万 音子、女の子改造計画 ②
二日目はスイーツ巡り。
俺はというと。
「わ、わぁ……とても美味しそう……」
なんだか女子みたいなことを言わされていた。
俺は甘いものが特段と好き……というわけじゃない。むしろあまり食わないほうだった。けどなんつーか……味覚の好みも若干変わったのか、甘いものはお腹が満腹でもはいるぐらいには好きになっていた。甘いものは別腹というが、本当に別腹があるように感じてしまう。
「うぅ……美味しい……」
「なんで美味しいって言いながら泣いてるんだ?」
「俵ぁ。いじめてんじゃねえぞー!」
「いじめてなどおりませんわーっ!」
いじめられてます。
服も白い丈の短いスカートを履かせられている。ズボンのほうが防御高くてよかったと思っていたらスカートを履かせられ、女の子であることを強要されていた。
こう、多様性っていう言葉に逃げても無駄でした。
「んで? 帝王様はなーにそこで黙々と食べてるのかな?」
「ばかっ! 万! それは言うなって……」
「……なんでもない」
「怒ってない?」
ユキも昨日のことが今更恥ずかしくなっているのか、言葉を発することはなかった。
「ユキぃ……。私のこの格好どう思う……? やっぱ似合わないよね?」
「いや……似合ってる……んじゃないか?」
「似合ってるよ音子ちゃん!」
「似合ってる似合ってる。万と瓜二つの顔だからな。万も前にその恰好を見た時は似合ってたし似合うのは当然だろ」
「うぐぅ……」
にあってないって言ってほしかったぁ……。だったら着替えることができたのに。
「無駄なあがきだね」
「うるさい……」
無駄だとわかっていても足搔くんだよ俺は。往生際が悪いから。
完食し、カフェから出る。カフェから出ると見たことのある車が目の前に停車していた。そして車が開かれると。
「ヨッ! 昨日ブリデスネ! 愛しのネコちゃん!」
「ヴィットーリア……!?」
「オォ! 今日は格段とcarinoな恰好!」
「……」
恥ずかしいっ!
ヴィットーリアに抱き着かれ、頬にキスをされる。
「ワタシ、まだ諦めてマセン! ふふっ、見ててくださいネ」
「え……えぇ……」
「昨日の演技ではお父様の盲目は騙せてもワタシは騙せませんヨ」
ヴィットーリアにはばれてるし。
「お? 君は昨日音子を攫ったやつ!」
「何の用ですか?」
「また攫いに来たんじゃないだろうな!?」
「いや違いマス! 本日やってきたのは昨日のワビ! ワタシがイターリアの観光案内をしてアゲマス!」
「だってさ。現地の人の案内があったら頼もしいし頼んじゃおっか」
「そうですわね」
ということでヴィットーリアも一緒に行動することになった。
ヴィットーリアは意気揚々と車から万 音子ご一行と書かれたフラッグを取り出し、歩きはじめる。気分はツアーガイドのようだが、俺の名前でご一行はやめてほしい。切実に。