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片づけは踊る、されど進まず ①

「ここが音助様が過ごしておられたお部屋なのですね!」

「案外整ってるね」


 日曜日、俺はバンドメンバーの直虎たちと俺のもとの部屋の掃除に来ていた。

 いらないものとかを仕分けして引き払うようにする。この部屋で過ごすわけでもないし、過ごしてない今も今月の家賃を払ってくれていたから申し訳ないしな。

 で、片付けるにあたってバンドメンバーの私物とかがあるから呼んだんだが……。


「千智ちゃん、ちょっと」

「ん?」


 千智ちゃんを手招いてひそひそと話す。


「なんで俵さんがいるんだよ」

「昨日話してたら行きたいって言ってさ」

「で、連れてきたのかよ。六畳一間にこの人数は多いって……」


 なんでここに六人もいるんだっていう。掃除するのにも邪魔だよ。


「これはなんですの?」

「食玩だな。ビケモンっつーゲームのキャラクターのフィギュアみたいなものだよ」

「へぇ……こんな可愛らしい人形があるのですわね」

「千智ちゃんは知ってた?」

「……一応うち製菓会社なんですけど」

「あ、チョコエッグとかでも扱うか」


 知ってて当たりまえですね。

 少し埃っぽいので窓を開けて換気し、まずは押し入れに眠ってる直虎たちの死物から片づけることにする。

 直虎のパンツだったり……。


「……ナニコレ」

「……ブラジャー」

「なんで男性の部屋にこんなものがあるの?」

「仁が悪ふざけで買っておいてったんだよ」

「ち、ちち、違うでありますよ? それは正真正銘音助殿が」

「それ仁のだぜ」

「ああ、仁のですね」


 仁よ、嘘はよくない。

 少しドン引きした目で見ていた。さすがに堪えたのかちょっと落ち込んでいた。友達同士なら馬鹿だって笑い合えるけど女子高生に知られちゃね……。


「お前らも欲しい家電とかあったら持ってっていいぞ。俺の部屋に冷蔵庫とかもろもろ設置されてるし……」

「いいの? じゃあ俺はー……」


 と、直虎が俺のゲーム機に手を伸ばす。俺はその手をはたいた。


「なにすんだよ」

「ゲーム機はダメ」

「欲しい家電は持ってっていいって言っただろ。男に二言はねえよな」

「家電の話だろ? ゲーム機は残念ながら家電の分類じゃねえ。残念だったな」

「いやいや、実際よく使う家の電化製品なんだから実質家電だろ」

「そもそもクレジットとか登録してる可能性もありますし、家電の分類には入ると思いますわ。それに経済産業省の商品分類表でも情報家電に分類されております」

「だってよ。残念だったな」


 と再び手を伸ばしてきたので叩く。


「きえーーーーっ! ゲーム機は絶対ダメ! これだけはダメだ!」

「なんでだよ! 家電だから寄越せよ!」

「俺の大事なデータが眠ってんだよ! 頑張って全部埋めたクエスト! 頑張って全部終わらせた二つ名! 頑張って集めた色違いビケモン! 全部俺の糧なの! だめだめだめだめだめ」

「もっかい一からやればいいじゃねえか! 死人に口なしだろコラ! 寄越せ!」

「あ、死んだことにしやがった! 都合いい時に死んだことにしやがった! 今俺はこうして生きてんのに死んだことにしやがった!」

「まぁ音助さん本人は死んだようなものじゃないかな」

「ほら、周りは俺の味方だ! 多勢に無勢だ観念して寄越せ!」

「お前いいのか? 泣くぞ」

「あん?」

「わんわん泣いて痴漢冤罪とか吹っ掛けてやるからなコラ!」

「きったねぇ! 女の武器使おうとしてやがる!」


 俺はゲーム機を抱きしめ離さない。離してなるものか。これは俺のだ。誰が何と言おうと俺のものなんだ。

 俺は絶対手放さないぞこれは。俺が汗水たらしてやりくりし、必死にお金を貯めて買ったゲームハード。何度も乙りながらひたすら動きを叩き込みやりこんだりしたゲーム達のデータ。絶対渡さない。思い出もあるから。


「じゃ、音子、僕はテレビもらっていい?」

「おういいぞ」

「俺はこのスピーカーをもらうであります。ゲームが好きだからゲーム周りは特にこだわっていいものを使ってるから周辺機器はとてもいいものばかりでありますな」

「おう。構わん構わん」

「俺はゲーム機をもらってやるって言ってんだよ」

「だめ!」


 誰が何と言おうとだめなもんはだめ!










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