白い結婚。
政略結婚が当たり前な貴族の結婚事情。優秀な子孫を残すことが命題な貴族の性として一夫多妻が許されたこの国で弱い立場の女性が離婚を訴えるには、
【三年間、白い結婚であること】
という条件があった。
元々離婚が成立するには、
1、夫婦両名の同意
2、妻になんらかの落ち度がある場合
3、三年以上夫婦関係がなく、片方に離婚の意思がある場合
に限られる。
もちろんそこに家の事情や夫婦の事情も絡むので一筋縄では解決はしないけれど、それでも妻側のみの意向で離婚するには三年間白い結婚である事は必須事項ではあった。
もちろん夫婦納得の上で契約婚を継続している家庭もある。
お飾りであっても、離婚の意思が無ければ円満な夫婦関係が継続できるというもの。
だから、エーリカがジークハルトを説得できればはれて離縁してもらう事はできるだろうし、不貞を働けば追い出される可能性だってある。
それでも、万一わざと不貞を働いたとしてもそれすら気に掛けられなかった場合、エーリカの心が壊れてしまうかもしれない。それだけは選択肢から除外するしかなかった。
とにかくまず第一に。
なぜ侯爵家の妻に自分が選ばれたのかそれを調べる事。
ジークハルトは嫡男で、将来侯爵位を継ぐ立場。
兄弟がいるとはいえ弟君はまだ幼い。
妹たちは他家に嫁ぐだろうから、本来であればジークの正妻にはエーリカのような男爵家の四女ではなくもっと高位のお嬢様方が相応しかっただろう。
それなのに何故?
侯爵は何故ジークが望んでもいないのにエーリカのような女を選んだのか、それがやっぱり不思議で。
もしその答えを見つけることができさえすれば、ジークを説得することも可能ではないか。
そんなふうにも考えたのだった。