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誰にやられた?

 ロングぐらいの長さだった髪はボブぐらいの長さになった。

 俺は翌日学校で少しざわざわとしている。


「音子ちゃん、イメチェン?」

「そう。見分けつかないでしょ? 千智……と」

「なるほど。見分けるために髪を……。双子って言うのは髪型もあまり選べないのか」


 本当は昨日髪引っ張られてちょん切っただけです、なんて言えない。

 

「で、本当にこれいいの? ものすごく高くない?」

「ノート貸してくれたお礼だぜ! 今後ともまたよろしくお願いします」

「他力本願すぎるだろ。お前も少しは頑張れ」

「だってレベル高すぎんだもん」


 九条からもらったのはちょっとお高いクッキーの缶。

 コンビニのレジに置いてあるようなものではなく、それよりもっと高そうな丁重に包装された純白で美しいクッキー。

 開けて食べてみると、バターの香りがものすごく心地いいクッキーでとても美味しかった。これは帰ってからのおやつにしておこう。

 

 俺はクッキー缶をしまい、昨日絡んできた赤家のほうを見る。赤家はちらちらとこちらを窺っては何かを悩んでいる様子だった。

 そんなこんなで。


「…………」


 ユキが登校してきた。

 欠伸をし、気怠そうに入ってくるユキ。ユキは俺のほうを向くと、どたどたと駆け寄ってきたのだった。


「おい、誰にやられた!」

「ん?」

「その髪! なんで短く……!」

「あぁ、これ? 長いと千智ちゃ……千智と見分けつかないでしょ? 私もちょうど短いほうがよかったしと思って」

「あ、あぁ……なるほど。いじめられたとかじゃないんだな?」

「じゃないよ。安心してって」

「ならいいんだが……」


 なんだか訝し気だ。

 咄嗟に出た嘘のこと気づいてんのかな。ユキはスペック自体は高いから気づいてそうなもんだけど……赤家からしたら気が気じゃなさそうだな。

 自分が絡んで切らせましたとか言ったらユキがガチギレすることは確実。それを理解してるからこそ静かなんだろうな。取り巻きも。


「いや……髪を短くするのは千智のほうじゃなかったか? 千智が美容院いかなきゃなーってぼやいてるのを聞いた」

「気が変わったらしいよ! ね、千智!」

「え、あ、う、うん?」

「……嘘だな。誰にやられた?」


 千智ちゃんーっ! 乗ってくれ! 


「千智はああ見えて一度言ったことは曲げないんだ。どんな些細なことであっても基本的に有言実行するタイプだぞ。音子、誰にやられた?」

「……」


 千智ちゃんがなまじっか偉い子なタイプだけにばれた。そういうことあるんですか。


「……実は九条くんが短いほうが可愛いからって言って」

「え、俺? 言ってな」

「言ってたよね!?」

「あ、あぁ! い、言った言った!」

「……言いたくないんならいい。俺が個人的に探してやる。怪しい人物は目星がついてるからな」


 と、視線を赤家のほうに送っていた。

 気づいてんじゃねえか。


「あのー……これは私たち当人の問題だからあまり立ち入るもんじゃないと思うけど」

「ってことはさっきのは嘘なんだな」

「…………」


 どうしよう、勝てる気がしない……。

 仕方ない。


「あーもう! ユキ! 私はもともと短いほうが好きなんだよ! ちょうどよかったから切っただけ! もうこれ以上の詮索はなし! いい!?」

「え、あ、お、おう?」

「ユキも私がこんな風になってて怒ってるかもしれないけど、少しは大人になって見守ることを覚えろ!」

「はい……」

「もっと返事は大きく!」

「はい!」


 逆切れ。なんとかこれで乗り切りたい。









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