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片付けの終わり

 夕方になり、部屋は割ときれいにはなった。


「あまり部屋を汚すようなことしてなかったからちょちょいと終わったな」

「私物の整理、使わない家電とかの持ち帰りとか本の整理と埃の掃除ぐらいだったしね」

「音助はあまり部屋を汚さぬようなマメな生き方でありましたからな」


 という割には夕方までかかったんですけども。

 軽トラックに仁が乗り込み、持っていくテレビとか使えそうな冷蔵庫を乗せていく。そして、俺らは先帰るからなといってトラックの荷台に直虎が乗り込み、助手席に文也が乗って発進していく。

 いや、荷台に乗るのは法律上ダメだろ……。MVとかでありそうなシチュエーションだけれども。


「私たちも行こうか」

「そう……ですわねぇ。ですが名残惜しく……。音助様の過ごしていた部屋にもっといたい……」

「俵さんは俺が音助ってこと知ってるでしょうが……」

「そうなのですけれども! 男の姿の音助様と今現在の音子様のお姿の音助様とはやはりイメージの乖離がありまして……。どちらも素晴らしいとは思っておるのですよ! ただ……。音助様は私の憧れの男性でもありまして……」

「憧れ?」

「端的に言うと、恋愛的な意味で好きというか、ひとめぼれしていたのですわ……」


 俵さんの言葉が俺に刺さる。

 俺に一目ぼれ……? 俺に春なんてものはなかったのに。こんな形で告白を受けるんですか? ちょっと男じゃないことにもう一度の後悔が……。


「……ごめんね」

「いえ、事故ならば仕方ありませんことなのは理解しておりますの。あなたの運転手の居眠りは……徹夜して趣味をしていたというのが原因だとお聞きいたしました。あなたは悪くありませんの。たとえ万家に雇われている運転手としても、運転が控えてるのに徹夜するなんて言うのはおかしいですから。それに、謝る対象は私ではなく音助様では? 私は事故とは何の関係もありませんから」

「そう……だね。改めてごめん」

「いいよ。もう過ぎたことだし……」


 俺も男のままだったら俵さんと春が来ていたのかな。という想いがないわけではない。俺だって彼女の一人は欲しかったし、そういう妄想もしたりした。

 だがそういうものはもう過去の残骸。一緒にごみとして片付けて割り切らなければ一生引きずってしまいそうになる。


「音助様が許されるのでしたら私が怒る道理はございませんね」

「……ちょっと暗くなり過ぎだから飯でも食って帰ろうか。俺奢るほどの金ないけど」

「で、では私が出しますわ! 音助様と付き合ったらどこにいくかっていう妄想した場所がありますの!」

「……俺と?」

「はい! 音助様はあまり高級な場に場慣れしてないとお見受けしていたので、そこまで高級じゃなくフランクな格好でいける店を時折見繕っていたのですわ! そこに参りましょう!」


 俵さんは車を呼び出し、俺らは車に乗って俵さんが指定した店へと向かう。

 ステーキハウス”びふてき”という店名が目に入った。中に入り、席へと案内されていく。ものすごく混んでるけれど一発で行けるものなのか?

 と思っていると俵さんの知り合いというか、そういう店らしくそういう便宜を図ってくれたようだ。


「いかにも庶民が来そうな店……」

「落ち込んだりしたときは肉でしょう! ここで違うお肉を頼んでそっちも一口いい?とか聞かれてこちらのステーキを切り分け交換するという妄想をしておりましたの……!」

「ロマンチック……ではないな。ステーキを交換してるだけだし……」


 交換がステーキってワイルドすぎるだろ。


「でもこういうステーキハウスとかのほうが私はありがたいかな……。お高いってわけでもないしこういう場は好きだしね。肉とか好きだし」

「でしょう!?」

「お決まりでしょうか」

「ああ、私は俵焼ハンバーグをお願いいたしますわ」

「んー、じゃあ、私はフィレステーキかな」

「……俵さん、俺思い切ってサーロインの180gいい?」

「構いませんわー! サーロイン180gおひとつ!」


 ライスセットとドリンクバーも頼み、注文が終わる。

 俺、サーロインステーキとか高くて頼めなかったんだよ。なんなら手ごねハンバーグで限界だった。サーロインなんてちょっと夢のまた夢だったから……。


「……サーロインステーキって初めて食べるなぁ」

「あはは……。うちでも結構出してるよ?」

「え、マジで?」


 気づかなかった……。










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