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最悪。

 ♢ ♢ ♢



 ひと月なんてあっという間に過ぎ去って、披露宴当日となり。

 結局それまでの間一度として面会する機会も無く、この日初めて旦那様になる予定のフォンブラウン侯爵家の嫡男ジークハルトと会ったエーリカ。

「よろしくお願いします」と会釈するエーリカの顔もしっかり見ようともせずプイッと横を向いてしまう彼に、ああやっぱり望まれていないんだなと、暗澹たる思いがわきあがってくるのを抑えることができなくなってしまって。

 披露宴のあいだじゅう、心の奥底でぐちぐちと考え込んでしまい、形式的に進む披露宴がどんなふうに進められたのかさえ思い出せない始末。


 それでもやっぱり。

 政略結婚、これはこれで仕方がない。

 もし断っていたとしても伯爵家の顔を潰しておいてそのまま仕事を続けさせて貰える訳もない。

 父が貰ってしまった支度金も、どうやらもう既にその殆どが借金の返済に充てられそんなに残っていなさそうで。

 返せと言われても、もう返すこともかなわない。

 それでも。


 肝心のジークハルトが自分を望んでいなかったって、どういうことなのか。

 もちろん爵位が低いことやエーリカの容姿が気に入らないと言うこととはあるだろうと思っていたけれど。



 だったらなんでこんな縁談を進めたのか!

 ジークハルトが嫌だと言ってくれていれば自分が嫁いでこなくてもよかったんじゃないのか!?

 それが悔しくて口惜しくて。


 披露宴の後、


「これは契約婚だ。私が君を愛することはない」


 そう彼の口から発せられた時。

 想定はしていたとはいえ怒りが込み上げてくるのを抑えることができず。

 もちろん、そんな気持ちは表情には出さなかった、けれど。


 彼、ジークハルトに対するエーリカの第一印象は『最悪』だった。

 白い結婚なら白い結婚で構わない。

 絶対に離婚して貰おう。

 この時に、そう決意を固めたのだった。

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