかし、ここで一つ問題。俺自身、女の子のファッションが全く持ってわからないということ。百花ちゃんに聞いてみても。
”動きやすければ何でもいいんじゃない?”
と、百花ちゃんは動きやすさ重視で選ぶために何が可愛くて何がダメなのかが全く持ってわからないようだ。
俺はユキの前では可愛くありたい。今は女の子だし……。
「……なあユキ」
「なんだ?」
「ユキさえよかったらさ……」
俺はユキの顔をまっすぐ見つめる。
「ユキが俺をコーディネートしてくれよ」
「俺が音子を?」
「あ、あぁ。俺じゃいつまでたっても悩んでるだろうし……。ユキが俺に着てほしいファッションとかがあれば俺が着ても……いい」
「お、おう……。俺でよければ承ろう」
ユキはそういって服を選びに向かったのだった。
ユキが持ってくる服はなんだろうな。可愛い系か、クール系か。ユキは俺が言うのもなんだが非常にセンスがいい。だから当然俺に似合う服を持ってきてくれるはず……。
数分後、ユキは服を持ってきたのだった。俺は試着し、ユキに見せびらかす。
「ど、どうだ?」
「似合ってる」
「そ、そうか……」
似合ってるって言われて嬉しい。
俺ってもう後戻りできないところまで好きになっている。もうこれ以上引き下がることはできないな。なんて思いながらも、俺は服を購入しようとレジ向かったが……。
「あっ……」
ここで大誤算。
そもそも服を買う予定がなかったのと、ここはブランド物とかを扱う結構お高めの服屋。服もそれ相応のいい値段がするということで……。
金がない。
いや、下ろしにいけばあるんだが……。下ろしにいくのも面倒くさい。そもそも今日はギターを買う予定だけだったし、その分のお金しか財布に入れてなくて……。
「……ユキ、悪いんだけどさ」
「ん? ああ。わかった。買ってやるよ」
そういって、ユキは財布からカードを取り出し支払いをスマートに済ませた。
かっけえ……って感動するのはあとにして、すぐその服に着替えて、俺は銀行へと向かおうとすると。
「俺の奢りだ。気にするな」
「でも……結構安くない金額だよ?」
「いいんだ」
くぅ……。優しい……。
この優しさが俺にだけ向けられてると思うとちょっとした優越感が……。だがこれをひけらかしてはユキの嫌いな人間になってしまうだろう。俺の中だけで納めておかなくちゃ。
「……俺の行きたいところは全部行っちゃったし、ユキが行きたい場所とかない?」
「俺は特にはないな」
「そっか。じゃ、今日はこれで解散かな……」
つなぎとめる理由もない。
名残惜しいけど、また明日から学校でも会えるんだ。二度と会えないとかそういうわけじゃない。もうちょっと一緒に楽しみたかったけど……それは俺のわがままだ。
俺は今日は楽しかった……と言おうとすると。
「あ、いや、一か所だけある。そこに行ってから解散しようか」
「一か所だけ? わかった。行こう」
ユキはそういって目的地まで歩きだす。
俺も雪の隣に立ち、ユキと一緒に目的地へと向かっていく。
混雑する街中を抜け、住宅街のほうだった。見覚えのある道を通っていると、ユキは「あったあった」と呟く。
そこは……俺とユキがよく遊んでいた公園だった。