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小さいときのあの子

「音助お兄ちゃん……俺がんばってみるよ……」

「おう。頑張れ。将来俺を雇ってくれよなー」

「うん!」


 俺はそこで目を覚ました。

 懐かしい昔の記憶。小さいとき、習い事とかが嫌で逃げだしてきた男の子と公園でたまに遊んでたりしてたな。嫌だっていう男の子を励ましたりして一緒に遊んで仲良くしてた。

 あの子たしか……ユキって呼んでたっけ。それぐらいしかあまり覚えてることはないけど。いかんせん十数年前の記憶だからな……。


「今日海外留学から財前様が帰ってこられるそうですわ!」

「本当ですか!?」


 と、月曜日のクラスの会話でそういう声が聞こえてきた。

 たしかあの子も財前って名前だったような気もするが。同一人物かな。なんて思っていると見知らぬ男の子がけだるそうな顔をして教室の中へと入ってくる。

 その男の子は席に座るとこちらに気づいた。


「んだよ千智。俺のほうを見てなんかあったか?」

「あ、いえ……」

「幸村くん、私こっち」

「えっ?」


 間違いない、小さいとき遊んだあの子だ。

 いいところのお坊ちゃんだったよななんていう記憶はあったからそうだ。財前 幸村。当時は何も知らないぺーぺーのガキだったけど、財前グループって言えば世界的にも有名なグループだ。

 会社をいくつも経営しており、世界金持ちランキングでも上位にいるぐらいの。


 そんな家の子と遊んでたって知ったときはビビったね。結構激しい遊びしてケガも少しさせちゃってたから……。


「千智が二人……?」

「初めまして。私は千智の双子の妹の音子っていいます」

「千智に双子の妹なんていたのか?」

「あはは。実はいたんだ」

「ふーん……」


 興味なさげに会話していた。


「幸村は気分屋だからあまり女性と話さないんだ。むしろうざいと思ってるぐらいだからね。私とかは昔から付き合いがあるから話してもらえるけど……」

「すげー王子様……」

「この美貌だからねー。優秀だし」


 あの子がここまで成長するとは。習い事が嫌で逃げだしてきた子とは思えない。

 すると、また知らない男の子がクラスにやってきたのだった。何か慌てたような声を出して「幸村!」と呼んで息を切らしている。


「どうしたんだよ、つるぎ

「どうしたもこうしたもないよ! 君が昔悩んでた時に遊んでくれたって恩人の人いるでしょ!」

「ん? ああ。いるな。その人に何かあったのか? 音楽をやってたっていう話を聞いたがメジャーデビューか?」

「違う! そんないいニュースじゃないんだよ! その人……交通事故で……」

「はぁ!?」


 今日一で声を荒げていた。

 

「嘘だろ……? 音助さんが交通事故で……? 嘘だよな? 俺の恩人なんだ……。どんな手を使っても助けてやらねえと……」

「無理だよ……。亡くなったのはもう三週間も前なんだ……」

「なんだよそれ……! ふざけんじゃねえ! どこの誰だ!」


 千智ちゃん、呼ばれてますよ。

 千智ちゃんは気まずそうに眼を逸らしていた。そして、ひそひそと俺に聞いてくる。


「恩人って呼ばれてますけど関わり合ったんですか?」

「小さいとき、習い事が嫌で逃げだしてきたんだ。そん時にいろいろ遊んでた」

「なるほど。その時のことを感謝してるんですか」


 そん時のことをまだ覚えて恩人とまで言ってくれてるんだ。

 俺はそれがちょっと嬉しい反面、こんなかっこいい男の子に育ったユキにそんな悲し気な顔をさせてしまうのがちょっと申し訳なく感じた。

 ユキ……幸村は机を激しくたたき、激高を隠せてない。

 時間は無情にも過ぎていき、その友人の人がクラスに戻り先生が入ってきたのだった。


 その間でも、幸村はいら立ちを隠せていない。

 朝のホームルームが終わり、幸村は。


「千智、音子。ちょっとこい」

「はい?」

「え、私も?」


 なんか呼びつけられたんですけど。幸村に。








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