帰国
いろんなことがあった修学旅行もついに終わりを迎えた。
最終日の飛行機に乗った途端、修学旅行の疲れがどっと押し寄せてくる。ローマ……あまり楽しめなかった気がする。どこかの誰かさんのせいで……。
まぁ、でも初めての海外旅行にしては普通に何事もなくいいほうではあったとは思うけど。
空港につき、それぞれ現地で解散する。
このまま家に帰ってもいいが……。
「千智ちゃん。私ちょっと実家のほうにいっていい?」
「お土産渡すの?」
「そーそー。修学旅行行くってことは伝えてあるしね」
妹に連絡して、妹にお土産を頼まれた。
それも渡しておきたいし……。母さんたちとも改めてちょっと話したい。
俺は万家の運転手さんが運転する車で俺の実家のほうへと向かう。
すると。
「嘘……」
家がなかった。
更地になっている……わけではないが、お隣の人がそこ空き家になったんだよと教えてくれたのだった。
庭のほうに周り窓からリビングを覗き込んでみるがテレビなどの家具が軒並みなくなっている。
「……引っ越したのか? 俺知らねえんだけど」
「ん?」
千智ちゃんが何か気になったのかしゃがみこみ、拾い上げる。
「なにかあったよ」といって手にしているのは一つの紙切れのようなもの。土などの汚れはついていないラミネート加工がされてあった。
「どれ……」
”お姉ちゃんへ。お姉ちゃんが帰ってきたとき私たちはもうこの世にいないでしょう”
……遺書?
紙を持つ手が震える。何か思い悩んでいて一家心中……? 嘘だろ?
俺は続きに目を通してみる。
”私たちは天国に行ってきます。場所で言うと埼玉です。春日部に移住します”
「遺書じゃねえのかよ! ビビらせんな!」
俺は思わずそのラミネート加工された紙を叩きつける。
この世にいないでしょうとかややこしい書き方すんじゃねえよ!
「引っ越したみたいだね……。遺書みたいな書き出しでややこしい……」
「こういうことする奴らだった……。ご丁寧に住所も書いてるから行けるし……」
「埼玉なら近いし行ってみる?」
「一発お灸をすえてやりたいから行く」
俺は再び車に乗り込み、引っ越し先の住所に向かう。
引っ越し先の家はなんていうか……前の家よりちょっと大きい感じの家だった。俺がここか?と思ってみていると玄関の扉が開かれる。
「あ、お姉ちゃん」
「お前お兄ちゃん呼びからお姉ちゃん呼びになりやがって」
「そこ? ってかお姉ちゃんは今女の子だから不思議じゃないでしょ!」
俺は家の中に入っていく。
家はなんていうか、結構新しめの感じだった。シックな感じがしてとても居心地がいい空間。
「で、お土産でしょ? ありがと」
「…………」
「ってこれはとサブレじゃん! ローマいってたんじゃないの!?」
「行ったんだけどな」
「思いっきり買ってなかったよね」
「そんなぁ。ローマのお土産楽しみにしてたのに!」
妹は見るからに落ち込んでしまった。
お土産は空港で買ったのが悪かったな。気が付いたのが飛行機の中で引き返すことができなかったんだよ。
「ま、いーけどね。お姉ちゃんにはそこまで期待してなかったし」
「お前なァ……」
「あ、そうそう」
と、妹が何かを切り出そうとしていた。
「お姉ちゃんの彼女って名乗る人が来たよ?」
「えっ?」