謝罪と応援
家に帰ってきた。
俺はベッドに寝そべり、うーんと体を伸ばす。
「女子高生ってこんな大変なんだな……。高校んときのやつらには申し訳ないことをしたな……」
なんて自己反省もしながら部屋に備えてあるテレビをつける。
テレビではバンド特集なんて言うものを夕方のニュースの時にやっていて、今巷で話題のバンドを紹介する流れとなっていた。
そして、ネオエスケープも取材されていたようでネオエスケープの面々が映る。
『つい先日……ボーカルが事故で亡くなったんすけど、でも、俺らはめげずに頑張りたいと思います! 待ってろよ天国で! 俺もいつか行ってやるからな!』
直虎は俺が音助ってことは知ってるはずだからテレビ用のコメントなんだけど……。なんか自分が死んだことになってんのはちょっとやだな。
いや、死んだ扱いにはなってんだけども。直虎たちが演奏する様子も放送され、俺はとりあえずギターを取り出したのだった。
ギターを取り出し、引こうとするとインターホンが鳴る。
「音子さーん。お客さんですよー」
「お客さん?」
俺は玄関のほうに向かうと。
「え、赤家、さん?」
「…………」
「と、とりあえず上がって……?」
なぜか知らないけど赤家さんとその取り巻きの人が俺を尋ねてきたのだった。
俺は部屋に案内し、とりあえず飲み物を出した。赤家さんは借りてきた猫のように押し黙ってしまっている。
「あの、なんか用ですか……?」
「と、東子。ほらいうんでしょ……?」
「え、ええ」
と、取り巻きに促され。
「ごめんなさい」
「ほえ?」
「あなたの髪の毛……。今日、幸村様にも黙ってもらってて……。本当にごめんなさい」
「あー」
謝りに来るなんていい子だなァ。育ちがいいだけはあるのかもしれない。
取り巻きの子たちもごめんなさいと謝ってきた。俺はそれだけでうれしいよ。謝らないでなぁなぁで済ます奴も多いっていうのに……。おじさんちょっと感動しちゃった……。
「いいよ。髪を切るいい機会だったしね」
「ありがとう……」
「ふふ。謝りに来てくれるだけありがたいよ~。もうわだかまりはなしにしよ? 私とユキ……幸村様は小さいとき一緒に遊んでいたってだけだからさ。その名残が今でも続いてるんだよ」
「そ、そうだったんですのね……。で、でもっ!」
「でも?」
「私たち決めたのです。幸村様と音子様の仲を応援しようと!」
「ん?」
「音子様はとても男気にも溢れ、かっこよかった……。お似合いだと思っておりますわ!」
「どうしてそうなる」
俺がユキと恋愛なんてやめてほしい。
たしかに物件としては男の視点から見ても悪くない……っていうか俺にだけ甘すぎるんだが。性格があまり人を信用しないという点でマイナスだろうが。
いや、まぁ、経営者とかの手腕はあるんだろうけど……。
「行動がかっこいい音子様と幸村様はお似合いだよねぇ~」
「私たちは身を引きます……。悪い虫がつかないようにもしましょう!」
「なぜそっちのほうに行くんだ戻ってこい」
誰に恋い焦がれるのは人の自由だろ。
恋はそういう風に止めるものじゃないっての。少なくとも独り身相手には。
「ふふ、興奮してしまいましたわ……。あら、ギター? 音子様ギターをお弾きになられるのですか?」
「え、あ、あぁ、趣味程度だけど……」
「良ければ聞かせてはいただけないでしょうか!」
「あまり期待しないでよ?」
聞きたいと言ってもらえてちょっと嬉しい。俺は人前で演奏するのが好きなんだ。
俺は嬉々としてギターを手に取り、演奏を始める。有名なバラードを弾いてみる。演奏が終わると、赤家さんとその取り巻きはぽかんとして、数秒遅れて拍手がやってきたのだった。
「上手い……」
「え、本当に趣味なのですか?」
「ミュージシャンの人っぽかった……」
元ミュージシャンですけど。
「綺麗な歌声と素晴らしいギターの音色……。やはり音子様には敵いませんね」
「弾けるのはギターだけだよぉ。ピアノとかは無理なんだ」
「ふふ、ならピアノなら私の勝ちですね」
当たり前だろ。俺はギターしか練習してこなかったしギターにしか打ち込んでなかったんだよ。大学時代は。
「さて、あまり長居をすると迷惑かもしれませんし私たちは行きましょう! 困ったら千智様だけではなく私たちも頼ってくださいませ、音子様! これ、私の連絡先ですわ」
「お、おう……」
「ではまた明日学校で!」
と、赤家さんたちは出ていったのだった。
入れ替わりに千智ちゃんが部屋に入ってくる。
「なんだったの?」
「謝罪と応援カナ……」
「応援?」