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なんてことのない冬休みの終わり

 無事、帰宅することができた。

 どっと疲れがたまり、ベッドに寝転がる。明日から学校だというのにすでに行きたくないモードに入っていた。

 本来は昨日帰っているはずだったんだけどななんて思いながら、一応日記にしたためておく。


「音子~」

「なぁに?」

「ちょっとやばいことがあってさ」


 千智の手には複数の問題集が握られていた。

 いやな予感がする。俺の本能がここから逃げろと警告している。俺は立ち上がろうとすると、千智は俺の肩をがしっとつかんだのだった。

 にっこりとほほ笑む。


「宿題、二つほどやり忘れてたの」

「……頑張れ」

「片方手伝って♡」


 やはり。

 というか、きちんとしている千智がこんなミスをするとは考えられない。


「……なんでやってなかったの?」

「すっかり忘れてたんだよ」

「…………」

「音子はこっちやって。数学」

「寄りにもよってめんどくさいほうを渡すなよ……」


 机に座り、俺は問題集を開く。

 この問題集一冊が宿題の範囲。それが五教科分あるので計5冊。国、理、英は終わってあとは数学と日本史だけらしい。

 俺日本史のほうがいい……。歴史とかちょっと好きだよ? 日露戦争当たりの歴史とか結構好きだよ俺。数学なんて嫌だよ俺。


「……俺手伝うともいってないけど」

「しょうがない、私が数学でいいよ。はい日本史」

「ありがとう……そうじゃない! なんで俺がやる前提なんだよ!?」

「……」


 千智は頭を指さした。

 包帯を巻いてる頭を指さすと、百花ちゃんがやってあげてくださいと頭の中でお願いしてきたのだった。弱みに付け込むなよ。俺は何もしてないぞ。


「お願い! ほんっとにお願い!」

「……わかったよ。今日徹夜かなこの量」


 毎日コツコツやっていれば終わるはずの量なのだ。

 俺は問題集を開き、答えを埋めていく。もう日本史は日露戦争辺りまで来ており、同盟とかそういうのを説明させる問題が出ていた。

 だるい……。俺は三日で終わらせてあとは遊ぶだけってしたはずなのになんで俺は最終日にまたもう一回やってるんだろうか。


 黙々と埋めていく作業が始まる。

 静かに、刻々と時間は過ぎていく。ちっちっちっちっと時計の秒針が動く音と、シャーペンを走らせる音だけが部屋の中に響き渡る。

 時計は午後9時を指す。問題集はやっと3分の1くらいまで終わった。


「ちょっと休憩ー! 疲れるぅー」

「私コーヒー淹れて来るね」

「砂糖多めで」

「はいはーい」


 千智がコーヒーを淹れたマグカップを持ってきた。

 兎の柄が付いたマグカップを受け取る。


「もうちょい甘いほうが俺好きだな」

「え、結構入れたけど砂糖」

「俺コーヒーめちゃくちゃ甘くして飲むんだよ。ほら、マックスコーヒーとかあるでしょ? あれぐらいが好きなの」

「えぇ、あれ甘ったるくない? コーヒーはビターのほうがおいしいよ」

「あれぐらい甘ったるいほうがいいんだ。世間はビターすぎるから……」

「何言ってるの?」


 なんでもないです。

 コーヒーを摂取し、再び問題集に向かい合う。


 第二次世界大戦だけでめちゃくちゃページ使ってるなこの問題集。たしかに大きい出来事だったとはいえここまで使うなよ。

 と、眠くなってきたのもあり問題集をやりながら問題にツッコミをいれたりしていた。


「三学期終えたらあっという間に受験生か~」

「高二の三学期ってあっという間だぞ」

「そうだね。あまりめぼしい行事もないし。あるとするなら卒業式とバレンタインとかぐらい?」

「そうだな。バレンタインはユキにチョコやらないとな」

「本命?」

「当たり前だ。本命以外ユキに渡さないっての。まぁ、銀太郎たちにも義理であげておくか」

「そうだね。スキーにも連れてってもらったし」


 バレンタインの話をしながら問題集を進めていく。

 午後10時。俺は立ち上がる。


「お腹空いたから夜食食べるかな。何か簡単なもの作るけど食べる?」

「食べるー」

「嫌いなものとか食べたいものある?」

「特にないよー。あ、でもすっぱいものはちょっと苦手かも」

「ん」


 俺はキッチンへと向かった。

 炊飯器の中には米が余っていたので、とりあえずおにぎりを作ることにした。俺のぶんには梅干しを淹れて、千智の分は鮭フレークを入れてあげる。

 梅干しが入ってるおにぎりにだけ海苔を巻き、部屋へと持っていく。


「海苔あるほうが梅干し」

「じゃ、おむすびのほう食べろってこと?」

「そそ。俺梅干し食べたかったから梅干し食べる」


 おにぎりを平らげ、再び問題集と向き合う。

 夜も次第に更けていく……。









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