女の子としてのデート ①
認めよう、俺が女の子だってことを。
俺はユキに恋をしてしまっている。恥ずかしいことに。この恋、黙って実らないのを待つしかないかもしれない。だが、ユキもまんざらではないのなら……。アプローチしてもいいのかもしれない……。
善は急げだ。俺はユキに連絡を……。
「無理! 好きだと自覚したらなんかハズイ!」
俺は自分の部屋で顔を抑えて恥ずかしさをこらえていた。
だがしかし、奥手になっていたらそれこそユキに不快感を与えてしまう。昨日の謝罪もしたいということで明日の秋分の日にどこかに出かけないかということを言うと、ユキはわかった。とたんぱくな返事が返ってきた。
俺は急いで千智ちゃんのところに向かう。
「千智ちゃん!」
と、勢いよく部屋のドアを開けて思わずびっくりしたのか、びくぅ!と肩を震わせていた。
「な、なに!?」
「俺におしゃれを教えてくれ」
「えっ?」
「……その、なんだ。俺もしかしなくてもユキのことが好きかもしれん」
そういうと、千智ちゃんはにやりと笑う。
「よし来た。女の子に骨をうずめる覚悟ができたんだ。この千智ちゃんにどんと任せなさい!」
女の子の先輩である千智ちゃんにおしゃれを習い、翌日。
恥ずかしいがフリフリのスカートを履いて、おしゃれに決め込んでいた。駅前の銅像前で待っているとユキがやってくる。
ユキは俺を見て固まっていた。
「……なんか変か?」
「いや、似合ってる……」
「そうか……」
それならよかった。
「でも音子はそんな格好しないだろ普段」
「まぁ……俺だっておしゃれをしたいときもあるっちゃあるんだよ。百花ちゃんに失礼だしな」
「それもそっか。百花は女の子だしそういうのも必要か」
”私を言い訳にして悪い子だ”
うるさい。
「それより昨日はごめん。俺……嫌な奴だった」
「いや、いいんだ。俺のほうこそごめん。俺がきちんと断っておくべきだった。嫌だったんだろ、伊佐波が」
「……うん」
ユキは笑って許してくれた。
くっ、笑顔すらかっけえし許してくれるなんて神過ぎる。
「今日はどこへ行くんだ?」
「……昨日の楽器販売店。あのギターがものすごく気になって後ろ髪ひかれたから買いに……」
「買うんだな。わかった」
俺はユキに手を差し伸べる。
ユキは差し出された手を不思議そうに見ていたが。
「今日は祝日ってこともあって人が多いし、慣れない格好だからはぐれそうだから手をつなごうぜ……。ちょっとカッコ悪いけど」
「そうだな。はぐれたら嫌だしな」
ユキが俺の手を握り返す。
改めて思う。ユキの手、ごつごつとした男の手だ。今の俺の手とは違う、男の手。俺の小さい手が握りしめられる。
ユキも男なんだなぁと実感するとともに、ちょっと男らしい手に興奮してしまう。
「こういう手をつないで歩くのもいいな。近くにいるんだってわかって安心する」
「そ、そうだな……」
ユキーーーっ! その言葉はダメ!
俺をそこまで誘惑したいのか!? 今の言葉は無意識でいってるのか!? 俺が近くにいて安心するってことと同義ですよね今の言葉は……。
「お前俺だからいいけどそれをほかの女の子に言うなよ? 勘違いするから」
「ほかの奴には言わん。言うわけもないだろう」
「だ、だよな」
つまり俺にしか言わないってこと……? なにそれ。もしかして俺だけじゃなくあっちも俺に恋をしてるから出てくる発言ってこと? 両想い……?
いや、ないない。あっちは俺を男として思ってる。音助という自分に恩があるからこそ、音助として接しているんだろう。勘違いするな、勘違いしたら空回りするぞ。
「……なぁ」
「ん?」
「いや、なんでもない」
俺がどぎまぎしているうちに、昨日の店についたのだった。




