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俺は救われたんだよ

 幸村に呼びつけられ、俺は幸村の席へと向かう。


「なに?」

「なんですか?」

「ここじゃあれだから桜の会のサロンに行くぞ」

「サロン……?」


 なにそれ。

 俺が聞き返すと、幸村がいぶかしげに俺を見ていた。


「そういえば音子は編入してきたばっかで知らないよね。あとで詳しく説明しようと思ったんだけど、桜の会っていうのがあってね。入れる人が小学生の時から桐羅に在籍していること、由緒正しき家柄の人が入れるんだ。私と幸村も条件にマッチしているから入ってる」

「要するに選ばれし者の組織みたいなもんだ。そこには会員限定のサロンっつーもんがある。そこに行くぞ」

「会員限定って……私無理じゃないですか? 会員になる条件満たしてませんけど……」

「会員二人以上が許可したらいいんだ。それに、お前は万家だろ。血筋としては正しいもんだから大丈夫だろ」


 そんなんでいいんすか。

 俺は二人についていき、サロンの中に入る。

 

 サロンの設備はすごく、マッサージをしてくれる人が在中しており、放課後にマッサージのサービスを受けることが出来たり、軽食コーナーといって軽食も提供してくれるという優遇っぷり。

 サロンの中には会議室という部屋もあり、俺らはその会議室の中に入っていった。朝のホームルームの時間といえど人いるもんだな……。なんて思いながら会議室の鍵を閉める。


「千智、音子。お前らも俺の恩人を殺したやつを探してくれ」

「そこまですることですか? 子供の時遊んだだけでは……」


 俺はそう聞いてみた。

 幸村は「それだけなんだがっ……!」とこぶしを握り締め。


「あの時、俺は習い事とか周りのこととかで嫌になっていた。もう嫌だっていうときに出会ったんだ。あの人は俺と二人で遊んでくれて、困ったら来いとまで言ってくれた。俺も本気で楽しめたし、そういってくれて気が楽になった。習い事だってまじめにやるようになったのも、あの人が社長になって雇ってくれと軽口を言ってくれたから本気になれたんだ。あの人のためなら俺は……って思って」

「重い……」

「俺は救われたんだ。あの人に。重かろうがなんだろうが、俺はあの人に救われた。お礼だってまだ言ってないのに……」

「……さいで」


 お礼はいらないんだけどな。

 千智もこの幸村のことは初めて聞いたようで、そこまで思い入れがという風に呟いていた。千智のほうを見ると、千智は意を決したように口を開く。


「幸村。ごめん」

「あ? なにがだよ」

「その人を轢いたのはうち……」

「……は?」

「学校から帰ってる最中、運転手の人が居眠りをしたんだ。それで……」

「お前……!」


 幸村は掴みかかろうとして俺は止めた。


「最後まで聞いて! それで……その……」

「んだよ! 何か言いたいことでもあんのか!」

「その人はまだ脳が生きてたからって言って……脳をその音子に移植したんだ……」

「……は?」

「今の音子は音助さんなんだよ。私のクローンっていうのに父さんが勝手に移植して……」

「え、は?」


 ユキは俺のほうを向いた。


「残念ながらそうなんだよ。ユキ。俺が音助」

「えっ……いや、そんなことできんの……?」

「できる。ただあまりばれたくないから音助さんは死亡したってことにしておいたんだけど……」

「……そうか」


 ユキは力を緩めていた。

 俺も黙ってて後免とだけ謝っておく。


「そこまで重い気持ちを……」

「俺は救われたんだよ。ありがとう」

「いや、俺も楽しかったし……。で、大きくなったなァ」

「……音助さんは女になっちまって大変ですね」

「わかる!? まっじでビビったよ。事故で死んだと思ったらいきなりこの体だもん」

「はは……。俺だったら絶対受け入れられないです」


 ユキは表情を緩め、力を抜いて俺と話してくれていた。

 俺も昔を思い出し、あの時のように気楽に話せていた。


「ユキ、敬語無理して使わなくていいよ。今は一応同級生だし」

「そうで……だな。ちょっと慣れないけど。でも生きててよかった。あまり褒められたことじゃないけどな」

「そうだね。思いっきり生命倫理に反してるからね」

「文句は父さんに言って。私だってクローンがあること知らなかったんだから」

「本当に知らなかったのか?」

「マジで知らなかったよ。知ってたらまず私が嫌がってる」

「だな。自分そっくりの体に男の人が入るんだもんな」


 ま、何はともあれ一件落着。

 どんどん俺のこと知ってるやつが増えていってるような気がするが大丈夫だろうか。












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