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借りてきた音子

 俺はこの身体の診断をして異常なしと言われたことで退院することができた。

 クローンとはいえど心臓は動いてるし血も流れてる。複製ではあれど人間らしい。


「クローンのことは褒められたことではないからあまり言いふらさない様に。君の親族にはすでに伝えてある」

「なんて言ってました?」

「面白そうなのでヨシと。私が言うのもなんだが君の家族テキトーだな」

「わかります?」


 俺の家族は超テキトーなのだ。いやマジで。

 俺は万家の車に乗り込む。


「あの事故はなんで起きたんですか?」

「あぁ……恥ずかしい話、運転手の居眠りだそうだ。もちろん怪我を負った運転手は運転過失致死で逮捕され勾留されている。君は公には死亡扱いになっている」

「……死亡」

「バンドの方は……。君の友人もいるだろうし向かうといい。君に関しては全力でバックアップする。その身体にしてしまったからな。やりたいことは法律に違反しないことならなんでもやらせてやる」

「いいんすか?」

「あぁ。構わない」


 やりたいことやれる環境になった。

 俺のやっすいボロアパート暮らしではなく今度は女子高生の千智ちゃんと同じ家に……。


「ってそういや千智ちゃんと同じ風貌ですけど千智ちゃん嫌じゃないですか? 見知らぬ仲ですし見知らぬ男が自分とそっくりになったって」

「……」


 あ、やっぱ嫌なのか。


「ごめんね。俺なんかが同じ見た目で……」

「あ、いや……」

「俺、千智ちゃんには神にも誓って何もしない。この身体では何もしないから……」

「あ、いや、別にいいんですよ? 音子ちゃんがやりたい様にして……」

「いや、俺は君と同じ顔になった以上君の不快になることはしたくない」

「別にいいのに……」


 見知らぬ男がいきなり自分と同じ顔になるのは思春期の女子として嫌な気持ちだろうな。

 俺がもし千智ちゃんと同じ立場なら嫌だね。こんな性格も知らない見知らぬ男が同じ顔なんて。


「見分けしづらいし髪切ろかな」

「千智ちゃんが切るの? 俺じゃなくて?」

「別のヘアスタイル試してみたいから私が切るよ。今度はボブにしよっと」


 千智ちゃんはウキウキで窓の外を眺めていた。

 そして、家に到着したと言われる。ついた先は都心も都心の大豪邸。

 ここは豪勢な住宅が立ち並ぶ住宅街。テレビで紹介されていたこともあるぐらい土地と建物の値段がバカ高い場所。


「あっ、万家って……」

「製菓会社ヨロズの社長だな」

「ヨロズのお菓子とか食べたことあるぅー! だから聞き覚えあったのか!」


 てかすごい家に住んでますね。

 俺今日ここで暮らすの……?


「俺こんな豪華なとこ住めない……。前のボロアパートの方がいい……」

「住めば都だよ」

「いやいやいや、つい先日まで一般庶民だった俺にはハードルばり高いって! たしかにこんな高いとこ住むことができたらな〜なんて似合わない夢持ってたけど! いざ住むとなると無理!」

「今はここしかない。一人暮らししたいなら部屋を用意するからひとまずは……」

「……はい。あ、あの、何か壊しちゃったりしても怒らないです、よね?」

「ああ」


 とは言うけど絶対怒る。

 俺は萎縮しながら中へと入っていく。庭付きの二階建ての家。庭は広くちょっとした池のようなものもある。

 えぇと、俺はとりあえず外で寝ればいいのかな。俺ここの家賃分の働きとか出来る気しねぇよぉ……。


「とりあえず座ってくれ」

「はひ……」

「あら、その子が……。初めまして。私は万 香織といいます」

「え、ええ、榎田……」

「今は万 音子でしょ。音子だよ」

「あらあら。可愛らしい名前ね」

「……」


 紅茶が差し出される。

 この紅茶が淹れられてるティーカップ。見るからに高そう。

 俺は緊張からかガクブルと手を振るわせていた。


「そんなに緊張しなくてもいいのよ」

「はひ」


 つい先日まで貧乏大学生だったんだぞ俺……。

 いきなりこんな高いものしかない空間に放り込まれたら緊張するだろうて!










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