身体の謎
千智ちゃんが言っていたように、修学旅行はイタリアらしい。
イタリアといえばなんだろうか。ピッツァか。やはりピッツァか。
「イタリアといえばピッツァだよな」
「普通にピザでいいよ」
「ピッツァな!」
やっぱ行けるってなるとインドア派でもテンションはちょっと上がるよねー。
「なんでも楽しみにしてるといいさ。俺が案内してやるから」
「音助さんは高校のころどこ行ってたんだ?」
「俺か? 北海道」
「国外に出るわけじゃないんだな」
「国外に出るとなると言語の壁がねぇ」
進学校だからお隣の韓国とかに行っていてもまぁ不思議じゃないが、うちはなぜか国内の北海道だった。北海道では札幌と函館をメインに回って五稜郭とか白い恋人パークとかいろいろ行った記憶がある。札幌と函館でもものすごく遠くて移動に時間がかかったのはいい思い出だ。
「私はイタリア語喋れないし、迷惑かけるかもだけど」
「ああ。構わんよ。俺は喋れるから」
「ふぅ! 優秀!」
「よせよ。それほどでもねえって」
「私も喋れるよ?」
「優秀すぎるだろ」
「それほどでも」
もしかしてみなイタリア語がデフォとか?
いやいや、そんなわけはないだろう。この二人が特殊なだけだ。英語なら少しは話せるとは思うけど……他言語は無理。ティ・アーモが愛してるって意味ってこと以外あまり知らない。
「つっても、疑問なんだがよくパスポート取れたな? どうやった?」
「わかんない……。お父さんに聞いてもはぐらかされるし」
「そうか……。ちょっと変だな」
「うん。だからちょっと調べてみようって思って今日呼んだんだよ」
「調べる? 何を?」
「戸籍とかもろもろ」
えっ、そんなことする必要あるの?
「そうだな。俺も調べてみることにする。どうにもちょっとパスポート取れたのは変だからな」
「行けるんなら気にしなくても……」
「気にしなくてもいいってわけにはいかないんだよねー。今朝の父さんの様子が少し変だった。きっとなにか隠し事をしてる」
「実の娘にも?」
「むしろ実の娘にばれたくないことなんじゃねえのか? それをひた隠しにされるとどうも気になっちまうよな」
ユキは乗り気だった。
俺のこの身体にはまだまだ謎が多いらしい。千智ちゃんも俺の胸の傷が気になるといって、ちょっとは調べていたようだった。
ユキは俺の裸を見てないので胸の傷なんて知らなく、ぽかんとしていた。
「私の胸に変な傷があるんだよ。これなんだけど」
「男の前で胸を見せるな!」
「あっ、ごめん……。つい男同士の仲だと思って」
「ふむ……。これは手術の跡か何かじゃないか? 縫合跡がある」
「手術ぅ?」
「なにかを埋め込んだか……。このあたりを開くとなるとちょうど心臓あたりだよな」
「あ、たしかに」
つまり俺のこの身体の心臓には何か埋め込まれてるってこと? 何その陰謀論じみたもの。俺はそういうのに興味ないんですけど。
あれか。クローンの管理番号とかか。SFでよくあるクローン番号1番とかそういうの。
「……幸村。女の裸をじろじろ見すぎ。一応私の体と同じなんだから恥ずかしいんだけど」
「あ、すまん……」
「音子も幸村は男なんだからそうやすやすと自分の体を見せない!」
「ごめんなさいっ!」
俺は服をすぐに下ろす。
男だとどうも上半身見られることはあまり抵抗ないんだよな……。よく直虎たちとプールに行ってたりして見慣れてたし……。
「女の子としての自覚持ってよね。音子」
「はい……」
「今まで男として過ごしてきたから抜けねえよな普通」
ユキが擁護してくれたが、気をつけないといけないのは事実です……。